仮想化導入を担当する専門技術者に必要なスキルは、従来のエンジニアに求められるものとは異なる。企業の経営陣と人事部門は、募集する人材の要件を見直し、幅広い技術的熟練の真価を理解する必要がある。
仮想化技術の普及拡大に伴い、企業では、新しいタイプのアーキテクチャを設計し、新しいツールを使いこなし、新しい結果を解釈することができる専門技術者が必要になっている。
だが多くの企業は、仮想化技術を利用するには特別なスキルが要求されることを理解していない。仮想システムを操るにはOSやアプリケーション以外の要素も扱わなければならないという認識に欠けており、仮想化の専門技術者の採用に当たり、システムエンジニアやアーキテクトを採用する場合と同じ基準で選んでしまう。このため、特にサーバ仮想化の専門技術者は、競争相手が多くなることから、立派な履歴書を出さなければならない。
仮想化技術の普及拡大に伴い、企業では、新しいタイプのアーキテクチャを設計し、新しいツールを使いこなし、新しい結果を解釈することができる専門技術者が必要になっている。
だが多くの企業は、仮想化技術を利用するには特別なスキルが要求されることを理解していない。仮想システムを操るにはOSやアプリケーション以外の要素も扱わなければならないという認識に欠けており、仮想化の専門技術者の採用に当たり、システムエンジニアやアーキテクトを採用する場合と同じ基準で選んでしまう。このため、特にサーバ仮想化の専門技術者は、競争相手が多くなることから、立派な履歴書を出さなければならない。
仮想化導入ガイドPart4では、従来のITスキルセットと、仮想環境の活用に必要なスキルセットの違いを明らかにしながら、仮想インフラの管理を担当するIT専門技術者を採用する際に、どんなスキルを求めるべきかを提案したい。
平均的なシステムエンジニアは1つ以上のOSファミリーを深く理解し、ネットワーキングに関する一定の確かな知識を持っている。しかし、仮想環境を扱うには、それでは不十分だ。現在の仮想化プロジェクトには、慎重な検討を必要とするストレージ、ネットワーク、セキュリティの多くの側面が絡んでいる。このことは、新しいインフラをゼロから構築する場合にも、物理インフラを移行する場合にも当てはまる。利用可能なハードウェアがより強力になり、仮想マシンの自動化ソフトウェアがより成熟するとともに、それらの側面もさらに重要性を増していく。
現在のサーバ仮想化の専門技術者は、幾つかの技術分野を熟知していることが求められる。主要な技術各種の特徴や違いを認識していなければならない。例えば、SANとNASのようなストレージアーキテクチャはどのように異なるか、ギガビットイーサネットのようなネットワーク接続技術はどのような点でInfiniBandに匹敵するか、RADIUS(Remote Authentication Dial In User Service)のような認証方式とLDAP(Lightweight Directory Access Protocol)による認証方法ではどのような違いがあるか、従来のラックシステムとブレードシステムはどのように異なるか、といったことを理解している必要がある。
仮想化の専門技術者は、社内ユーザーの要求と予算に応じて最適な選択を行うために、こうした各選択肢について、実装上の問題とパフォーマンスを明確に予測できなければならない。
言うまでもなく、これらは採用担当マネジャーが、採用候補者の持っている知識を評価する上で知っておくべき最も基本的なことにすぎない。候補者を絞る際には、もっと特別な能力を重視しなければならない。
仮想化は物理的な統合を伴うため、企業は信頼性の高いインフラを慎重に設計し、実装する必要がある。仮想化の専門技術者は、高可用性ソリューションに精通し、個々のアプローチが仮想データセンターのネットワーク、OS、アプリケーションのレベルでどのような影響を及ぼすかを理解していなければならない。
同様に、仮想化の専門技術者は、さまざまなバックアップ技術に習熟し、それらが仮想マシンのパフォーマンスと可用性にどのように影響するか、どの仮想化製品とどのサードパーティーソリューションなら組み合わせて使えるかを完全に把握していなければならない。
さらに、仮想プラットフォームには機能的な制約もあるため、仮想化の専門技術者は、スクリプト言語を使ってそれに対処できなければならず、そのための一連の関連スキルも求められる。
また、仮想化プロジェクトの目的が、数百人あるいは数千人の同時ユーザーをサポートするシンコンピューティング環境(現在では一般にVDI――Virtual Desktop Infrastructure:仮想デスクトップインフラと呼ばれる)の提供にある場合には、採用候補者はターミナルサービスについて、ささいなエラーもビジネスの生産性を大きく損なう恐れがある複雑なシナリオに対応できるだけの豊富な経験も積んでいなければならない。
アーキテクトとエンジニアの最大の違いは、それぞれの使命にある。アーキテクトの使命は適切な設計を行うことであり、エンジニアに求められるのは適切な保守を行うことだ。仮想インフラを設計するには、スケーラブルで信頼性が高く、パフォーマンスに優れたシステムを計画できなければならない。現在、サーバ仮想化プロジェクトで最も重要なファクターは、おそらくパフォーマンスだろう。
パフォーマンスに最も影響するのは、選択されたハードウェアでも仮想プラットフォームでもなく、各仮想マシンで運用されるアプリケーションだ。各仮想マシンは隔離された環境を提供するが、その上でホスティングされるアプリケーションは、物理リソース全体の可用性に間接的に影響する。例えば、エンジニアは、OLAP(OnLine Analytical Processing)エンジンのようなメモリ集約型アプリケーションをホスティングする仮想マシンについては、多くの物理RAMを確保しなければならないだろう。また、データベースのようにI/Oワークロードが重いアプリケーションをホスティングする仮想マシンについては、専用の物理ディスクを割り当てる必要があるだろう。
なお、一般に、リソース要件はアプリケーションのカテゴリーだけでなく、設計にも左右される。例えば、ドキュメントを見る限りではリソース集約型ではなさそうなソフトウェアソリューションが、実際に運用すると、そうであることが分かるというのはよくあることだが、その原因はメモリリークの問題かもしれない。
仮想マシンとリソースの運用に関して言えば、技術的経験が浅い仮想化の専門技術者は、大量のリソースが必要な仮想マシンを、同じホスティングサーバに幾つも配置してしまう恐れがある。そうなると、それらの仮想マシンでは低いパフォーマンスしか得られない一方、ほかのサーバは使用率が低くなってしまう。こうした影響は、仮想マシンとそのアプリケーションが運用される環境の特定の特性によって大きく増幅される。
リソース消費が極めて少ないソフトウェアについても、リソース要件を満たすのが難しいことがある。同時に大量のアクセスが集中する場合があるからだ。このため、仮想化の専門技術者が優れた仕事をするには、社内ユーザーの環境の稼働状況を調べなければならない。アプリケーションごとに、どのような場合にワークロードがピークになるかを監視し、同じ時間帯にワークロードがピークになる仮想マシンが同じ物理マシンで運用されないような仮想インフラを計画することが重要だ。
こうしたことから、仮想化アーキテクトはデータベースやメールサーバ、Webサーバ、アプリケーションサーバなど、さまざまなベンダーの各種アプリケーションに関する豊富な経験を持っていなければならない。仮想化アーキテクトは、各仮想マシンの実行にどれだけのリソースが必要か、適切にサイジングされた環境で各仮想マシンがどのように動作するか、どの仮想マシンに特別な注意が必要かを、明確に見極める力が必要だ。
こうしたことは、仮想化製品のドキュメントには載っていない。データセンターの業務を長年行うことによってのみ、学ぶことができる。
仮想化を導入する企業は、仮想化の専門技術者がどんなスキルを持っていなければならないか、そしてそうしたスキルにどれだけの価値があるかを理解しなければならない。仮想化アーキテクトを従来のシステムアーキテクトやエンジニアと同列に見てしまうと、企業が適切な専門技術者を見つけて採用するのは著しく難しくなる。企業のITスタッフが最新のスキルを身に付けていなければ、短中期的に、仮想インフラのパフォーマンスや企業の業務遂行力に悪影響が出る。そうなればビジネスにとってマイナスになり、高価なアウトソーシングサービスを利用する必要性が高まることになる。それを避けるには、企業の経営陣と人事部門は、募集する人材の要件を見直し、幅広い技術的熟練の真価を理解しようとしなければならない。
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