キーワードでひもとくバックアップ最新事情【第3回】
“アーカイブ”をバックアップと混同するなかれ
バックアップと混同されがちな“アーカイブ”だが、本来その目的や実現手段はまったく異なるものだ。アーカイブを正しく理解し、使いこなすことで、さまざまなメリットを享受することができる。
そもそもアーカイブとは
「アーカイブ」という言葉自体は非常に広く使われていることもあり、多くの人が通常のデータ保存やバックアップと混同してしまいがちだ。確かにデータ保存やバックアップと密接に関係しているのだが、「アーカイブとは何か?」「どのようにシステムに組み込むのがいいのか?」という点を整理することで、大変効率よくストレージを運用できるようになるのだ。
さらに、今後は内部統制やコンプライアンス(法令順守)を推進する際にアーカイブが大変重要な意味を持つようになることもあり、今回のキーワードとしてあらためて取り上げてみたい。
一般的にアーカイブとは「1つ、もしくは複数のファイルを圧縮して保存すること」ととらえられがちだが、アーカイブのそもそもの由来は「記録保管庫」からきている。例えば、書類などを長期にわたって安全に保管して、必要になった場合に容易に取り出すことができる書庫のようなものだと考えればいい。この場合、書類を取り出す際に「誰がいつ取り出したのか」「いつ返却するのか」「何年間保管するのか」などといった記録を残すよう運用することが重要だ。アーカイブとは、このもともとの意味をITに当てはめた用語であり、「普段使用しているストレージから情報資産を抜き出して、長期保存に適した別のストレージに安全に保管すること」を意味するのである。
データは日々増え続ける
ここで、アーカイブの必要性について見直してみたい。今日の情報システムが直面している大きな課題として、「日々増殖し続けるデータをいかにして管理するか」が挙げられる。データは日々増加するのに、同じ方法でバックアップを続けていれば、その作業に必要な時間と保管メディアの容量が増え続けることは明らかである。
また、定期的にフルバックアップを取るのは、変更されていないデータまで何度も保存することになり、大変効率が悪い。そこで、もう変更されることがなくなり、アクセス頻度も低くなったデータをアーカイブすることで、稼働系システムが管理するデータ容量を小さくできる。結果、稼働系システムでのバックアップ対象のデータ量が減り、バックアップ作業に要する時間も短くなる。
ストレージ階層化に必須のアーカイブ
では次に、どのようにアーカイブをシステムに取り入れるかを考えてみたい。皆さんは「ILM(情報ライフサイクル管理)」というキーワードをご存じだろうか。これは、情報が生成されてから削除されるまでのライフサイクル全般を管理するための手法である。基本は「すべての情報が同じ価値を持っているわけではない」という考えに基づいている。
例えば、今日届いた緊急のメールは、1年前に届いたメールよりも当然のことながら重要度が高い。このように、情報の価値は時間の経過とともに変化する。従って、価値の異なるデータを押し並べて同じ状態で保存する必要はないのである。
具体的には、ストレージを高性能な「FC(Fibre Channel)ストレージアレイ」、導入の容易な「SATA(Serial ATA) IPストレージ」、改変されないデータの保管に最適化されコストパフォーマンスに優れた「CAS」(Contents Addressed Storage)と呼ばれるストレージ、遠隔地保管に適した「リムーバブルメディア」などに階層化する。そして、情報のライフサイクル(作成・生成、公開、閲覧・配布、保存・アーカイブ、廃棄・削除など)に応じて管理方法をルール化し、階層化されたストレージの各階層にデータを適宜移動・配置していくことで、情報の利便性を損なうことなくコストを削減できる。この考えを実現するためには、アーカイブは決して欠かすことができないのである。
バックアップとアーカイブの違い
バックアップとアーカイブは切っても切り離せないものだが、同時に似て非なるものでもあり、使い分けが必要である。アーカイブは、ほとんど参照することがなくなったデータを通常運用から抜き出し、別に保存しておくことであり、バックアップのように障害時にデータを戻すためのコピーを取っておくものではない。以下に、バックアップとアーカイブの違いを簡単にまとめてみた。
| バックアップ(データ保護) | アーカイブ(データ保管) | |
