アウトソーシングよりメリットがあるのか
アプリケーション開発・管理のインソーシングを検討する
それまでアウトソースしていたIT業務を内製化する、いわゆるインソーシングが増加傾向にある。移行に当たり検討すべきポイントを紹介する。
アプリケーションの開発と管理のインソーシングを検討しているIT部門は、業務データを社内に置く必要性を見極めるとともに、移行計画についてベンダーと率直に話し合うことが大切だ。
インソーシングとは、これまでアウトソースしていたIT業務を内製化することであり、専門家によると、この動きは増加傾向にあるという。米コンサルティング会社GartnerのITサービス&ソーシング部門で調査担当副社長を務めるデイン・アンダーソン氏によると、アプリケーション分野ではアウトソーシングが“散発的”に発生しており、これは主としてベンダーのサービスに対する不満が原因だという。
通常、こういった不満が起きる責任はベンダーだけにあるのではない。「ベンダーのスキル不足よりも、要件があいまいなことが原因であるケースが多い」とアンダーソン氏は指摘する。
また、IT部門はインソーシングへの移行の主な動機として、アプリケーションへの関与の必要性を挙げることが多い。アウトソーシングを専門とする米コンサルティング会社Alsbridgeのベン・トローブリッジCEOは「IT部門に求められるアプリケーションへの関与の密接度は、その企業のビジネスによって異なる」と語る。
IT部門は、自社のビジネスに応じてアプリケーションのアウトソーシングとインソーシングとの間で適切なバランスを見つける必要がある。アンダーソン氏とトローブリッジ氏は、これまでアウトソースしていたITアプリケーションの開発・管理業務をインソースするに当たってのアドバイスを提供している。
アウトソーシングの現状を把握する
「多くの企業が抱えてきた最大の問題の1つが、何でもため込んでしまうことだ」とアンダーソン氏は話す。「次から次へと追加していった結果、アプリケーションポートフォリオは往々にして物置小屋のようになってしまう」
アプリケーションのインソーシングへの移行決定は、社内にある個々のアプリケーションあるいはアプリケーション群の内容に基づき、アプリケーションとの密接度の必要性を勘案した上で行うことが重要だ。
「企業がソフトウェアやアプリケーションを活用してビジネス価値を実現しようとする場合、その目的により直接的に関連しているものは社内に置くべきだ」とアンダーソン氏はアドバイスする。「アプリケーションの視点から見れば、問題は『現時点でビジネスに重要なのは何か』ということだ。データを社内に置き、データの利用方法を管理する必要があるのかどうかが判断基準の1つになる」
アンダーソン氏は、内製化の対象となるアプリケーションの例として、ビジネスインテリジェンス(BI)アプリケーションを挙げる。ただし、適切なツールとスキルが社内に存在することが前提だ。「マイニングすべきデータの重要性が高いとすれば、そのデータを外部の業者に預けて分析を任せるのは問題だ。これは直感的に理解できることだ」と同氏は話す。
初期コストの削減だけでなく、ライフサイクル管理の視点から考える
アンダーソン氏は、アウトソースする理由を顧客企業に質問するという。彼らの主要な目的がコスト削減であり、最初の12カ月でそれを実現したいと考えている場合、長い期間にわたって大幅なコスト削減を実現できない可能性がある長期契約の必要性は少ないという。
「アウトソーシングを決めた理由を尋ねると大抵、“コストを削減するため”という答えが返ってくる。しかし、その次に何をするのかという問題が忘れられている」と同氏は指摘する。「アプリケーションライフサイクルに注目する必要がある。一部のアプリケーションはアウトソースしてもいいだろうが、新たな開発業務やカスタマイズのニーズには社内で対応すべきだ」
ITアウトソーシングの契約書や関連文書を確認する
トローブリッジ氏によると、これまでアウトソースしていたITアプリケーション業務をインソースすることを検討している企業は、まずITアウトソーシング契約をチェックし、ベンダーに対して自社がどのような義務を負っているのかを確認すべきだという。さらに同氏は、アウトソーシング契約の交渉当初からの販促資料をすべて見直すことを勧めている。ITアプリケーションを内製化することになった場合に、プロバイダーが移行を支援するという保証が含まれていることも多いからだ。
