CIOの知恵袋:SAP ERP開発編
SAP ERP開発で重要になるQCDのバランス
ERPの開発ではQCD(品質、コスト、納期)を予定通りに達成して初めて成功したといえる。難しいのはQCDがそれぞれトレードオフの関係にあり、相互に影響することだ。QCD達成のポイントを解説する。
SAP ERPに限らず、システム開発の作業で重視されるべきは、品質(Quality)、コスト(Cost)、納期(Delivery)の3点(以下、QCD)を予定通り達成することである。ただ、QCDは品質を重視すればコストと納期に影響があるようなトレードオフの関係にある。開発標準、開発プロセスの整備などを含めた開発計画の策定において、特にQCDのトレードオフに影響を与える事項に関しては、各プロジェクトやソリューションの状況に合わせて最適な計画を立てることが必要となる。
本稿では開発計画立案に当たり、重要となる幾つかのポイントを説明したい。なお、昨今のSAP ERP開発作業では当たり前となったオフショア開発を前提に記載する。
標準化による品質担保と要件実現のための自由度
SAP ERPの開発では、開発標準や開発共通部品などについて要件に合わせてどこまで標準化するのか、そのバランスを考慮する必要がある。標準化し過ぎると、要件を実現するために想定外のコーディングやテストが必要になる場合があり、コストと納期に問題が発生する。多くの場合、標準化チームと個別アプリケーション開発チームは別チームになるため、両者の担当範囲や役割分担を計画段階で明確にしておくことがポイントとなる。
例
SAP ERPの今後の拡張も考慮し、共通部品を多機能にしたが、結果的に共通部品のパラメータが複雑化し、開発に想定外の工数が掛かった。また、幾つかの機能は結局、使われなかった。
オフショア拠点の活用と難易度の高い開発への対応
一般的にオフショア開発は、コスト削減で大きなメリットを得ることができる。だが、複雑な要件や新規技術を活用した開発など、難易度の高い案件では、オフショア開発での対応が難しい場合がある。その場合、オフショア開発のデメリットを相対的に補うことができるニアショアやオンサイト開発を取り入れれば、品質低下や納期遅延を避けることができる。
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納期順守を優先した開発プロセスと品質向上、レビュー工数の確保
基本設計、詳細設計、開発、単体テストの各プロセスにおいて、作業をどのレベルまで実施するか(ドキュメント記載レベルや作業の実施レベルの範囲)ということも、QCDに大きな影響を与える。下記は各プロセスにおけるテスト範囲を誤った例だ。
例
納期を優先して単体テストでは個別プログラムごとのホワイトボックステストしか実施しなかった。その後に標準機能やアドオン機能間結合をテストしたところ、想定以上の障害が発生し、対応工数が膨大に掛かった。
上記のような問題を避けるには、計画立案段階だけでなく、開発実施段階においても、日々の状況を定量的にトレースすることが重要だ。これによってQCDへのそれぞれの影響を考慮、判断し、リスクの低減と課題対応の施策を実施していくことが可能になる。
栗花落 一史
アクセンチュア株式会社
テクノロジー コンサルティング本部 SAPビジネスインテグレーショングループ シニア・マネジャー
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