|---|---|---|
| データの特徴 | データのセカンダリコピー | オリジナルデータ、またはプライマリコピー |
| 目的 | 障害時におけるデータ復旧 | 使用頻度の低いデータの退避 |
| そのほかの用途 | 災害対策、本番データのコピーを使用したテスト | コンプライアンス対策 |
| データの保持期間 | 比較的短期(数週間~数カ月) | 比較的長期(数カ月~数年間) |
| ユーザーアクセスへの透過性 | なし (リストアのオペレーションが必要) |
あり (オフラインメディアにアーカイブしていない場合) |
| 実行手段 | バックアップソフトウェア、レプリケーションソフトウェア | アーカイブソフトウェア(ポリシーエンジン) |
アーカイブというと、単純にデータを長期保管するだけだと思いがちだが、このようにバックアップとアーカイブははっきりその目的が異なり、運用管理の手法も違ってくることを認識する必要がある。この点をまず理解しておくことで、アーカイブの効果を最大限に引き出すことができるのである。
アクティブアーカイブ
ただしアーカイブを行うにしても、管理者が手動でデータを移動する方法では時間と労力がかかってしまい、人為的ミスも生じてしまう。そうした課題の解決に役立つのが「アクティブアーカイブ」だ。
アクティブアーカイブとは、データをアーカイブする要件をポリシーとして設定し、自動的にデータを低い階層にある安価なストレージに移動させる仕組みである。アーカイブの要件としては、「変更がない」「アクセスがほとんどない」「法令順守のために長期保管しなければならない」「データを改ざんされたくない」など、稼働系システムに必ずしも保存しなくてもよい条件を定義する。このようなデータをアーカイブすることで、1次ストレージには稼働系システムで本当に必要なデータだけを自動的に残すことが可能となる。
また、アクティブアーカイブをディスクのようなオンラインのメディアに行うことで、データを移した後もショートカットやプレースホルダを元の場所に残しておき、あたかも移動されていないように見せかけることも可能である。そうすることで、ユーザーはそのデータ(ファイル)がアーカイブされたことを意識する必要がなく、従来通りの方法でデータにアクセスできるのである。
コンプライアンスのニーズ
アーカイブを行う目的の1つに、コンプライアンス用途がある。企業システムには顧客情報、営業情報、特許情報、財務情報など、さまざまな機密情報があふれている。これらを重要な企業資産として位置付け、保護と管理をいかにして行うかが大きな課題となっている。これを単なるファイルサーバに保存した場合には、不正なアクセスや改ざん、ケアレスミスによるデータ紛失などの危険性が伴う。また、容易に外部に持ち出すことも可能である。
そこで、コンプライアンス用途のアーカイブが効果を発揮する。冒頭で、書庫に書類を保管する際にさまざまな記録・履歴を残す例を挙げたが、考え方は同じである。アーカイブは単にデータ容量を削減するためではなく、「確実な記録」を残すことができる点が大きなメリットなのである。
確実な記録は、以下のような要件を満たす必要がある。
- 完全性:内容の詐称、改ざん、または破損の恐れがない
- 機密性:アクセスできるユーザーを限定し、鍵管理も可能である
- アクセス性:開示要求に応じ、即座にアクセスできる(オンラインストレージの特性)
- 確実性:定めた保管期間を安全に守り、期間を超えたものは自動的に削除される
アーカイブ専用のソフトウェアとディスクストレージ装置(もしくはテープ装置)を組み合わせることで、上記の要件を満たす堅固な仕組みを実現し、企業の重要なデータを確実かつ安全に保管することが可能となる。
以上のように、アーカイブを正しく理解して使いこなすことで、ストレージ運用の効率化とバックアップ軽量化によるコスト削減を実現できる。さらには、コンプライアンス対応の効果ももたらしてくれる。皆さんもアーカイブを賢く取り入れて、理想的な情報ライフサイクル管理を目指してみてはいかがだろうか。
<筆者紹介>
羽鳥正明
EMCジャパン株式会社 マーケティング本部 プロダクト・マーケティング・マネジャー
同社にてバックアップ・リカバリ関連製品のプロダクト・マーケティングを担当。
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