ベンダーと話し合う
あなたの会社が何を計画しているのかについて、ベンダーと率直に話し合い、スムーズな移行に向けた計画の策定でベンダーの協力を取り付けることが重要だ。
「移行準備が整っているかどうかのチェックを行い、自社のデータ収集、分析、確認の方法について話し合い、今後の作業手順を文書化する必要がある」とトローブリッジ氏は話す。「つまり、移行作業を開始する前に、完ぺきな計画を策定するということだ。そうでないと、文書で正式にベンダーに通知したものの、具体的にどうやって移行すればいいか分からないといった状況に陥りかねない」
移行後に必要な人員を確保する
トローブリッジ氏によると、移行後の組織構成が決まったら、人員配備という問題に目を向け、必要なスタッフの数を確認する。
トローブリッジ氏は最近、アプリケーションのインソースを検討していた消費者金融会社と一緒に仕事をする機会があった。この会社は以前、アプリケーションを2社のベンダーにアウトソースしていた。各ベンダーはそれぞれ25~30本のアプリケーションをサポートし、各アプリケーションに対して数人のスタッフが対応していたという。
「これらのアプリケーションをすべて内製化するのに必要とされる知識は半端ではなかった」とトローブリッジ氏は話す。「60本余りの異なるアプリケーションがあり、マニュアルも別々だった」
インソースしたアプリケーションにかかわる業務の範囲にもよるが、IT部門はこれらの業務を担当する人員を確保する必要がある。「これは、アプリケーションを内製化する際にIT部門が最も苦労する問題の1つだ。60種類の業務が新たに発生するのに、これらの仕事を担当するのに適切なスキルと関心を持った人材が見つからないとなれば問題だ。これは組織と人材の根本的なミスマッチだ」とトローブリッジ氏は語る。
詳細かつ柔軟なインソーシングプランを策定せよ
「アプリケーションのアウトソーシングプランあるいはインソーシングプランは詳細なものでなくてはならないが、あまりに詳細過ぎて柔軟性に欠けるようであってはならない」とアンダーソン氏は話す。例えば、アウトソーシングによって向こう12カ月間で15%のコスト削減を期待していたとする。アウトソーサーがその期待に応えた場合、さらに多くの業務をそのベンダーにアウトソースすることを検討すればよい。期待に応えられなかった場合は、アウトソースした業務を社内に戻すことがアウトソーシング契約で認められているかどうか確認すべきだ。
アンダーソン氏は、アプリケーションのアウトソーシングあるいはインソーシングの準備が整っているかどうかを判断するに当たっては、幾つかのポイントをチェックするようアドバイスしている(囲み記事参照)。
トローブリッジ氏は「アウトソーシングは特定時期におけるニーズに対応するためのツールではあるが、常に正しい解決策とは限らない」と強調する。
「状況が変化してニーズに合わなくなった場合に必要なのは、その業務を内製化できるという柔軟性だ。そういった柔軟性があれば、IT部門は変化に応じて自社のアプリケーションの運用形態を調整することが可能だ」(同氏)
インソーシングかアウトソーシングかの判断に際してのチェックポイント
Gartnerのアナリスト、デイン・アンダーソン氏は、IT部門がアプリケーションをアウトソーシングすべきかインソーシングすべきかを検討する際には、次のポイントをチェックするようアドバイスしている。
- そもそもアウトソーシングの目的は何か?
- どのアプリケーションをアウトソースし、どのプロバイダーを利用するのか?
- 各アプリケーションの責任者は誰か? また将来、インソースする場合に備えて、社内にスタッフを残しておくのか?
- アウトソーシングの形態は――SaaS(Software as a Service)方式あるいはマネージドホスティング方式か、あるいは一部のアプリケーション業務を社内に残すのか?
- アウトソースの場所は――オフショア、国内、それともオンサイト?
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