ヴイエムウェアの製品は多岐にわたるため、名称と内容が正しく理解されていないことが多い。これは「VMware vSphere 4」(以下、vSphere 4)のような複数の製品から構成されるソリューションパッケージの名称と、「VMware ESX」「VMware ESXi」「VMware Server」などソフトウェアの製品名、そしてVMotionのようなオプション機能の名称などが入り交じっているからだ。まず、これらの名称について整理しておこう。
VMwareの仮想マシンソフトウェア製品は、大きく分けてハイパーバイザー型のVMware ESX/VMware ESXiと、ホストOS型のVMware Server、VMware Workstation、VMware Playerに分けられる。ここではハイパーバイザー型製品について解説する。
VMware ESXとVMware ESXiは、いずれも同じvmkernelというハイパーバイザーをベースにしているので基本的な機能は同じである。両者の違いは、サービスコンソールと呼ばれる管理用のOS環境を利用できるかどうかだ。
ローカルHDDやSANストレージなどへのインストールが必要。サービスコンソールへのログインや、バックアップツールなどのソフトウェアの追加インストールなどができる。
ローカルHDDだけでなく、USBメモリやSDカードなどにもインストールできるので、ディスクレス環境を構築できる。サービスコンソールが存在しないので、ソフトウェアの追加などはできない。スタンドアロンで利用できる無償版が用意されている。
両者の機能に本質的な違いはないため、以後は両者を合わせてVMware ESXと記述する。
VMware ESXは、フェイルオーバーやライブマイグレーション、動的リソース配分などさまざまな追加機能がオプションで提供されている。運用管理上重要なオプション機能を紹介する。
VMware ESXホストに障害が発生すると、そのホスト上で動作していた仮想マシンを別の物理ホスト上で再起動する。
仮想マシンを停止せずに、異なる物理ホスト上へ移動させる。
ホストの負荷状況に応じて、新規で起動する仮想マシンを最適なホスト上に配置する。また、必要に応じて稼働中の仮想マシンをライブマイグレーションで別ホストに移動させる。
これらの機能はあらかじめVMware ESXに組み込まれているが、ライセンスによって利用できる機能は異なる。具体的には、VMware HAはStandardエディションで使用できるが、VMotionにはAdvancedエディション、VMware DRSにはEnterpriseエディション以上のライセンスが必要となる。
VMware ESXの管理クライアントは、「vSphere Client」と呼ばれるWindowsアプリケーションだ。VMware ESXホストがスタンドアロンで動作していても、複数台動作していても、管理作業はすべてvSphere Clientで行う。

VMware ESXホストがスタンドアロンで動作している場合、vSphere Clientで直接ホストへ接続する。この場合、前述した各種オプション機能は基本的に利用できない。VMware ESXホストが複数動作しており、これらのホストを統合管理したい場合には、「VMware vCenter Server」(以下、vCenter Server)を別途用意し、vSphere ClientはvCenter Serverに接続して運用管理を行う。各種オプション機能は、vCenter Serverがないと設定が行えないようになっている。
vSphere 4は、VMware ESXと各種オプション機能、vSphere ClientおよびvCenter Serverなど、さまざまな製品をまとめたソリューションパッケージの名称だ。StandardエディションからAdvancedエディション、Enterprise Plusエディションまでさまざまなグレードが用意されており、それぞれ利用できるオプション機能などに違いがある。ちなみに、vCenter Serverはライセンスが別売りになっている。
特殊なパッケージとして「VMware vSphere Essentials」「VMware vSphere Essentials Plus」(以下、Essentials Plus)がある。これは3ノード(ホスト3台)まで管理できるvCenter Serverと、3台分のVMware ESXのライセンスが含まれているパッケージ製品だ。Essentials PlusはVMware HAによるフェイルオーバーが行える。ただし、基本的に通常製品へのアップグレードはできないので、4ホスト以上になる可能性がある場合には注意が必要だ。
vSphere 4の基本的な仮想化環境は、共有ストレージを用意し、複数のホストで仮想マシンを動作させ、vCenter Serverで統合管理を行うという構成を取る。複数のホストで構成することで仮想マシンのメリットである可用性を高め、最低でもVMware HAによるフェイルオーバークラスタを構成するよう設計、構築する。
ライブマイグレーションは仮想化環境における特徴的な機能だが、小規模なシステムではあまり必要性を感じないかもしれない。ホストの台数が多く、仮想マシンで動作しているシステムを停止できず、変動が大きい処理負荷の最適化が必要な場合であれば、VMotionとVMware DRSを組み合わせて、動的にリソース配分をする必要が出てくる。ただし、VMotionはAdvancedエディション、VMware DRSはEnterpriseエディションのライセンスがないと利用できない点に留意しておく必要があるだろう。
vCenter Serverは、各種オプション機能を利用するために必要なほか、仮想ホストおよび仮想マシンの運用管理をサポートする機能を提供する。例えばリソースの利用状況などを記録し、時系列で分析できる。仮想マシンの性能が十分でないときには、稼働時の負荷状態を分析して、ボトルネックとなる原因を取り除く必要があるだろう。
また、一定時間、一定負荷が掛かるような場合に、それをトリガーとして警告を発するなどの設定もできる。警告は、SNMPトラップの送信やSMTPによるメール送信など、一般的な運用管理ツールとの連動が行えるようになっている。
この監視機能のために、vCenter Serverにはバックエンドデータベースが必要となる。小規模であればバンドルされているSQL Server Expressが利用できるが、多くの仮想ホストを監視する場合には、SQL ServerかOracle Databaseが必要となる。
vSphere 4で用意されている運用管理で便利な機能を幾つか紹介しておこう。
それほど複雑なバックアップ処理が必要ないのであれば、vCenter Serverの管理と統合できるので使いやすい。
VMware DRSと組み合わせて利用する。
設定や管理を一元管理できるので、多数のホストで複雑なネットワーク構成を取る場合に有用。
vSphere 4は豊富な機能が魅力だが、それを活用するには管理サーバであるvCenter Serverが必須となる。vCenter Serverが使用できなくなると、各仮想ホストにvSphere Clientで直接接続して管理することはできるが、統合管理は一切できなくなってしまう。よって、サーバのパーツなどの冗長性を高めることや、バックアップ/リカバリについてもきちんと考えておく必要があるだろう。
業務系のシステムで導入を検討する際、vSphere 4は必要な機能が一通りそろっており実績もあるので、現時点では最初に導入候補として挙がるだろう。次回以降は、このような状況を踏まえつつ、そのほかの仮想化環境について紹介する。