地域連携事例:愛知県豊明市の地域包括ケアシステム
【事例】電子連絡帳で高齢者の医療・健康情報を共有する「いきいき笑顔ネットワーク」
超高齢社会の到来に向け、高齢者の福祉や介護、日常生活までを包括的に支援する取り組みが現在、全国各地で進められている。愛知県豊明市の「いきいき笑顔ネットワーク」もその1つである。
世界で最も早く超高齢社会を迎えるといわれる日本。社会構造の変化に伴う問題をどう解決するかについては、諸外国の関心も高い。現在、医療制度改革によって従来の在宅医療だけでなく、高齢者の介護や福祉、日常生活を支援する地域包括ケアシステムの確立が求められている。全国各地で新しい地域コミュニティーが形成されつつある。
本稿では、2012年6月27日に開催された地域医療福祉情報連携協議会の第4回シンポジウムの講演内容を基に、愛知県豊明市の地域包括ケアシステム「いきいき笑顔ネットワーク」の取り組みを紹介する。
豊かで活力のある健康長寿社会の創造を目指す
いきいき笑顔ネットワークは、愛知県医師会、東名古屋医師会豊明支部、豊明市、同市の中核病院である藤田保健衛生大学病院、名古屋大学医学部附属病院脳卒中医療管理センター、東海ネット医療フォーラムが連携する地域包括ケアシステム。「豊かで活力のある健康長寿社会の創造」を目的として、在宅医療患者や高齢者の生活を支援する医療、介護、福祉、行政機関などのスタッフ間の情報共有を実現し、生活の質を高める取り組みを進めている。
名古屋大学医学部附属病院 准教授 水野正明氏は「豊かで活力のある健康・長寿社会をどのように築き上げていくか」については、医療・福祉従事者、患者自身の2つの立場においてポイントがあると説明する。
- 患者・市民を中心にした医療・福祉の統合をどう行うか(医療・福祉従事者)
- 自律的に健康づくりに励み、病気にならないようにする(患者、高齢者)
医療・福祉の統合では「地域医療連携、地域包括ケアシステムの構築」、自律的な健康づくりでは「自己決定に関する意識改革」が重要になるという。
患者・市民を中心にした医療・福祉の統合
水野氏は「これまで医療提供体制は、急性期・回復期医療に注力されていたが、患者中心に考えると介護部分がより重要になる」と説明する。例えば、脳卒中患者の場合、急性期医療では入院期間を含めて2週間、その後の回復期医療が3~6カ月、維持期医療と維持期福祉・介護などは数年から数十年の期間続く。そのため、今後は福祉・介護の部分を強化する必要があるという。
一方、患者の自律的な健康づくりについては、日本と高齢者福祉国家であるデンマークを比較して「高齢者の自立ができていない」と指摘。例えば、デンマークでは「自己決定」「生活の継続性」「自己能力の活用」という高齢者福祉医療の三原則を徹底し、可能な限り在宅でのサービス提供を進められている。またデイケアサービスを利用する場合、日本では「何をしてもらえるのか」と考える高齢者が多いが、デンマークでは事前に何ができるかを調査して高齢者自らが決めたサービスを提供しているという。水野氏は「自己決定に関する意識改革が必要で、それがなければ健康づくりは実現できない」と指摘する。
また、高齢者や支援者が無理をしないように生活の持続性を保つためには、在宅での自己能力の活用を高齢者支援プログラムに取り入れる必要があるという。水野氏は「支援者が代わっても生活支援をすぐに引き継げる情報の共有基盤が求められ、ITを活用すべきである」と説明する。さらに医療・福祉情報は病院や診療所、介護事業所、薬局、保健所などに患者情報が散在しているため、高齢者・支援者双方が使える情報共有の仕組みが必要であると説明し、いきいき笑顔ネットワークではITを活用してその課題を解決しているという。
電子連絡帳による情報連携・共有
地域包括ケアでは1人の患者に対して急性期病院や在宅医療のかかりつけ医、介護サービス事業者、ケアマネージャなどの多くのスタッフが関わる。また1人暮らしの高齢者の場合は、地域包括支援センターなども関わってくる。いきいき笑顔ネットワークでは、スタッフ間の情報連携の基盤として「電子連絡帳」を開発し、利用している。
電子連絡帳は、携帯電話やスマートデバイスからも接続可能なクラウド型システム。包括ケアに取り組むスタッフはPCや携帯電話、スマートフォンなどの端末からWebシステムにアクセスする。
電子連絡帳では自身が担当する患者の一覧が表示され、さらに電子カルテと同様な詳細な患者情報を確認できる。また、DICOM画像やMicrosoft Wordファイルなどを添付でき、主治医意見書や在宅看護指示書などを作成することも可能だ。さらに病院の予約システムと連携した検査予約なども実施できる。
現在、いきいき笑顔ネットワークでは地域包括支援センターと東名古屋医師会豊明支部など25施設が連携して「在宅医療支援」「健康つくり支援」の2つの事業を展開している。
在宅医療支援では、維持期リハビリ患者向けサービスを提供している。これは、病院での診察情報に基づいた在宅患者のリハビリ能力を高める取り組みだ。医師が記入した「運動処方」を近隣のスポーツジムなどで実施するなど、患者自らが健康や運動、食事などのケアを実践する。また、健康つくり支援では「いきいきサービス」という事業を実施している。
いきいき笑顔ネットワークについて、水野氏は「医療・福祉提供側のシステムから、患者・市民側のシステムとして活用されつつある」としている。今後は「まだサービスを利用していない市内に600人以上いる独り暮らしの高齢者をどう参加させていくかが課題」と説明する。
広がる利用シーン
いきいき笑顔ネットワークと同様の取り組みが、豊橋市、田原市、豊川市、蒲群市などの「東三河ホイップネットワーク」でも行われている。また、電子連絡帳システムは在宅療養支援診療所の情報共有ツールとして活用され始めているという。
例えば、大口町や扶桑町などでは重症患者の生体情報を遠隔監視するシステムにも利用されている。患者宅や特別養護老人ホームなどにいる患者のバイタル情報を監視し、緊急時には医師へのアラームメール通知などでリアルタイムに状況を通知する。
また、健康な高齢者に対しては、自宅での歩数計や体重計などの測定結果やスポーツ施設での活動履歴を記録するコナミスポーツの「健身計画Web」とデータを同期させ、地域包括支援センターとの情報共有を可能にしている。その他、高齢者向けの見守り携帯電話や歩数計などと電子連絡帳の情報を連携する見守りシステムにも応用されている。
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