ERP製品カタログ【第3回】オービック
「OBIC7」が自社開発、自社導入にこだわる理由
国産ERPパッケージの代表格の1つである統合型ERP「OBIC7」。その特徴は機能に加えて、自社開発、自社導入によって蓄積した業務ノウハウだという。IFRSへの対応を含めて担当者に聞いた。
オービックが提供する統合業務ソフトウェア「OBIC7」(オービックセブン)は、1997年に初代バージョンがリリースされて以来、2010年3月末までに出荷累計ライセンス数が8000を数える、国産ERPパッケージの代表格の1つである。会計・経理分野を中心に人事、給与、販売、生産と企業の基幹業務を幅広くカバーするとともに、同社の最大の強みであるシステム構築(SI)のスキルを武器に、業種を問わず中堅規模以上のさまざまな国内企業に導入されている。
また同社は、内部統制やIFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)といった、国内企業が現在直面している新たな課題にもいち早く対応し、ソリューションを提供しているという。本稿では、同社の製品の特徴を紹介するとともに、特にIFRSを中心とした、今日の企業を取り巻く新たな外的要因に対する同社の取り組みについても紹介する。
全体最適と部分最適のどちらにも対応する「統合型」ERP
「OBIC7の特徴を一言で言うと、『統合型』と表現できる」。オービックのソリューション推進本部 部長の中村光徳氏は、同社の製品の特徴をこのように説明する。 OBIC7の製品ラインアップは、会計・経理を担う「会計情報システム」を中核に据え、「人事情報システム」「給与情報システム」「販売情報システム」「経営分析システム」「生産情報システム」「就業情報システム」という各業務系システムが協調しながら動作する構成になっている。
「統合型ERP」という、うたい文句は他製品でもよく聞かれるが、OBIC7の場合は少しそのニュアンスが異なるという。各業務システムはコンポーネント化され、共通の技術基盤の上で動作する。そのため各システム間の親和性は高く、トータルシステムとしてすべてを一括導入するのに適している。しかし同時に、各企業のニーズに合わせて各システムを個別に導入しやすいようにも配慮されているという。同製品のこうした設計思想について、同社 ソリューション推進本部 営業企画部 次長の堀内重孝氏は「全体最適と部分最適、どちらにも対応できるようになっている」と説明する。
「昨今は企業の事業変化のスピードが速いため、すべての機能を一枚岩で統合したシステムでは、フットワークが悪くなってしまう。事業の変化に合わせてシステムを柔軟かつ迅速に改変していくためには、機能をある程度コンポーネント化して、それを組み合わせる形の方が望ましいと考えている」(堀内氏)
ただし、部分最適化アプローチを取る場合でも、標準化できる部分は徹底的に標準化を追求しているという。例えば、J-SOX(財務報告に係る内部統制報告制度)で求められるログ管理機能や承認フロー、認証の仕組みなどがそれだ。こうした非機能要件は共通基盤上で標準化し、一方でその上に載る機能要件に関しては全体最適アプローチと部分最適アプローチのどちらでも取れるようにする。これがOBIC7の設計思想である。
一部のコンポーネントのみを導入する部分最適から、すべてのコンポーネントを導入する全体最適への移行パスも用意しているという。その際に役立つのが、同製品が持つもう1つの特徴、「テンプレート機能」である。同製品でシステムを構築する際、業種・業態ごとに用意されたシステムのひな型、すなわちテンプレートを活用することにより、比較的容易かつ迅速にシステムを組み上げることができるという。
このテンプレートは、基幹の会計業務をつかさどる部分と、フロント業務を担う部分の二段構えになっている。
「例えば物販業とサービス業では、会計上の数字が発生するタイミングがまったく異なる。従って、まずは会計のレベルで『物販業向け』『サービス業向け』といったようなテンプレートに分けられる。さらに、同じ物販業でも業界ごとにフロント業務で扱う情報は異なる。従って、フロント業務のレベルでさらにさまざまなテンプレートに分かれている」(中村氏)
最大の強みはSIerとしてのノウハウ
ここまで、主にOBIC7の製品機能について見てきたが、堀内氏は「オービックの最大の強みは製品機能にはない」と述べる。
「オービックとしてのメイン業務は製品の販売ではなくてソリューション。製品機能だけがあっても、顧客に優れたソリューションが提供できるわけではない」(堀内氏)
同社のテレビCMを聞かれたことがあるだろうか。そのCMの中では、「システムインテグレータのオービック」というナレーションが流れる。決して「パッケージベンダーのオービック」ではない、というアピールである。
事実、同社では製品の開発だけでなく、導入やカスタマイズなどのSI作業も含め、すべて自社要員で行っている。さらに、販売も代理店を通さず、直接販売のみだ。自社開発、自社販売、自社導入。すべてを自社内で行うことによりさまざまなノウハウが蓄積される。「このノウハウこそが、われわれの最大の強み。製品の機能差ではない」と同社 ソリューション推進本部 開発推進統括部 次長の叶谷真嗣氏は言う。
