多くの企業が依然としてVMware製品からの移行を検討している。移行先として有力な候補の一つが、Nutanixの仮想化製品だ。今後の戦略について、ラジブ・ラマスワミCEOに話を聞いた。
Nutanixは2025年5月に開催したプライベートイベント「Nutanix .NEXT 2025」で、多岐にわたる新たな取り組みを発表した。ストレージベンダーPure Storageとの新たなパートナーシップ、コンテナオーケストレーションツール「Kubernetes」によるコンテナ環境に対応したHCI(ハイパーコンバージドインフラ)、GPU(グラフィック処理装置)ベンダーNVIDIAのAI(人工知能)開発プラットフォームとの連携強化などが含まれる。
本記事ではNutanixのプレジデント兼CEOのラジブ・ラマスワミ氏との個別インタビューをお届けする。ラマスワミ氏は、仮想化ベンダーVMwareのネットワーク&セキュリティ部門のエグゼクティブバイスプレジデント兼ゼネラルマネジャー、さらには製品部門とクラウドサービス部門のCOO(最高執行責任者)を歴任した人物だ。Cisco Systems、Nortel Networks、Tellabs、IBMでリーダー職を務めた経験もある。
ラマスワミ氏は、今回の発表はNutanixの壮大な計画の始まりに過ぎないと述べ、2025年、より多くの企業がNutanix製品に移行すると見込む。今後の計画、顧客企業の維持に向けた取り組み、コンテナへの対応の理由について、大いに語ってもらった。
―― 仮想化分野でより多くの企業を引き付けるために、どのような計画を立てていますか。
VMwareの仮想化製品のユーザー企業の多くが、今後長期的にVMware製品を使い続けるべきかどうかを検討している。彼らは、顧客企業に寄り添い、5年後、10年後も、確実にサポートを提供するベンダーを探している。Nutanixはこのニーズにしっかりと応えていくつもりだ。
Nutanix .NEXT 2025で明らかにしたように、他のベンダーとの協力関係を構築し、Nutanix製品の機能を一層充実させる計画がある。教育プログラムと認定資格にも注力し、より体系的に整備する計画だ。創立当初、Nutanixは小さな企業だったが、今や巨大なプラットフォームを提供する企業になりつつある。現在Nutanixの顧客企業は約2万7000社だが、10万社を超える潜在顧客にアプローチできる可能性がある。これからも前進と拡大を続けていく。
―― 2025年は何に重点的に取り組みますか。
中核となる製品の技術革新を推進し続け、エコシステムを広げていく。拡張性、セキュリティ、クラウドサービス、AIへの投資も継続していくつもりだ。特にAI分野は、新しいモデルと技術が次々と登場し、変化が非常に速い。さまざまなベンダーとのパートナーシップを拡大しながら、変化に確実に対応していく。
―― VMwareの件は、ベンダーロックインの深刻さを浮き彫りにしました。Nutanixはオープンな姿勢を維持しますか。
Nutanixは顧客企業の満足度を軽視し、何かを一方的に強要するような企業ではない。当社の製品のあらゆるレイヤーにおいて、自由度と柔軟性を提供している。ハードウェア製品でも、ハイパーバイザー製品でも、顧客企業が自由に選択できる余地がある。実際、当社のHCI製品上でVMwareのハイパーバイザーを使用したVM(仮想マシン)の稼働が可能だ。ライセンスも使用したい機能に応じて柔軟に構成できる。他のクラウドサービスへのライセンスの移植も可能だ。使いやすい料金設定を維持できるよう、長期的に努力していく。
―― VMwareから移行してくる企業のニーズには具体的にどのように対応していますか。
Nutanixの製品がVMware製品と全く同じというわけではないが、似てはいる。NutanixはVM、仮想ストレージ、仮想ネットワークをフルスタック(関連分野を網羅した)で提供している。もちろん多くの点でVMwareとの差別化を図っている。例えばデータベースに関する機能はVMwareよりはるかに多い。Nutanixのハイパーバイザーはオープンソースの「KVM」(Kernel-based Virtual Machine)ベースなので、ファイルストレージおよびオブジェクトストレージ向けに最適化するようリソースを集中できるからだ。
Nutanixのクラウドサービスは、VMwareのそれとは少し異なる。ソフトウェア定義型で、単一のライセンスで、どこにでも導入できる。導入と運用はとてもシンプルだ。
買い切り方式の時代は終わったと思う。今のVMwareを見ると、仮想化製品のクラウドサービス化に重点を置いていることが分かる。Nutanixは売上高のおよそ4分の1に当たる資金を研究開発に投資している。技術革新を今後も進め、サービスを維持していくためには、サブスクリプションモデルが必要だ。
―― 従来型の仮想化環境が主流でしょうか。それともコンテナのような、より現代的なインフラの仮想化技術が普及しているのでしょうか。
現在、多くの企業が自社のアプリケーションを従来の仮想化基盤で運用している。この状況は今後10年は続くと予測する。実際、顧客企業と話すと、現在の仮想化に非常に満足しているのが分かる。
今回発表したコンテナに対応したHCI、「Nutanix Cloud Native AOS」は、全く新しいタイプのアプリケーションをターゲットとしている。近年、モダンなアプリケーションはコンテナ環境で構築・運用されているが、今後、クラウドコンテナのような新しいサービスが必要になるはずだ。逆に、ベアメタルサーバ上でのアプリケーション展開が必要なケースもある。Red Hatのコンテナ用ソフトウェア製品群なども存在するし、コンテナ分野でも参入の余地は大きいと見ての動きだ。
―― Nutanix .NEXT 2025では、ストレージベンダーを中心とした他社とのパートナーシップが大きな注目を集めました。なぜ自社開発しないのでしょうか。
パートナーシップを拡張している理由は、自社開発するリソースがないからではなく、顧客企業の選択肢を増やしたいからだ。今のNutanixは十分に大企業だ。私たちには数十万人規模のVMwareから移行してきたエンドユーザーがいて、その中には、Dell TechnologiesやPure Storageといった保有しているストレージの継続使用を希望する人もいる。それで、両社とパートナーシップを締結し、サポート対象となるストレージを拡張した。
<翻訳・編集協力:雨輝(リーフレイン)>
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