Step by Step
仮想化導入ガイドPart5 物理環境から仮想環境への移行
物理マシンから仮想マシンへの移行は、ただのファイルのコピーとはわけが違う。たとえ価格が高くても、P2V移行ツールを使えばさまざまな問題を解決できる。
物理マシンの内容を仮想マシンに移行するのは、ある場所から別の場所にファイルをコピーするのとはわけが違う。実のところ、これは時間もコストも掛かる複雑で技術的な作業だ。
この連載の前回は仮想化担当者に必要な技量について説明し、Part3では、ROIの計算のポイントを紹介した。その前のPart1とPart2では、仮想化の対象候補の特定方法とキャパシティープランニングについて説明した。今回は、いよいよ最初の作業フェーズに入る。適切な仮想化対象候補として特定した物理マシンから仮想マシンに移行するP2V(Physical to Virtual)移行のフェーズだ。
P2V移行
移行先となる仮想マシンのハードウェアは、移行元サーバの物理ハードウェアとは異なるのが常だ。P2V移行ツールを使用することは、こうした移行に伴うさまざまな問題を解決する1つの簡単な方法だ。仮想化業界の中でP2V移行ツールの市場リーダーはプレートスピンとヴイエムウェアだが、レオストリームやヘルパーアップスなど、ほかにも注目すべき競合ベンダーがある。
移行に伴う問題の1つはドライバの認識だ。どのサーバでも、移行直後の最初の起動時にOSカーネルは新しいデバイスを認識し、それらを扱うためのドライバを探す。カーネルが適切なドライバを見つけられないと、デバイスは機能しない。
OSによっては、こうしたドライバの調整は複雑になる。実際、Microsoft Windowsの場合、恐ろしい「死のブルースクリーン」が表示されることなく正常に起動するように、必要なドライバを適切なタイミングと順序でカーネルに渡して初期化するには、P2V移行ツールが必須だ。
Linuxの場合、専門家なら商用ツールを使わずにドライバの調整を行えるだろうが、その作業は面倒で時間がかかる。しかも、そうした手作業を行うと、移行のターゲットとなる仮想プラットフォームとのやりとりを伴う、移行プロセスのほかの部分を自動化できなくなる。
P2V移行ツールは、ターゲット仮想マシンへのデータの移行(と移行のための調整)を行うだけでなく、適切なハードウェアで新しい仮想マシンを作成し、その電源を投入し、ベンダー製の必要なパフォーマンス向上ツールをインストールする作業も担う。
仮想化に初めて取り組む担当者は、価格の高さから、P2V移行ツールを使うことを敬遠する場合が多い。しかし、それは、物理サーバを仮想マシンでゼロから再構築する場合に起こりがちな、予想外のエラーのコストを考えないということだ。
何人かの仮想化の専門家や推進者が配布している無料のP2V移行ツールもある。だが、それらは数台のサーバを移行するのには役立つものの、今のところ、大規模な移行プロジェクトで有効に利用できるように拡張することはできない。こうしたツールのユーザーは、技術的な問題が発生した場合にツールを修正するのにかかる時間の方が、移行プロジェクト当たりで見た商用ソリューションのコストよりもはるかに高くつくことを、すぐに思い知らされることになる。
また、P2V移行ツールには付加機能として、仮想化の対象候補を特定する製品や、キャパシティープランニングを支援する製品との連携機能も必要とされる。P2V移行ツールがこれらの製品と統合されていれば、仮想環境への移行をスピードアップできる。移行によって新しく作成される各仮想マシンを、最もリソースに余裕のあるホストサーバに瞬時に移動できるからだ。
本稿執筆時点では、そうしたサービスを実現しているベンダーはプレートスピンしかない。プレートスピンのP2VソリューションであるPowerConvertは、仮想化の対象候補を特定する同社のPowerReconツールと統合できるようになっている。
P2V移行ツールの評価ポイント
P2V移行ツールを検討する上では、逆のプロセスであるV2P(Virtual to Physical)移行の機能を考慮することが非常に重要だ。
マシンを統合することへのニーズは大きいが、仮想化はそれ以外の目的にも利用できる。例えば、社員に新しいワークステーションを配備するには、管理上多大な手間がかかる。だが、ITマネジャーが最適な仮想マシンを構成し、新入社員が仕事を始める際には常にそれを新しいハードウェアにインストールすることが可能になれば、そうした手間が大幅に省ける。