「オービックのSEは全員、会計のスキルが必須となっている。その上で、それぞれ業務や技術に関して得意分野を持っている。こうしたSEをわれわれは『マルチスキルSE』と呼んでいる。このようなSEが現場で顧客の声をヒアリングして、それを製品開発にフィードバックしている。あるいは、開発担当者が直接顧客先へ出向いて、ヒアリングを行うこともある。このようにして、全社レベルで高度なノウハウが共有されていく」(叶谷氏)
ちなみに、現在同社が最も積極的にノウハウの吸収に努めているのが、連結会計の分野だという。
「会計の世界では今後、連結重視の考え方がより進行していくと考えている。そのため、連結会計に関するスキルの習得に力を入れている。また製品では、会計情報システムの機能の一部として、既に連結会計の機能を盛り込んでいる。これまでは連結会計に関しては、連結の機能に特化した製品が別途導入されることが多かった。OBIC7のように統合機能の一部として連結会計機能が組み込まれている例はまだ少ないのではないかと思う」(堀内氏)
さらに、連結重視やIFRS適用の流れを先読みして、経営分析ツールの機能強化も進めているという。
「IFRS時代になると、経営指標の見方がこれまでの損益計算書重視から貸借対照表も含めた形に変わってくる。IFRSに関しては制度上、まだ先行きが不透明な部分もあるが、とにかく顧客が今までより多様な切り口で会計データを参照できるよう、今後は可視化・分析ツールの機能を強化していく予定だ」(叶谷氏)
コンバージェンス対応のための機能拡張はほぼ完了
OBIC7のIFRS対応、特にコンバージェンスに対する備えは既に大まかな部分では完了しているという。
「2011年6月まで続くコンバージェンスへの対応については、データベース設計の拡張や基本機能のチューンアップによって、既にほぼ完了している。『包括利益の表示』や『収益認識』『減損の戻入れ』『リース会計基準』などに関しては対応を終わっていて、『過年度遡及修正』についても基本的な財務会計上の手当ては既に終わっている。後は、企業会計基準委員会(ASBJ)が今後出してくる適用指針を見ながら、微調整をかけていくだけ」(堀内氏)
では、IFRSアドプションについては、同社はどう対応するのか。これを考える上で同社がポイントとして挙げるのが、「コンバージェンスされた日本基準と、IFRSとの差異」だ。この2つの会計基準上の差異をどうとらえて、どう埋めるべきか。ERPにおけるアドプション対応とは、ここに肝があるのではないかと堀内氏は言う。
「グループ経営管理において、コンバージェンスされた日本基準とIFRSとの間で会計上の数字として表れる差異は、単体側で把握できなければいけないと考えている。これができないと、最終的にこの差異を単体決算側で埋めることも、連結決算時に調整することもできなくなってしまう。アドプションそのものの適用方針はまだ揺れているが、最低限抑えておかなければいけないこの部分については、製品側で早めにきちんと対応していく」(堀内氏)
こうした差異の中でも、特に固定資産に関するところは制度上も未決の部分が多く、今後の動向をにらみながら適宜対応していく必要があるという。しかし、IFRS対応で開発パワーを要する部分は既に対応を終わっており、顧客が実際にIFRSを適用するに当たってどのような適用指針を選択したとしても、柔軟に対応できるだけの備えは既にあると堀内氏は力説する。
また同社では、製品の対応や社内スキルの蓄積と併せて、社外に向けた啓蒙活動にも積極的に取り組んでいるという。叶谷氏は、IFRSに対する一般企業の認識について次のように述べる。
「IFRS対応は、経営管理の観点から見れば計数的なインパクトだけにとどまるように見えるが、経理実務の現場にとっては極めて大きな影響を及ぼすことが予想される。しかし、現場レベルでどれだけの影響があるかをきちんとイメージできている企業は、まだまだ少ないと感じている。2015年3月期からの強制適用を前提にロードマップを提示して初めて、『え、もうこれだけしか時間がないの?』と驚かれるお客さまも多い」
こうした企業に対して、IFRSに関する情報をきちんと整理して発信していくことも自分たちの役目だと叶谷氏は言う。そうした活動の一環として、専門家を招いたセミナーの開催なども行っている。こうした活動が実ってか、IFRS対応をきっかけにOBIC7を新規導入する企業も少なくないという。
「顧客からは『先行してIFRS対応を行っている』『将来に向けての備えもしっかりしている』という評価をいただき、IFRS対応をきっかけに新規導入されるケースが増えてきている。われわれとしては、IFRSに対しては『できるところから、早くやってしまいましょう』というメッセージを打ち出している。製品機能に関してはこれまで説明した通り、基本的な拡張は既に終えている。くどいようだが、製品機能だけがあっても、ノウハウがなくてはダメ。従ってわれわれ自身も、IFRSや連結会計実務については今後もノウハウとスキルの蓄積に努めていく」(堀内氏)
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