NAND代替メモリ技術を徹底比較【後編】
フラッシュメモリ微細化の限界に挑戦するメーカーの取り組み
NAND型フラッシュメモリの微細化の限界は、業界全体の関心事だ。代替技術が台頭する中、NAND型フラッシュメモリの延命に取り組むメーカーも存在する。
前編の「NAND型フラッシュメモリの次を見据えるメーカーの思惑」に続き、NAND型フラッシュメモリの後継技術として関心が高まる、相変化メモリ(PCM)や磁気メモリ(MRAM)、抵抗変化型メモリ(RRAM)の3つの技術の最新動向を紹介する。これらの新技術は、過去2年間でブレークスルーが起き、性能と耐久性の両面で今後の飛躍が期待されている。
米Intelの不揮発性メモリソリューショングループの製品マーケティングディレクター、トロイ・ウィンスロー氏によると、Intelではスタック型PCMの一種で相変化メモリ&スイッチ(PCMS)と呼ばれる技術が、企業向けシステムとしてMRAMよりも有望だと考えているようだ。PCMSはOvonic Threshold Switchで層化されたPCMエレメントで構成される。
IntelとNumonyxは2009年、64Mビットのテストチップで1個のダイ内に複数のPCMアレイを層化することに成功し、容量や性能、拡張性を高めると同時に消費電力を低減したメモリ素子の開発に道筋をつけたと発表した。
しかしウィンスロー氏は「NANDは企業向けソリューションとして長い歴史がある。2~3年後に新たな技術が登場しても、移行が進むのに数年かかるだろう」と付け加える。
韓国のHynix Semiconductorと東芝は2011年7月、STT-MRAMの開発で協力するという合意に関する共同発表を行った。両社によると、この技術は高速、大容量、低消費電力というメリットがあり、携帯電話に適しているという。東芝では詳しいコメントを控えているが、いずれSTT-MRAMが企業向けシステムにも進出する可能性があるという見方をする人もいる(関連記事:スマートデバイス市場で生じた欧米/中国企業の奇妙な変化)。
Hynixと東芝の発表の1カ月後、韓国のSamsung Electronicsは、STT-RAMの開発を行っている米Grandisの買収を発表した。SamsungではGrandisを自社の研究開発部門に統合する予定だが、STT-RAMは同社が取り組んでいる多数のNAND代替技術の1つにすぎない。
米Silverton Consultingの創業者であるレイ・ルチェッシー社長は「世界最大のNANDサプライヤーであるSamsungは、NANDの消滅を阻止するためにあらゆる手段を講じるだろう。NANDは莫大な資金と多数の企業に支えられている。当分、NANDが姿を消すことはないだろう」と話している。
Forward Insightsのウォン氏は、MRAMやスタック型PCMが長期的にNANDと価格面で競争できるとは考えていないようだ。同氏によると、メーカー各社は現在、PCMおよびMRAM について、DRAMとは異なり電源を切ってもデータを保持できる一種の非揮発性RAM としてDRAMを補完する、あるいはDRAMを部分的にリプレースする技術として位置付けている。これらの新技術は、データベースや会計アプリケーションなどのようにI/O要求が高いランダム書き込み主体型のワークロードに適しているかもしれないという。
ウォン氏によると、NANDをリプレースする可能性が最も高いのは、PCMやMRAMではなくRRAMであるようだ。大手メモリメーカー各社はこぞってRRAMの開発に取り組んでいる。RRAMは2つの電極間の抵抗を変化させることによって動作する。米Hewlett-Packard(HP)もRRAMの一種である「Memristor」という製品を開発した。
「RRAMは理論上、スケーラブルな技術だ」とウォン氏は説明する。「しかしNANDをリプレースする技術はスタッカブルであることが必要条件だ。これは基本的な課題だ」
NANDフラッシュの後継技術を左右するのはライフスパン
今後登場する有望な技術のどれがNANDフラッシュメモリの後継技術になるかを予想するのは極めて難しい。というのも、NANDフラッシュメモリは、同技術が最初に登場したときに人々が予想したよりもはるかに息の長い製品になっているからだ。
「研究所の優秀な頭脳の持ち主たちが、NANDプロセスを微細化する手法を次々と考え出している。彼らはこの作業を10年近くやっているのだ」と話すのは、米Object Analysisの創業者で主席アナリストのジム・ハンディー氏だ。「彼らがこの作業をもう10年間続けないと言えるだろうか」
ハンディー氏は「2003 Intel Developer Forum」でのプレゼンテーションの中で、Intel幹部がNANDは60nメートル以下に微細化できないと断言したのを覚えている。IntelとMicronの両パートナーはその後、同技術を50ナノメートルから34ナノメートルに、34ナノメートルから25ナノメートルに、そして現在では20ナノメートルにまで微細化した。最終的には10ナノメートルまで微細化され、8ナノメートルほどで限界になると同氏は予測している。
微細化の一方で大幅な低価格化も進んでいる。また、フラッシュメモリの1セル当たりのビット数を増やすこと──1セル当たり2ビットのMLCや、コンシューマー市場向けの新技術であるトリプルレベルセル(TLC)──も低価格化につながる。しかしこういったイノベーションには、耐久性やパフォーマンス、信頼性の低下というマイナス面も伴う。
今のところメーカー各社は、高度なコントローラー技術、エラー訂正コード(ECC)、ウェアレベリングなどの巧妙な手法によって企業向けデータストレージで2ビットのMLC NANDフラッシュメモリを実用化している。しかし既存のフローティングゲート技術ではこういった手法が限界になる可能性がある。
企業向けストレージ関連コンテンツ
フラッシュメモリを延命させる技術として期待されるのが3D型NANDだ。これはメモリセルを立体的に重ねるという手法だ。Micron Technologyのキルバック氏は、3D型NANDを複数階のオフィスビルに例えている。これに対して、平面的なNANDフラッシュは平板な広いキャンバスに広がった一階建ての建物のようなものだという。
「現行の平面型NANDセルがいつ微細化の限界に達するのかについては、まだ業界でも多くの議論がある」とキルバック氏は語る。「10ナノメートル後半が限界かもしれないという人もいれば、NANDは1桁台まで微細化が進み、その段階で3D NANDのような技術に移行するだろうという人もいる」
キルバック氏によると、業界がどういった課題に直面するのか、また3D技術によってNANDをどれくらい延命できるのかは、3D NANDを大量生産するまで分からないという。
「フラッシュメモリの微細化の限界は業界全体の関心事だ。各社が他の技術にも注力している理由もそこにある」とObject Analysisのハンディー氏は指摘する。しかし同氏は、PCM、MRAM、RRAMあるいは他の技術のどれが最終的に勝つのかを判断するのはまだ早いと考えている。「NANDフラッシュの微細化の限界に達するまであと10年あるとすれば、ダークホースがどこからか現れて、最有力候補になるのに、あと10年の猶予があるということだ」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[オーティファイ株式会社] AIでコーディングは加速したのにテストはそのまま? いまQAに必要な進化とは -
事例
[オーティファイ株式会社] QAで開発サイクルを遅延させない 8社の事例に学ぶ「テスト工程」の課題解決策 -
製品資料
[株式会社ガラパゴス] 「AIっぽい広告」の山に埋もれさせない AIマーケで着実に成果をだす秘訣とは? -
製品資料
[株式会社ガラパゴス] 「広告投資」調査レポート2026:勝ち組企業は何に投資しているのか? -
製品資料
[株式会社Helpfeel] 「問い合わせの渋滞」を解消、情シスの負担を軽減する“次世代型AI”活用方法
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Copilot」はなぜ放置される? “議事録要約止まり”を脱する処方箋
-
2
脱VMwareの前提が崩れる BroadcomのVDDK公開停止で確認すべき点
-
3
膨らむAIコストに歯止め GitHubのマルチモデルルーターは何が違うのか
-
4
マンガで解説:採択率は3割台? デジタル化・AI導入補助金申請の落とし穴
-
5
9割が頓挫する「AI内製化」 差がついたのはツールより設計力
-
6
覇権争いは終了? SnowflakeやSAPが「Apache Iceberg」の採用を急ぐ理由
-
7
「コンテナ型データセンターの検討状況と課題」に関するアンケート
-
8
多要素認証導入済みでもランサムウェア被害に 復旧費用は平均2億7000万円
-
9
「ネットワークインフラの現状と課題」に関するアンケート
-
10
社内開発×ノーコードで検証速度を4倍にしたエアトリのWebサイト改善術
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
マンガで解説:「ゼロトラスト」「SASE」の必要性とメリット
-
2
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
3
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
4
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
5
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
6
国税庁の次世代基幹システム「KSK2」稼働開始に向けて、対応すべき変更点とは?
-
7
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
8
ドラマで分かる、標的型攻撃メールの被害を受ける企業と回避できる企業の分岐点
-
9
少額減価償却資産が40万円未満へ拡大、令和8年度税制改正で押さえるべき変更点
-
10
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー