仮想化技術ハイパーバイザーの実相に迫るColumn

ハイパーバイザーは、ハードレベルでソフトレイヤーを使い、複数のOSを動作させる技術。ゼンソースやサン・マイクロシステムズが関連製品を発表し、注目を集めている。

2006年08月17日 08時00分 公開
[Christine Casatelli,TechTarget]

 ハイパーバイザー技術は、サーバの利用効率を最大限に高めるために仮想化を利用しようと考えているIT部門に大きなメリットをもたらすといわれている。

 仮想化というアイデアそのものは、決して新しいものではない――この用語は何十年も前から、メインフレームのパーティショニング技術に関連して用いられてきた。しかし「ハイパーバイザー」と呼ばれる薄いソフトウェアレイヤーをハードウェアレベルで使用し、複数のOSを同時に動作させるという斬新な手法が注目を集めているのは、サーバリソースをかつてなく効率的に利用できる可能性があるからだ。

 ハイパーバイザー技術は、サーバの利用効率を最大限に高めるために仮想化を利用しようと考えているIT部門に大きなメリットをもたらすといわれている。

 仮想化というアイデアそのものは、決して新しいものではない――この用語は何十年も前から、メインフレームのパーティショニング技術に関連して用いられてきた。しかし「ハイパーバイザー」と呼ばれる薄いソフトウェアレイヤーをハードウェアレベルで使用し、複数のOSを同時に動作させるという斬新な手法が注目を集めているのは、サーバリソースをかつてなく効率的に利用できる可能性があるからだ。

 ITマネジャーにとっては、仮想化技術はコスト削減を意味する。プロセッサ、I/O、ディスクの利用効率を高めることができるからだ。ユーザーにとっては、同じ物理ハードウェア上で異なるOS用のアプリケーションを同時に利用できるため、生産性の向上を期待することができる。

 ストレージとサーバの販売・サービスを手掛けるソリューションズIIでプロフェッショナルサービスを担当するディレクター、ニック・ウェリング氏は、「当社の顧客は、サーバ、管理、消費電力などあらゆる面で経費を削減するための技術として、仮想化に強い関心を抱いている」と話す。

 調査会社IDCの調査も、仮想化技術に対する関心の高さを示している。調査に協力したFortune 500企業のうち75%が、「すでに仮想化技術を利用している」あるいは「1年以内に導入を予定している」と答えた。

 仮想化をめぐる最近の傾向としては、ホストOSとゲストOSの間でリソースを管理するソフトウェアレイヤーよりも、組み込み型のハイパーバイザーの人気が高まっているようだ。「ハイパーバイザーがOSに組み込まれている方が自然だ」と話すのは、調査会社イルミネータで主任ITアドバイザーを務めるゴードン・ハフ氏だ。アドオンタイプよりも組み込み型のハイパーバイザーをユーザーが選ぶと思われるもう1つの理由として、ライセンスの問題があるという。

 この斬新なデザイン手法は、仮想化技術の最適化に向けて各社が開発中のハードウェア/ソフトウェアで登場する見込みだ。すでに数社の大手ベンダーが、それぞれの最新の仮想化製品にソフトウェアレイヤーを統合する方針を明らかにしている。

  • ゼンソースの「Xen 3.0」は、ハードウェア仮想化技術を利用できるハイパーバイザーを組み込み、プロプライエタリなOSもサポートする。Xenは、ケンブリッジ大学で開発されたオープンソースの仮想マシンモニタ(すなわちハイパーバイザー)であり、Xen開発チームの当初のメンバーがゼンソースを運営している。

 Xen 3.0では、32ウェイのSMPマシン上で仮想ゲストを実行することができる。ブレードシステムでのCPUのホットプラグのサポートも追加された。これにより、利用可能なサーバリソースにワークロードを最適配分することが可能になるという。大手ベンダーの中では、レッドハットおよびノベルが、Xen 3.0とその組み込み型ハイパーバイザーを統合した製品を発表した。

  • サン・マイクロシステムズは、ハイエンドの省電力型プロセッサ「UltraSPARC T1」にハイパーバイザー技術を組み込み、任意のゲストOSが動作する仮想マシン環境を実現した。さらに同社は、OpenSPARC構想の一環として、LinuxやBSDなどのOS、ミドルウェア、アプリケーションをUltraSPARC T1プロセッサ(以前は「Niagara」のコードネームで呼ばれていたCPU)にポーティングする作業を支援するために、「UltraSPARC Architecture 2005」および「HyperVisor API」規格を策定した。
  • ヴイエムウェア(カリフォルニア州パロアルト)は6月、次世代の「ESX Server 3」および「VirtualCenter 2」プラットフォームのリリース予定と価格を発表した。ESX Serverでは、x86サーバハードウェアと仮想マシンの間にハイパーバイザーレイヤーを挿入する「ベアメタル」アーキテクチャが採用された。

