教えて経理部長【第11回】
情報システムのIFRS対応、「まずは楽な方法を考える」
そもそも情報システムのIFRS対応とはどのようなことを指すのか。その基本を説明する。高度な対応方法はたくさんあるが、企業としてまず考えたいのはいかに楽な方法で対応するかだ。
質問
連載の第9回「さらに不透明、情報システムのIFRS対応スケジュールをどう立案する?」で情報システムのIFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)対応の手順について説明がありましたが、そもそも、「情報システムのIFRS対応とは?」という基本がよく分かっていません。分かりやすく教えてもらえないでしょうか。
回答 情報システムのIFRS対応とは、IFRSで要求される財務諸表や注記を作成するために必要な情報を、情報システムから抽出できるようにすることである。具体的には、財政状態計算書や包括利益計算書などの財務諸表の各項目(勘定科目)や必要な注記の各項目の数値が、IFRSが要求する基準にのっとって算出できればよい。
そもそも、IFRSが要求するある項目の数値が、現在の自社の会計処理と同じ方法で導き出せるのであれば対応の必要はないことになる。
対応が必要となる項目は?
しかし、その項目に関して日本の会計基準とIFRSに差異がある場合は、何らかの対応が必要となる。従ってシステム対応を考えるより前に、日本基準とIFRSの間で差異がある項目について、自社の会計処理への影響を調査する必要がある。これが影響度調査(インパクト調査)と呼ばれている作業である。
その差異とは何かというと、多くは「認識」と「測定」に関することである。認識とは、売り上げなどを「いつ計上するか?」という問題であり、測定とはその金額を「いくらにするか?」という問題である。
例えば認識では、売り上げをいつ計上するかという収益認識に関するテーマ、測定では、財務諸表に表示する固定資産の金額をいくらにするかという減価償却や減損に関するテーマがIFRS対応に関連してよく話題になる。これら、認識や測定の基準に差異があると、IFRS適用によって財務諸表や注記に表示する金額が変わる可能性がある。
どう対応するか?
金額が変わるといっても、そもそも手作業でその数値を把握できるなら情報システムには影響しない。だがIFRSに準拠した数値を算出するために、どうしても処理方法を変更したり、インプットの段階から処理を変更する必要があるなら、システムの改修や再構築が必要となる。これが情報システムのIFRS対応である。
ただし、IFRSで必要な情報が既に現行の情報システムで把握できるのであれば、出力方法、すなわち、帳票や自動仕訳データの編集方法を変更することで対応できる。いずれにしても、経理部門がアウトプットイメージを固めることが最初に必要となる。それから、さかのぼって具体的な処理やインプットを情報システム部門で考えることになる。
まずは楽な方法を考えよう
IFRS対応のポイントは、認められる方法で、一番簡単な方法を考えることである。例えば収益認識において、従来の出荷基準から、着荷基準による売上計上に変更が必要になったと仮定する。その場合、「着荷基準による売上計上を実現するために、着荷情報を情報システムに入力しなければならない」といったような硬直的な考え方ではなく、自由な発想で方策を考えてほしい。
例えば、出荷基準で把握した売上計上額と、着荷基準による売上計上額の概算差額を手作業で把握する方法があるのであれば、決算の際に経理部門で差額を修正計上すれば足りる可能性もある。その方法が認められるか否かは、最終的には監査法人に確認する必要があるが、最初から厳密な処理を追求するよりも、まずは楽な方法から考えるべきであろう。
情報システム部門は経理部門のIFRS対応をサポート
IFRSの日本企業への強制適用については依然として不透明な状況である。ただ、いずれにしてもIFRS対応自体は経理部門が中心。経理部門と情報システム部門がお互いの知識や経験を持ち寄って、IFRS対応についてよく議論することで、思ってもみなかった合理的な解決策が見つかる可能性がある。情報システム部門は、情報システムやプロセス設計の専門家として経理部門のIFRS対応を積極的にサポートすべきである。
五島伸二(ごしましんじ)
アドバ・コンサルティング株式会社 代表取締役 公認会計士・ITストラテジスト
監査法人トーマツにて会計監査、IPO支援、マネジメントコンサルティングに従事。トーマツ退所後は多数のシステム開発プロジェクトやERP導入プロジェクトに参画し基幹システム構築を行う。その後、上場会社の経理部長を経て、2010年3月にアドバ・コンサルティング株式会社を設立。それまでの経験を生かし、会計とITの専門家としてシステム開発や業務改善コンサルティングに取り組んでいる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
教えて経理部長
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
2
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
3
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
4
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
5
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
6
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
7
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
8
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
9
本当に安いPCで十分か? “すぐ重くなる”を防ぐノートPC選びの絶対条件
-
10
Claudeの不可視透かしに批判殺到 著作権消失や誤判定に潜む企業リスク
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー