LCDは目に悪い?
電子書籍リーダーをめぐるLCD vs. E Ink
電子書籍リーダーに最適なディスプレー方式はLCDだろうか? それともE Inkだろうか? LCDとE Inkはそれぞれ何が優れ、何が欠点なのか。ユーザーはどちらを選ぶべきなのか?
「LCDにするべきか、E Inkにするべきか」―――こだわりのある電子書籍ユーザーにとっては、それが問題だ。LCDとE Inkは、電子書籍リーダーのディスプレーに使われる2大テクノロジーだ。E Inkの最大の支持者の1つであるAmazonは、LCDとE Inkの両方の電子書籍リーダーを製造している。ただし、同社のマーケティング資料ではその2種類の違いは明確にされていない。最近は、LCD搭載のリーダーは単に「カラー電子書籍リーダー(color eReader)」と表記される始末だ。これでは、LCDにするかE Inkにするかを選ぶ際に途方にくれてしまう。
読者がそんなジレンマを抱えているのならご安心を。本稿では、各自に合った電子書籍リーダーを手に入れるために本当に必要な情報を紹介する。
電子書籍リーダーに求める機能は?
まず、電子書籍リーダーをどのように使うつもりかをもっと具体的に考えよう。電子書籍リーダーで何をし、どの程度の時間それを使うつもりだろうか? Facebookのチェックからフルカラーでのネットサーフィン、鮮明なHD解像度での映画鑑賞まで、さまざまな用途に対応するLCD端末の多用途性に魅力を感じるのなら、答えは既に出ている。LCD端末は、バックライト型であるため暗い場所での読書が可能だ(NOOK Simple Touch eReader with GlowLightなどの新しい電子書籍リーダーは暗い中でも使える)。カラー画面で、ビデオやゲームも楽しめるなど、多用途性という点では従来の白黒のE Inkよりもはるかに勝っている。
台湾のE-Ink HoldingのTritonや米QualcommのMirasolに代表されるように、E Inkのカラー化にもある程度の進展は見られるが、その将来がバラ色だとは言い切れない。エヌピーディー・ジャパン ディスプレイサーチ事業部で中小型FPD部門担当のバイスプレジデント 早瀬 宏氏は、「E Inkの最大の制限の1つは、グラフィック情報を明瞭に表示する能力だ(つまり、画面の書き換えが遅くなる)。このため、カラーE Ink端末がLCDに対抗するのは難しい。多くのコンシューマーは、静止画だけではなく映画も楽しみたいと考えるからだ。また、iPadなどのタブレットは消費者の手の届く価格を設定して、既にこの市場を押さえているように見える。TritonやMirasolなどの新しいカラーE Ink端末は、低価格のLCD端末を相手に苦戦を強いられるだろう」と話す。
さて、ここまでなら、本稿もありきたりな結論になりそうだが、そのようなことはない。最新世代のiPadやKindle Fireに飛びつく前に、E Inkのメリットについて考えてみよう。既に実感されている読者もいるかもしれないが、E Inkは目が疲れにくいことが特徴の1つだ。ネットサーフィンではなく、読書に使う比率が高い場合、この点は特に大きなファクターになる。
本物の本のように
E Ink(electrophoretic ink:「電気泳動リンク」の略)は、Amazonや米Barnes & Nobleをはじめとする電子書籍リーダーのメーカーが、各製品の主要なコンポーネントの1つとして長年売り込んできた技術で、本独特の香りはないものの、実際の本と変わらないエクスペリエンスを提供する。E Inkに絶大な信頼を寄せ、他のテクノロジーは取り合わないE Inkファンによると、E Ink端末は数週間も充電なしで使え、見た目が良いことがポイントだ。見た目はともかく、多数の専門家が、目の健康のことを考えると、E Inkは非常に優れていると認めている。
米Bausch & Lomb North American Vision Careのプロフェッショナル・リレーションズ担当ディレクターで、眼科医の資格を持つマイケル・ピア博士によると、一般的なE Inkリーダーの味気ないモノクロのインタフェースは、欠点を補って余りあるほど目の健康上のメリットがあるという。「E Inkの総合的なメリットは、グレアが少ないことだ。グレアは、文字と背景のコントランスを認識する能力に影響するが、E Inkだと実質的にグレアがない。コントラストが明確になればなるほど、目には優しい。コントラストがはっきりしていれば、人間の目は、文字の境界に現れる不鮮明な領域を解釈しようとする必要がないため、素早く焦点を合わせられる」とピア博士は説明する。
また、従来のKindle eReaderなどのE Ink端末は、まぶしい太陽や電灯の下でも読みやすい。
そこで当然出てくる疑問は、「LCDで読書をすると目が悪くなるのか?」だが、幸いそのようなことはない。問題なのは、E InkにはなくてLCDに存在するリスクではなく、電子書籍リーダーの利用中に適切に目を休めることができるかどうかだ。それには、ピア博士が言う「20/20ルール」を使うとよい。電子書籍リーダーの使用中は、20分ごとに20秒間遠くを見る休憩をはさみ、目の筋肉を休ませるというものだ。最終的にLCD端末を買うにしてもE Ink端末を買うにしても、「電子書籍リーダーであれ本であれ、文字が黒で白が背景になる黒と白のパターンが、最もコントラスト比が高い」(ピア博士)ことを覚えておこう。
LCDとE Inkの今後は?
では、LCDとE Inkという対立するプラットフォームの未来はどうなるだろうか? どちらか一方が市場を独占するのか? それとも、iPadが教育現場での必須ツールになるべく本格的に侵攻を始めているとしても、共存の道はあるのか? 早瀬氏は「当社では、個人の読書利用であれ、教育目的であれ、E Inkの将来は明るいとみている」と、E Inkの熱烈なファンが飛び上がって喜びそうな見通しを示している。
この見通し通りに進むかどうかは、いずれ明らかになる。それまでは、読者が筋金入りの本の虫であれば、安心して紙の感覚で読めるE Ink端末で読書を楽しめばいい。LCDはデジモノ好きとメディア信奉者に任せておけばよいだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
4
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
5
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
6
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
7
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
8
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
9
「結局使わなくなる」Microsoft 365 Copilotを半年で定着 キリンの3施策
-
10
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー