稼働環境、セキュリティ、TCOなどを確認
VDI向けハイパーバイザー比較 Xen、KVM、Hyper-V、ESXiの特徴は
高パフォーマンスで可用性やスケーラビリティに優れたVDIを構築するには、最適なハイパーバイザーを選ぶ必要がある。XenやKVM、Hyper-V、ESXiなど主要ハイパーバイザーの特徴を伝える。
企業のIT部門がVDI(仮想デスクトップインフラ)向けのハイパーバイザーを選ぶ際には、無償と有償のどちらにするかなど、さまざまな点を検討する必要がある。
適切なVDI向けハイパーバイザーを選ばないと、パフォーマンスや可用性、スケーラビリティ、管理に問題が発生する。
ハイパーバイザーはVDIの中核であり、物理リソースを抽象化して仮想マシン(VM)を提供する。企業のIT部門がハイパーバイザーを選ぶ際は、
- 稼働環境
- ハイパーバイザーの保護と管理
- デスクトップデリバリー(配信)
- 総所有コスト(TCO)
を検討する必要がある。さらに、選択したハイパーバイザーが自社の現在や将来の要件を満たすかどうかを確認すべきだ。
稼働環境
まず考えるべき検討事項は、ハイパーバイザーを実行する環境だ。例えば、「KVM」はLinuxカーネルに含まれているため、Linux環境での稼働に限定される。Microsoftの「Hyper-V」を使うにはサーバOSの「Windows Server」または「Hyper-V Server」が必要になる。
ハイパーバイザーをホストするハードウェアも重要だ。Xenはx86、x86-64(x64:64bit版x86)、Armアーキテクチャのサーバで稼働させることができる。「VMware ESXi」のハードウェア要件はこれより狭く、x86-64サーバに限定される。ハイパーバイザーの選択時に現行のシステムを考慮する必要がある。
どのゲストOSの稼働が可能かも重要だ。「Windows Server 2016」でのHyper-Vは「Windows Server 2008」からWindows Server 2016までのWindows Serverと「Windows 7」「Windows 8.1」「Windows 10」、複数のLinuxディストリビューション、「FreeBSD」をゲストOSとして選択できる。VMware ESXiは、これらのOSに加え、さらに古いバージョンのWindowsや他のLinuxディストリビューション、「Oracle Linux」などもゲストOSにできる。
クラウドやハイパーコンバージドインフラ(HCI)など、仮想デスクトップの提供に関わるその他のインフラ要素も考慮する必要がある。例えばXenやKVMは、「OpenStack」などのクラウド環境構築製品でハイパーバイザーとして選択できる。Nutanixは独自のハイパーバイザー「AHV」を開発した。
併せて読みたいお薦め記事
仮想デスクトップの比較についてもっと詳しく
- Microsoftの2大 仮想デスクトップ、「RDS」と「RDSH」のどちらを選ぶべきか
- 徹底比較:VDIの「画面転送プロトコル」、主要3社の技術に違いは?
- Citrix、VMware、Microsoftを比較、画面転送プロトコルが使用するコーデックの差とは
Raspberry Pi VDIの可能性
セキュリティと管理
ハイパーバイザーを比較するには、セキュリティのメカニズムも重要な検討事項だ。例えばHyper-Vは、ディレクトリサービス「Active Directory」を使ってセキュリティポリシーを適用し、信頼された環境でのみ実行可能な仮想マシン(VM)である「シールドされた仮想マシン」(Shielded VM)で仮想環境を保護する。一方ESXiは、ネットワーク仮想化製品「VMware NSX」で、VM単位でファイアウォールを設定できる「マイクロセグメンテーション」を実現する。
ハイパーバイザー管理も検討しなければならない。例えば、Xenを公開するXen Projectは、さまざまな管理ツールも提供している。一方Hyper-Vの標準管理ツール「Hyper-Vマネージャー」は、ホスト数の少ないVDI構成にしか向いていない。大規模な構成には「System Center Virtual Machine Manager」などの管理ソフトウェアを使う必要があり、それには追加のライセンス料が発生する。
ハイパーバイザーをカスタマイズしたり拡張したりできるかどうかも重要だ。XenとKVMはオープンソースのハイパーバイザーなので、ソースコードを使ってインタフェースを作成したり機能を加えたりすることができる。さらにCitrix Systemsは、Xenをベースとする「XenServer」を無償のオープンソースサーバ仮想化ツールとして提供するようになった。
ESXiはオープンソースではないが、VMwareはVM関連操作の自動化や通信のためのAPIを提供している。
デスクトップデリバリー
ハイパーバイザーのデスクトップデリバリーがパフォーマンス要件を満たすかどうかも確認する必要がある。例えばHyper-VとKVMは、ディスク操作を制限してデスクトップデリバリーを最適化するディスクI/Oスロットリングを設定できる。さまざまなワークロード(アプリケーション)に対する総合的なパフォーマンスを比較するベンチマークデータも確認したい。
