病院向けKPIを300種類以上搭載
病院の経営管理を支援するBIソリューション「Dr.MPM」
複数の調査機関が「医療機関の倒産件数や負債総額が増加傾向にある」と指摘するなど、その経営は危機的な状況にある。そんな中、医療機関を支援するBIソリューションの導入が進んでいる。
- 2012年6月現在、アシストは「Dr.MPM」の販売を中止しております
医療機関の経営危機はより深刻に
公共サービスとしての側面を持つ医療機関は、単に利益を追求するだけが目的ではない。しかし、その経営がうまくいかなくなると、診療行為を受けられるはずの地域住民に与える影響は大きい。
帝国データバンクが2010年2月に発表した調査によると「2009年4月から2010年1月までの医療機関の倒産件数は41件」となった。これは現在の集計方法となった2005年度以降、過去最悪の倒産件数である。また、東京商工リサーチの調査では「2009年に倒産した医療機関の負債総額は前年同期比128.7%増の250億6000万円に上り、負債10億円以上の大型の倒産が増えている」という。原因別では「業績不振」が25件で最も多く、「放漫経営」「既往のシワ寄せ」「設備投資過大」などが続いている。最近は自治体病院の閉鎖も相次ぐなど、医療機関の経営は深刻な状況にある。
医療機関の経営に役立つITの活用方法はないだろうか?
最近、病院における「ビジネスインテリジェンス」(以下、BI)ソリューションの導入が進んでいる。BIソリューションとは「組織内外のデータを収集して加工し、それを分析した結果を基に経営上の意思決定や業務改善に活用する」というものだ。本稿ではその中の1つである、アシストの「Dr.MPM」を紹介する。Dr.MPMは、2010年6月に販売開始された、病院の経営管理に特化したBIソリューションだ。
病院の経営管理に特化した「Dr.MPM」
Dr.MPMはアシストとジールが共同開発した製品で、米国のInformation Builders社が開発した企業の業績管理ソフトウェア「WebFOCUS Performance Management Framework」(以下、WebFOCUS PMF)がベースとなっている。
WebFOCUS PMFは「バランスト・スコアカード」(以下、BSC)を取り入れた経営戦略の達成状況を評価/分析する機能を持つ。BSCとは「財務の視点」「顧客の視点」「内部業務プロセスの視点」「学習と成長の視点」という4つの視点を軸にして、企業や組織の経営方針とその戦略を具体的なアクションへと落とし込み、その計画立案や実行評価を行うという考えや仕組みを指す。BSCを利用すると、経営戦略に応じた個人や部門ごとの実施項目(CSF)や数値目標(KGI)、業績評価指標(KPI)を設定し、その計画・実行、評価を繰り返すことで、組織内の業務プロセス改善や各個人のスキルアップを促すことが可能になる。
WebFOCUS PMFは、組織の経営目標に応じたKPIを設定して「戦略マップ」を作成する。また、実績管理機能によって現場の実績データと連動させることで、戦略策定から実行までのモニタリングを可能とする。業種ごとのテンプレートを保有しており、米国では流通業や製造業、公共機関などでの活用事例が多い。
アシストのIBソフトウェア事業部 事業部長、上村雅豊氏は「BSCや戦略マップなどの管理手法は一般企業の中でも取り入れているが、日本では特に医療従事者が先行的に研究しており、その知識を習得していることが多い。BSCが受け入れらやすい分野ということで、Dr.MPMを市場に投入した」と説明する。
約300種類のKPIの分析が可能
Dr.MPMは、WebFOCUS PMFの機能とジールがノウハウを持つ日本の病院経営における独自の評価指標(KPI)テンプレートやBSCを組み合わせた製品。病院経営向けに約300種類のKPIが標準搭載されている。具体的なKPIとしては「実稼働率」「医師の確保」「平均在院日数」「ヒヤリハット件数」といった項目がある。さらに「長期療養型」「救急救命型」「専門病院型」など病院の特性に応じたフレームワークライブラリも用意されている。導入時にはこのライブラリを活用しながら、各病院に適する形で戦略目標やKPIを選択することが可能だ。
