サーバ仮想化におけるライセンスの選択【第2回】
サーバ仮想化の導入形態で見る、仮想化ソフトウェアの機能とライセンス
各仮想化ソフトウェアの機能を明確化し、ライセンスとコストを考える上でのポイントを整理する。
仮想化ソフトウェアは、ハイパーバイザーや周辺製品群により利用できる機能が異なる。また、それに合わせて必要なライセンスの価格も変化する。前回の「サーバ仮想化導入の前に検討すべきこと ~複雑化するライセンスを理解する」を踏まえ、本稿では仮想化ソフトウェアごとに実装されている機能を明確化し、ライセンスコストを考える上でのポイントを整理する。
導入形態のパターン
まず、導入形態のパターンを明確化する。導入形態のパターンは、以下のように整理することができる。後に挙げるものほどサービスレベルは高くなる。
1.技術検証用途
2.サービス提供用途(開発・テスト環境)
3.サービス提供用途(本番環境)
4.サービス提供用途(自動運用環境)
1.技術検証用途
技術検証用途では、仮想化ソフトウェアの基本的な機能や動作を確認することが目的となる。利用者数は数人程度と限定的で、システムの停止や起動は自由に行える。この用途の場合は通常、仮想化ソフトウェア製品群が必要とする機能はハイパーバイザーと運用管理ツール(ハイパーバイザー)の最小セットに収まる。
2.サービス提供用途(開発・テスト環境)
サービス提供用途(開発・テスト環境)では、仮想環境を開発・テスト環境として用い、数人~数十人で利用することが目的となる。システムの起動や停止は比較的自由に行えるが、利用者の便宜を考慮し、事前連絡をしてからの実施が一般的である。バックアップについては、重要なユーザーデータの保存先にはしないと想定し、システムバックアップのみを実施する。
この用途の場合、仮想化ソフトウェア製品群が必要とする機能は、技術検証用途で挙げた製品群に、システムメンテナンス運用を楽にするためのライブマイグレーションとイメージファイルのバックアップを追加したものになる。
3.サービス提供用途(本番環境)
ここでいう本番環境とは、「環境が壊れたときに復元できる」「障害が放置されない」など、本番環境として備えるべき最低限のレベルと定義している。
サービス提供用途(本番環境)では、仮想環境を社内システムなどの業務基盤として用い、数十人~数百人で利用することが目的となる。高いシステム稼働率が求められるが、まったく無停止でなければならないのか、計画停止がある程度許容できるのかによってさらにパターンが細分化される。バックアップは、システムだけでなくユーザーデータについても必要となる。
また、監視でエラーや障害をシステムが能動的に検知することにより、システムの状態を安定的に保ち、不慮のシステム停止を防止する。
この用途の場合、仮想化ソフトウェア製品群が必要とする機能は、サービス提供用途(開発、テスト環境)で挙げた製品群に、運用監視と、高可用性(HA)を追加したものとなる。
4.サービス提供用途(自動運用環境)
ここでいう自動運用環境とは、高度に自動化された運用機能を付加し、システムにおける保守運用の負荷軽減を目指した環境と定義している。クラウド化を実現する要素技術の1つである「自動化」がキーワードとなる。
サービス提供用途(自動運用環境)では、基本的にはサービス提供用途(本番環境)と同様の用途だが、それに加えて物理サーバの負荷を見て仮想マシンの配置を変更したり、負荷分散の結果停止できるようになった物理サーバを停止して省電力を図るなど、運用の自動化がなされている。
この用途の場合、仮想化ソフトウェア製品群が必要とする機能は、サービス提供用途(本番環境)で挙げた製品群に、そのほか自動運用の機能を追加したものとなる。
導入形態のパターンを、図と表で示すと以下の通りだ。表1の「対応する運用機能」の番号は、図1内に付与された番号と対応している。
表1 導入形態のパターンと運用分野
| 用途 | 利用者 | システム稼働 | データ保全 | 障害検出 | 自動化 | 対応する運用機能 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 技術検証用途 | 限定的 | 保証なし | 保証なし | 不要 | 必須ではない | (1)(2) |
| サービス提供用途(開発、テスト環境) | 多人数 | 不定期停止(事前通知あり) | システムのみ | 不要 | 必須ではない | (1)(2)(3)(4) |
| サービス提供用途(本番環境) | 多人数 | 可能な限り無停止 | システム、ユーザーデータ双方 | 必要 | 必須ではない | (1)(2)(3)(4)(5)(6) |
| サービス提供用途(自動運用環境) | 多人数 | 可能な限り無停止 | システム、ユーザーデータ双方 | 必要 | 必須 | (1)(2)(3)(4)(5)(6)(7) |
対応する仮想化ソフトウェア製品群
次に、上記の運用機能を満たす仮想化ソフトウェア製品を選定し、ライセンスコストのポイントを整理しよう(表2)。ただしここでは、ほぼ同等の機能を集約していると考えられる製品、または機能名を挙げることにとどめ、詳細な機能差にはあまり踏み込まないものとする。
表2 仮想化ソフトウェア製品簡易対応表
| 運用機能 | VMware | Microsoft | Citrix | Red Hat | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 名称 | VMware vSphere4 | Hyper-V 2.0 | XenServer 5.6 | RHEV 2.2 | |
| ハイパーバイザー | VMware ESX/ESXi | Hyper-V | Xen | ・KVM ・RHEV-H |
|
| 運用管理ツール(ハイパーバイザー) | vCenter Server | ・Hyper-Vマネージャ ・System Center Virtual Machine Manager(SCVMM) |
XenCenter | RHEV-M-S | Hyper-Vマネージャは、複数ノードの管理に対応していない |
| ライブマイグレーション | VMware vMotion | Live Migration | XenMotion | Live Migration | |
| バックアップ | VMware DataRecovery | ・Hyper-Vマネージャ ・System Center Data Protection Manager(SCDPM) |
