VMware ThinAppによるアプリケーション仮想化
【事例】レガシーの壁を乗り越えたサッポログループ、アプリ仮想化でWindows 7へ移行
企業のWindows移行でネックとなるのがレガシーシステムだ。サーバとクライアントが密に結びついてため、容易にクライアント環境を変えられない。その状況をサッポログループはアプリケーション仮想化で乗り切った。
サッポロビールを中心としたサッポログループは連結売上高が約4500億円(2011年度実績)に達する企業グループ。最近はベトナムなど海外で酒類事業に力を入れるほか、2013年1月にはグループ内でサッポロ飲料とポッカコーポレーションを統合し、食品・飲料事業の底上げも狙っている。
そのサッポログループは2013年から約4000台のPCを刷新し、「Windows XP」から「Windows 7」へ全面移行する。グループの共通機能会社であるサッポログループマネジメントでグループIT統括部 課長代理を務める江本正陽氏は、ヴイエムウェアの年次カンファレンス「vForum 2012」の講演において、「現在はWindows 7移行に向けた最終調整の段階だが、VMware ThinAppによるアプリケーション仮想化を採用したことで、短期間・低コストでの移行が可能になった」と話した。
アプリケーション仮想化技術に関する記事
4つのクライアント仮想化策を検討
サッポログループでは2012年、東日本大震災の影響で先送りしてきたPCリプレースが急がれていた。5年目に入ったハードは老朽化。OSのWindows XPも2014年4月にはサポートが切れる。そこで、新たに採用するWindows 7環境で40システムのクライアントアプリケーションを検証してみたが、結果は不具合のオンパレードだった。社内システムはレガシーなものが多かったのだ。
軽微な改修で済むものとサポート上改修が必要なものはサーバ側で対処することにしたが、10のシステムで問題が残った。全ユーザー(PC 4000台)に影響するため抜本的な対策が必要だった。
そこでクライアント側の“仮想化”に打開の道をさぐり、「仮想PC」「VDI(Virtual Desktop Infrastructure)シンクライアント」「DaaS(Desktop as a Service)」「アプリケーション仮想化」と4つのソリューションを検討した(関連記事:VDI vs. DaaS――管理者を悩ませる2つの仮想デスクトップ、選択の基準とは)。
その結果、仮想PC、VDIシンクライアント、DaaSの導入にはネックがあることが分かった。仮想PCはサーバ内で複数OSをまたいで操作しなければならず煩雑である(仮想PC方式の解説記事:デスクトップ仮想化がもたらす柔軟で堅固なIT基盤)。VDIシンクライアントは操作する側のPC調達が必要。DaaSは通信回線などインフラ整備が必要になる。最終的に選んだのは、VMware ThinAppによるアプリケーション仮想化である。
その理由を江本氏はこう話した。「クライアント環境全体を仮想化したいわけではなく、特定のアプリケーションだけ仮想化できればよかった。その点でアプリケーションを個別にカプセル化するThinAppは自由度が高い。リプレースにかけられる時間・コストに余裕がない中、ハードやインフラの投資がいらず、準備にかかる時間が短くて展開が容易なのが魅力だった」
実際、IT部門のスタッフ4人がThinAppのトレーニングを1日受けただけで、後は自力で開発・検証を進め、10システムで必要となる仮想アプリケーションを完成させている。その間にSIベンダーにサポートを要請したのは、「オンサイト2回、メールのやりとり数回のみ」(江本氏)という。具体的には、以下のようなシステムにアプリケーション仮想化を適用した。
アプリケーション仮想化の事例
IE6をカプセル化してIE8と混在
問題となった10のシステムのうち一番数が多かったのは、HTMLクライアントに「Internet Exprlorer 6」(IE6)を使っているWebシステムだった。新クライアント環境で標準のIE8を使うと画面くずれ、フォントくずれなどが起こり、どうしてもIE6を残す必要があったのだ。
ThinAppには、IE6を丸ごとカプセル化して「VirtIE6」と呼ぶ実行ファイルにする手順が用意されており、「トレーニングを受ければ20~30分でVirtIE6を作成できる」(江本氏)という。これでWindows 7の下でIE8とIE6(VirtIE6)を混在させて使えるわけだ。
ただIE8、IE6の混在で問題となったのは、ネイティブのIE8から仮想のIE6へのリダイレクト。例えば、IE8で表示するポータル上でIE6をクライアントとするシステムのリンクを開いたとき、自動的にIE6で表示するようにしたい。この課題はThinAppで提供されるIEプラグイン「ThinDirect」で解決した。ThinDirectで設定したURLでは、ネイティブIEからVirtIE6へ自動的にリダイレクトされる。江本氏は「セッション情報までは引き継がれず、シングルサインオン環境での運用は難しいが、幸いそうした要件はなかった」と話した。
※ 日本マイクロソフトによると、Windowsの単一インスタンス上で、Windows Internet Explorerの複数のバージョン、またはWindows Internet Explorerの複数部分を実行するソリューションは、ライセンスされず、サポートされない(2013年5月24日追記)
OSレジストリ修正でノーツも仮想化
IBM Lotus NotesもThinAppで“延命”するシステムの1つである。サッポログループでは、クライアント「Notes 4.6」、サーバ「Domino 5.0」というレガシーな構成だ。Notes 4.6の仮想化で問題となったのは、Notesシステムが採用する分散オブジェクト技術のネットワークDCOMにThinAppが非対応なこと(サンドボックスにキャプチャーした仮想DCOMには対応)。この問題にはWindows 7のレジストリを書き換えることで対応した。
一方、事業統合するポッカではNotes 8.5を使っており、ポッカのユーザーに限っては仮想Notes 4.6/8.5の混在環境になるが、特に問題は見られないという。また、ThinAppに備わる「Merged分散モード」を使い、各Notesユーザーが個人データを扱えるようにした。同モードを使用すると、仮想アプリケーションはサンドボックス外の物理ファイルシステム上で読み書きが行える。
ERPのOracle製品にもThinAppを適用
会計システムに使っている「Oracle EBS 11.5」でネックとなったのはJava実行環境「Oracle JInitiator」。ActiveXコンポーネント形式なので本来はWindows 7にネイティブに組み込めるが、Java描画がWindows 7のグラフィック効果「Windows Aero」に影響したり、Microsoft Office関連のDLLと競合したりする。そこでEBSのHTMLクライアントとして使っているIE6とJInitiatorを一緒にパッケージ化し、問題を回避した。
EBSとExcelの連携ツール「Oracle ADI 11.8」もWindows 7に対応していないため、クライアント側を仮想化した。その際、ADIを動作させるのに必要な旧バージョンの「Oracle Client」とExcelもADIの仮想パッケージに組み込み、Windows 7でネイティブ利用する最新のOracle Client 11g、Excel 2013との混在を可能にした。「最初は仮想パッケージにMS-IMEが含まれたり、ファイル保存時でエラーが発生したりしたが、ベンダーのサポートで問題を解決できた」(江本氏)
このようにサッポログループでは、多くのレガシーシステムにほとんど手を入れることなく、クライアント環境をWindows 7へ全面移行する準備を整えたわけだ。今後はThinAppで作成した仮想アプリケーションのサーバ集中実行やWindows 8対応も試みる構えだ。江本氏はアプリケーション仮想化のメリットをこう強調した。「ベンダー都合のバージョンアップに無理に合わせる必要がなく、オーナー部門のニーズに即したシステム主導でグループIT戦略を進められる」
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