 マイクロソフトは最近、Windows用に最適化された先進的なハイパーバイザー仮想化ソフトウェア(コードネームは「Viridian」)の計画を明らかにした。それによると、Longhorn Serverの後期版の製造工程向けリリース(2007年中に行われる予定)から180日以内にViridianを出荷する予定だとしている。

 マイクロソフトでは次世代サーバの開発に精を出しているが、セキュリティを強化すると同時に、複数のOSの軽快な稼働を可能にするハイパーバイザーレイヤーを含めるという目標を同社が達成するのは難しい(あるいは不可能)という懐疑的な見方もある。Windowsがモノリシックなデザインであるからだ。

 「Windowsは伝統的にモノリシックなOSである」とハフ氏は指摘する。しかしWindows Longhornでは、マイクロソフトは異なるアプローチで臨んでおり、Release 2にはハイパーバイザーを直接組み込む方針だ、と同氏は話す。

 マイクロソフトで仮想マシン技術を担当するプロダクトユニットマネジャー、マイク・ニール氏によると、同社はプロセッサメーカー各社と共同で、「AMD-V」および「Intel VT」仮想化支援機構を利用するハイパーバイザーを一からデザインしたという。「ハイパーバイザーレイヤーを非常に薄くし、ハイパーバイザーの特権レベル内での外部コードの実行を禁止することにより、トラステッドコンピューティングのための非常にセキュアな基盤を構築することが可能になる」と同氏は説明する。

 ニール氏によると、ITマネジャーがハイパーバイザー技術に注目すべき理由として、セキュリティの改善に加え、コスト面でのメリットが大きいという。一般に、リソースの統合に必要な経費は、運用コストの削減によって賄うことができる。マシンの数が少なければ、使用床面積も少なくて済み、メンテナンスコストや電力/冷却コストも低下し、これらはすべて運用コストの削減につながる、と同氏は話す。

 「Windows Server Longhornの基本技術を利用することにより、ペアレントパーティションの総合フットプリントを縮小することができ、その結果、システムに関連したメンテナンスコストが減少する」とニール氏は話す。

 ハイパーバイザー技術を活用するには、ハードウェアのアップグレードも必要になるが、ハフ氏によると、そういったコストは、ユーザーがハイパーバイザーを採用する上での妨げにはならないという。仮想化を配備する上でもう1つ好都合なことは、マイクロソフトのハイパーバイザーの登場を待たなくてもWindowsを動作させることができるという点である。「ヴイエムウェアなどのベンダーから提供されているツールを利用すれば、現時点で仮想化技術を配備することができる」とハフ氏は話す。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

髫エ�ス�ス�ー鬨セ�ケ�つ€驛「譎擾スク蜴・�。驛「�ァ�ス�、驛「譎冗樟�ス�ス驛「譎「�ス�シ驛「譏懶スサ�」�ス�ス

製品資料 SB C&S株式会社

仮想化を巡るIT業界の混乱に終止符を打つ、仮想化基盤モダナイズへの道筋とは

IT業界では「仮想化」にまつわる混乱が続いており、企業は現状の仮想化環境の再考を迫られている。そこで、仮想化環境の移行先として、また、加速するビジネス環境に対応したプラットフォームとしても適した解決策を紹介する。

製品レビュー SB C&S株式会社

VMware買収後の仮想環境はどう見直す? 知っておきたい3つの選択肢を解説

BroadcomによるVMwareの買収により、VMware製品のライセンス体系は大きく刷新された。永続ライセンスの廃止やエディションでの提供といった変更がある中で、自社はどのように仮想基盤を見直していけばよいのか。そのヒントを紹介する。

製品資料 ニュータニックス・ジャパン合同会社

VMwareによる仮想化環境からの移行を簡素化する方法とは?

IT環境の多様化・複雑化に、VMware買収の話が加わって、組織のIT担当者の悩みは増える一方だ。このような状況において、管理運用の簡素化とリスクの軽減をどのように実現すればよいだろうか。

技術文書・技術解説 ニュータニックス・ジャパン合同会社

仮想化環境の移行をもっと簡単に、知っておくべき「6つのステップ」とは?

仮想化環境の移行を考える際は、「現環境と同じ機能が移行先でも利用できるのか」「ライセンス管理の負担は軽減できるのか」など、さまざまな検討事項が生じる。これらを解決し、簡単に移行を実現するための6つのステップを紹介する。

市場調査・トレンド ニュータニックス・ジャパン合同会社

「VMware買収後」の仮想化戦略 企業はどのように対処すべきか

BroadcomはVMware買収後、製品ポートフォリオやライセンス体系に大きな変更を加えた。ユーザー企業はこの変化にどのように対処し、今後のIT戦略、仮想化戦略を検討、構築していけばよいか。

アイティメディアからのお知らせ

郢晏生ホヲ郢敖€郢晢スシ郢ァ�ウ郢晢スウ郢晢ソスホヲ郢晢ソスPR

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

ITmedia マーケティング新着記事

news017.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news027.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news023.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...