XenCenter(スナップショット+インポート/エクスポート) | OVFインポート/エクスポート | 仮想マシンのシステムバックアップ製品または機能に絞って掲載 |
| 運用監視 | vCenter Server | System Center Operations Manager(SCOM) | XenServer | RHEV-M-S | |
| 高可用性(HA) | ・VMware HA ・VMware FT |
Live Migration | ・XenCenter HA ・フォールトトレランス |
高可用性 | |
| そのほか自動運用の機能 | ・VMware DRS ・VMware DPM ・VMware SRM ・vCenter Serverなど |
SCVMM+SCOM | ・Workload Balancing ・StorageLink ・ロールベース管理など |
・システムスケジューラ ・パワーセーバなど |
ハイパーバイザー
VMware vSphere(以下、vSphere)、Hyper-V、XenServerにはそれぞれ無償版であるVMware ESXi、Hyper-V Server 2008 R2、XenServerと、有償版であるVMware ESX(以下、ESX)、Hyper-V 2.0、Essentials for XenServerが存在する。Hyper-V Server 2008 R2、XenServerでは無償版でもライブマイグレーションが使えるが、ESXiでは評価期間を過ぎる、もしくは無償ライセンスを登録すると使用できなくなる点に違いがある。
またvSphere 4.1(ESX 4.0)からは、VMware vMotion(以下、vMotion)がEssential PlusとStandardエディションから使用できるようになり、利用者はより運用利便性を享受できるようになった。
どのハイパーバイザーも無償版は機能が限定されているので、さらに運用機能を充実させたい場合には有償版を購入することになる。
運用管理ツール(ハイパーバイザー)
WindowsのアプリケーションであるXenCenterは、ローカルPCに導入してXenServerに直接アクセスする(図2)。すなわち他社製品と異なり専用サーバを導入せずに済み、ツール自体も無償なため導入コストが安く済む。
なお、単一ホストの管理にとどまりHyper-Vマネージャで十分ならば、Hyper-Vでも同様の恩恵を享受できるだろう。
ライブマイグレーション
vSphereの場合、vMotionでライブマイグレーションを実施するにはvCenter Serverが必要だが、Hyper-VではHyper-Vマネージャ単体でもコントロール自体は可能である。ただし、Microsoft Failover Cluster(MSFC)が必須なため、Windows Server 2008 R2を購入する場合はEnterprise以上のエディションを必要とする。
バックアップ
バックアップの区分には、ストレージレベル、システムレベル、データレベルが存在するが、ここではシステムレベルを対象とする。サードパーティー製のバックアップツールとの連動については考慮外とする。
vSphereでは、VMware DataRecoveryという製品がEssentials PlusまたはAdvancedエディション以上から利用できる。
Hyper-Vでは、Windows Serverバックアップ(OS標準)、Hyper-Vマネージャ、SCDPMなど幾つかのバックアップ手法を選択できる。
XenServerでは、スナップショットとインポート/エクスポートの機能を組み合わせてXenCenter上からバックアップを実施する。
RHEVでは、RHEV 2.2から仮想マシンをOVF(Open Virtualization Format)でインポート/エクスポートする機能が実装された。
運用監視
vSphere、Hyper-V、RHEVの監視は運用管理ツールからのPush型となるが、XenServerはハイパーバイザーからのPush型となる。またHyper-Vにおいて性能監視を含めて運用監視を行う場合には、SCOMを採用する必要がある。
高可用性(HA)
HAについては、どの仮想化ソフトウェアでもライブマイグレーションが使用できる環境が前提となっている。現時点で、フォールトトレランス(FT)を実装しているのはvSphereのみであり、Advancedエディションから利用可能だ。なお、サードパーティー製のツールを用いれば、XenServerでもFTが可能になる。
そのほか自動運用の機能
負荷分散、電源管理、災害対策、アクセスコントロールの機能を想定すると以下のようになる。
vSphereには、自動負荷分散機能としてDistributed Resource Scheduler(DRS)、電源管理機能としてDistributed Power Management(DPM)、災害対策機能としてSite Recovery Manager(SRM)がある。DRSとDPMは、Enterpriseエディション以上で利用でき、SRMはアドオンプロダクトとして購入する。アクセスコントロールはvCenter Serverに標準で実装されており、Active Directoryとの連携も可能である。
Hyper-Vでは、SCVMMとSCOMを組み合わせることで自動負荷分散機能を持たせることができるが、電源管理や災害対策機能を付与するにはサードパーティー製のツールの検討が必要になる。
XenServerでは、自動負荷分散、電源管理機能としてWorkload Balancing、災害対策機能としてStorageLinkがあり、Enterpriseエディション以上で利用できる。ロールベース管理も同様に、Enterpriseエディション以上で利用できる。
RHEVでは、自動負荷分散機能としてシステムスケジューラ、電源管理機能としてパワーセーバがある。
次回は、ハードウェアスペックを固定したときに、仮想化ソフトウェアの部分のライセンスコストにどのような違いが出るかを検討する。
西川 麗(にしかわ れい)
電通国際情報サービス ビジネスイノベーション本部 クラウド事業推進センター クラウドアーキテクトグループ
Java開発環境/ソフトウェアテストの技術検証、コンサルティングを経て、現在は基盤環境である仮想化技術の技術検証や、VMware製品を中心としたクラウドサービスの構築・運用設計に従事している。
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