デスクトップの可用性と信頼性も重要だ。ハイパーバイザーを比較するには、ロードバランシング、レプリケーション、障害復旧、バックアップ機能も検討材料になる。例えばKVMは、VMレプリケーションとライブマイグレーションの他、ホットプラグ(VDIを実行したままバックエンドコンポーネントを追加して仮想リソースを拡大できる機能)を利用できる。Xenは、VMバックアップ技術「Remus」を基にした「Coarse Grain Lock Stepping」という高可用性ソフトウェアを利用できる。
多くのITチームにとって、ハイパーバイザーのスケーラビリティも重要だ。1つのクラスタを構成できるノード(サーバ)数、1ノード当たりの最大アクティブVM数、合計VM数などを確認する。
総所有コスト(TCO)
ハイパーバイザーを比較する際に正確なTCOを算出することは簡単ではない。多くのハイパーバイザーは無償だが、別途発生する費用に注意が必要だ。
例えば、仮想デスクトップで実行するOSのライセンス料や、企業規模の管理ツールのライセンス料だ。システムの導入と維持に必要な機器の購入やITスタッフ増員の費用も発生する。
無償のハイパーバイザーが企業のニーズに適さない場合もある。例えば、VMwareが提供する無償版のESXiは仮想インフラ管理製品の「VMware vCenter Server」で管理できず、バックアップ用のAPIも利用できない。そうした機能を利用するには、ESXiやvCenter Server、その他のコンポーネントが含まれる有償版の「VMware vSphere」を購入する必要がある。
企業向けの機能豊富なハイパーバイザーは他のベンダーも提供している。例えば、XenServerには「Enterprise」「Standard」「Free」という3つのエディションがある。無償のFreeエディションは機能が制限されており、Citrixのサポートとメンテナンスを受けることができない。Hyper-V Serverも無償で利用できるが、System Center Virtual Machine Managerなどの管理ソフトウェアを利用するには別途ライセンスが必要になる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
「インターネットが遅い」問題を解決する、原因特定方法と3つの見直しポイント -
市場調査・トレンド
10G回線サービス調査から見えた幾つもの導入課題、スムーズに解決する方法は? -
製品資料
社会保険料の会社負担で人件費が増大? 給与だけでは見えないコストの算出法 -
市場調査・トレンド
【経営センスが分かるクイズ】過剰借入のチェックに役立つ経営指標とは? -
製品資料
【経営センスが分かるクイズ】「好業績」を錯覚しないためのポイントとは?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「VMware離れ」は本当か 3000社がVCF 9にかじを切った現実的な理由
-
2
ISMSの“コンサル丸投げ”が招く数千万円の無駄 NTTドコモビジネスの脱出劇
-
3
なぜ人はいるのにDXが進まない? ライオンも直面した“老害”レガシーシステム
-
4
「Microsoft 365」が乗っ取られる 跡形もなくMFAを破る手口
-
5
AI全部入り「Microsoft 365 E7」に企業が二の足を踏む訳 移行意向はわずか4%
-
6
AIの「プロンプトインジェクション対策」の盲点 データレイクに潜む脅威とは
-
7
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
8
「Python」だけじゃない AI時代のエンジニアに求められるスキルとは?
-
9
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
10
SESや多重請け案件の“負のループ”を脱却、中小のシステム開発会社を救う策
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
2
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
-
3
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
4
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
5
コスト分析で見る「デバイス復旧」の代償 損失額から導きだされた投資戦略とは
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
「結局、一部の人しか使わない」 AI活用が業務に定着しない根本的な理由
-
8
Macの安全神話は崩壊? 最新の脅威動向から見えた攻撃のトレンドと有効な対策
-
9
3分で分かる経理DX 富士通が約20%の業務効率化を実現した方法とは
-
10
ランサムウェア攻撃を“二重の防御構造”で防ぐ、クラウド型基幹システムの実力
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー