BCP関連インタビュー:ガートナー ジャパン
高まるデータセンターの停電リスク、企業はどう対応すべきか
東日本を襲った2011年3月の大震災。企業はBCPの再構築を迫られている。ガートナー ジャパンのアナリストに今後のBCPへの考え方や計画停電への対応について聞いた。
地震や津波による直接の被害に加えて計画停電など今回の東北地方太平洋沖地震では多くの企業がビジネス活動を制限せざるを得ない状況になった。企業はBCP(事業継続計画)を整備し、震災への対応を進めたが、想定外のトラブルもあったようだ。ガートナー ジャパンのセキュリティ担当リサーチ ディレクターの石橋正彦氏は「企業はリスクを考え続ける必要がある」と話す。
想定外だった計画停電
――3月11日の地震発生で企業はどのような影響を受けたのでしょう。多くの企業はBCPを策定していたと思うのですが、機能したのでしょうか。
石橋氏 従来のBCPは首都圏直下型地震を想定したシナリオに基づいていました。首都圏に大きな被害が出て、自社も当然、被害を受けているという前提でした。しかし、今回は自分たちは被害を受けていないけれど、計画停電で電車が動かないなどの想定外がありました。
もちろん、停電が分かっていれば対応はできたと思いますが、計画停電自体が東京電力設立以来で初めてといわれるほど、想定外の出来事です。多くの企業では計画停電を想定シナリオに加えてBCPを再構築している段階です。
見直されてこなかった日本企業のBCP
――ガートナーが公表しているリポート(リポート一覧ページ)を読むと、BCPの重要性は理解されているものの、その対応にリソースが割かれていない企業が多いと指摘されています。それは日本企業も同じでしょうか。
石橋氏 日本企業は2001年の米国同時多発テロを契機に、これまでの防災対策ではなく、ITの災害対策を始めました。ディザスタリカバリ(DR)から始まり、10年たった訳です。しかし、多く日本企業はその後にセキュリティ対策にリソースを投入するようになってしまいました。
また、2004年の新潟県中越地震、2005年の福岡県西方沖地震、2007年の新潟県中越沖地震、2008年の岩手・宮城内陸地震などこの10年に日本各地で地震がありましたが、首都圏の企業、特にそのITシステムについてはあまり地震の影響を受けませんでした。このため、BCPが見直されることが少なかったと思います。
――今回の地震では首都圏で長い時間にわたって電車が止まったり、停電が発生するなど社員が出社できないケースも相次ぎました。企業は今後の計画停電に向けて何を考えていけばいいでしょうか。
石橋氏 日本企業も海外の企業のようにPCを自宅などに持ち帰って仕事ができる環境を構築していかないといけないでしょう。これまで日本企業はセキュリティへの懸念などからPCを自宅に持ち帰り在宅勤務をするという習慣があまり見られませんでした。しかし、今後の災害や計画停電を考えると早急に在宅勤務を可能にする環境を構築する必要があります。そうしないと次の災害や計画停電に間に合いません。
また、本社機能の移転もBCPの想定シナリオに加えるべきです。このようなシナリオはかつてはオーバーな対応、考え過ぎといわれていましたが今回の計画停電で現実的に考えられるようになってきました。
データセンターの場所がリスク要因
――今後の計画停電で心配されるのが、企業が抱えるITインフラへの影響です。企業はどのような対策が取れるでしょうか。
石橋氏 停電への対策はITシステムを設置しているデータセンターが、自前か、業者が所有しているかで大きく変わります。データセンターが自前の場合はさまざまな対応が考えられますが、業者の設備を借りている場合、まずはその電力供給について調べる必要があるでしょう。そのデータセンターが東京電力の管轄内の場合、計画停電の対象になっているかが重要です。実はこれまでの計画停電で業務に影響が出たデータセンターはほとんどありません。計画停電エリア内のデータセンターでは備蓄燃料を使った自家発電で対応したようです。しかし、災害時はその燃料が補充できないかもしれません。そのような問題があります。
今後、企業のクラウドコンピューティングについての考えは決定的に変わるでしょう。震災前は企業データやITシステムを海外のクラウドサービスに出すのは不安という企業が多くありました。しかし、このような状況ではITシステムが海外にあった方がいいのではないかと考える企業も増えるでしょう。日本のITベンダーもクラウドのサービスを推進していますが、そのデータセンターが東京電力の管轄内にあるケースも多い。不安に思い、見直しを図る企業も出てくるでしょう。
これまでのクラウドをめぐる議論では、データセンターの場所についてはあまり考慮されてきませんでした。米国同時多発テロ以降、日本企業でもバックアップサイトを設置するケースが増えました。例えば東京に本社を置く企業が大阪にバックアップサイトを設置するようなケースです。しかし、大阪では緊急時に即座に対応ができないとして、首都圏から40~70キロ程度離れたデータセンターにバックアップサイトを置くケースがその後に増えました。問題は本社もこのバックアップサイトもどちらも東京電力の管轄内で、停電のリスクがあるということです。今後はバックアップサイトまでの距離ではなく、どこから電力供給を受けているかを考えないと計画停電の影響を受けてしまうでしょう。
――ガートナーは事業継続管理者の必要性を訴えています。企業は事業継続リスクの担当者を置くべきでしょうか。
石橋氏 日本企業には防災担当者はいますが事業継続を担当する役職者はいません。今回の震災で企業のリスクについての意識はかなり高まっています。これをトーンダウンさせるのはもったいない。企業は災害対策やセキュリティなどのリスクを考え続けないといけないでしょう。
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