従来、こうした管理負担はシマンテックのNorton Save & Restore(旧称:Ghost)のようなディスククローニングユーティリティのおかげで、ある程度軽減されてきた。だが、これらのソリューションには幾つかの重大な制約がある。これらはハードウェア構成に依存するため、構成の異なるサーバに同じイメージを復元することはできない。また、目的の構成に変更を加えた場合には、新しいマスターイメージを保存しなければならない。
前者の制約については、最近ではアクロニスのようなディスクイメージツールベンダーが解決策を提供している。こうしたベンダーは従来のクローニングツールを改良し、構成の異なるハードウェアへのイメージの復元を可能にしており、仮想マシンもサポートしている。だが、V2P移行も行えるP2V移行ツールは、さらに優れた選択肢になり得る。
また、V2V(Virtual to Virtual)移行機能も有益だろう。V2V移行は、異なるベンダーの製品を使って作成された仮想マシン間でOSとそのデータを移動し、ホストレベルの違いを管理して、OSとデータを異なる仮想ハードウェア上で利用できるようにすることを指す。
さまざまなハイパーバイザーがデータセンターで使われるようになると、大企業では、マルチベンダー環境を管理するとともに、異種の仮想プラットフォーム間でアプリケーションを簡単に移動する方法を見いだすことが必要になる。
この分野でもプレートスピンが先行しており、ヴイエムウェア、マイクロソフト、バーチャルアイアンの仮想プラットフォーム間でのV2V移行を既にサポートしている。
ダウンタイムの回避
P2V移行ツールは、いかに効率的なものにも大きな難点がある。移行中は物理マシンが使えないことだ。
移行時間は、ローカルストレージのサイズとネットワークの速度に正比例する。ディスクが72Gバイトの物理マシンを標準的なイーサネットネットワーク経由で移行する場合、平均して最大30分かかる。多大な損失を招きかねないダウンタイムが発生することになる。ミッションクリティカルな環境や、サービスレベル契約(SLA)が適用されている環境では、これは許されないだろう。
幸い、P2V技術は進化しており、既にプレートスピンは、ダウンタイムがまったくないライブ移行を可能にする機能を提供している。この非常に望ましい移行プロセスは、開かれているファイルやロックされたファイルも含め、すべてのファイルのコピーを処理する特殊な技術によって実現されている。
今のところ、ライブ移行機能はWindowsベースの物理サーバ用にしか提供されていないが、プレートスピンはLinuxもサポートする予定だ。
自動化の将来
近い将来、仮想化の対象候補を特定するツールや、キャパシティープランニングツール、P2V/V2P/V2V移行ツールは、もともとの区別がなくなり、自動化されたインテリジェントで自律的なサービスとして24時間常に動作し、仮想データセンターを最適化する役割を果たすようになるだろう。
完全な自動化が実現された環境では、仮想化の対象候補を特定するコンポーネントは、データセンター全体を1日24時間くまなく監視し、使用率の低いサーバと過負荷が掛かっている仮想マシンを探す。それらが見つかるたびに、このコンポーネントはキャパシティープランニングコンポーネントに報告し、キャパシティープランニングコンポーネントは、最適な移行方法を判断する。使用率が低い物理サーバは、仮想マシンに変換され、過負荷が掛かっている仮想マシンは、稼働に余裕のあるホストに移動されるか、物理マシンに変換し直されることになる。これらの判断は移行コンポーネントに伝えられ、このコンポーネントがダウンタイムなしでシームレスに移行を実行する。
この環境全体は完全に動的に機能し、最新のワークロードに応じて刻一刻と変ぼうするだろう。エンドユーザーは、利用しているサービスが仮想マシンと物理マシンのどちらから提供されているのか分からないはずだ。
次回は、2番目の重要な作業フェーズであるエンタープライズ管理のフェーズについて説明する。このフェーズでは、リソースの管理と監視、インフラの自動化、ディザスタリカバリといった幾つかの課題に取り組まなければならない。
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