| BSCの分類 | 主要CSF | 主要KPI |
|---|---|---|
| 研究型病院BSC | 研究活動の活性化 教育体制の拡充 従業員満足度の向上など |
学会発表数 専攻医医師数 病院外での研究講師など |
| 専門病院型BSC | 効率的医療サービス 組織風土 最新・最適医療の提供など |
専門特殊外来の設置 がん科学療法チームへの参画数 逆紹介率など |
| 救急・救命型病院BSC | 救急医療サービスの提供 医療付加価値の向上 最新医療機器の導入など |
救命センターの実稼働率 救命認定医の確保 チーム医療推進数など |
| 長期療養型病院BSC | 患者QOL(Quality of Life)の向上 地域連携の推進 安全性の確保など |
平均在院日数 地域連携クリニカルパス数 ヒヤリハット件数など |
アシストはDr.MPMと共に、個別のテンプレート作成から経営情報データベース(DB)の構築などをオプションメニューとして用意している。上記の図はシステム構築の例である。まず、電子カルテやレセプトコンピュータなどの医療システム、Microsoft Office Excelで管理されている各種の実績データをDBへ取り込む。そのデータを基に、テンプレートに備えられているKPIに応じて経営戦略マップの作成や分析リポートなどに活用できる。
アシストの情報基盤販売推進室 部長、小林 誠氏は「データ抽出機能まで備えているソリューションは少ない」と、ほかの製品との差別化ポイントを説明する。また、データを抽出できるDBの種類が40種類以上あることから、「特定のベンダー製品に依存しない“オープンなプラットフォーム”である点も特徴」と語る。
病院向けならではの「社会の視点」で経営状況を評価
Dr.MPMでは先述した4つの視点のうち「顧客の視点」を「患者の視点」に置き換え、「社会の視点」を加えた5つの軸によって、病院の業務状況や経営状態を分析し、その改善を促すための計画立案や実行評価を行う。
アシストのIBソフトウェア事業部 技術部の浅田知明氏は「病院経営では、単純に利益だけを追求するわけにはいかない。社会の視点、財務の視点、患者の視点などに関係する“診療プロセス”や“従事者の育成”などが重要である」と説明する。
Dr.MPMの戦略マップや分析リポートでは、各KPIの達成率を表示された色で判断できる。また、コメントを挿入することもでき、Webブラウザを通して関係者間での情報共有も可能だ。さらに「ダッシュボード」機能によって、経営層が全体の状況をふかん的に把握したり、各指標の関連性を踏まえながら現状の課題の原因となる要素を追跡できる。例えば、戦略マップ上のあるKPI項目をクリックしてドリルダウンすることで、KPIリポートを活用してほかの指標との因果関係を踏まえたより詳細な分析が可能だ。
Dr.MPMではユーザーごとにアクセス権限を設定でき、病院の経営層や医事課マネジャー、現場のリーダーといった関係者がそれぞれの役職に合わせて利用できる。
BSCベースの経営管理を行いたい病院が対象
Dr.MPMは300床以上の病院を主なターゲットとしているが、上村氏は「KPIテンプレートを基に必要な項目を選択できるので、BSCをベースにした経営管理を行いたい中小規模の病院向けにも展開できる」としている。
Dr.MPMの導入費用は500万円から。導入期間は導入先のシステム構成によって異なるが、各システムのデータを連携させるDBを構築する場合でも3、4カ月で実装、本稼働が可能だという。
また、上村氏はDr.MPMの販売目標として「300床以上の病院を中心に20施設への導入」を掲げた。アシストは今後、Dr.MPMの導入病院を参考にしながら、フレームワークライブラリのブラッシュアップを進めるという。さらに、より多様なリポート表示を可能にするためにAdobe Flexを活用した機能強化を図るとしている。
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