OpenStack Orchestrationの進化はいかに
PayPalが語るOpenStack新版「Havana」の導入効果
OpenStackで大規模環境を運用する企業が集まったパネルディスカッションでは、新版「Havana」を多くの企業が称賛した。その一方で、2014年の「Icehouse」に向けて、欲しい機能がたくさんあるとも語った。
2013年10月下旬に開催されたオンラインパネルディスカッションで、大規模なIT環境を担当するIT専門家が、OpenStackの新バージョン「OpenStack 2013.2」(コードネーム「Havana」)を使った経験と、2014年に登場する次期バージョン(コードネーム「Icehouse」)に何が求められるかを論じた。
OpenStack Foundation(OpenStackプロジェクトを管理する非営利団体)がGoogleハングアウトを利用して開催したこのイベントで、パネリストはHavanaのオートスケーリング機能、ネットワーク機能の強化、ローリングアップグレードのサポートを称賛した。だが、その一方で、欲しい機能がまだたくさんあるとも語った。例えば、ライブマイグレーション、“Database as a Service(DaaS)”の本格的なサポート、アイデンティティー(ID)管理のフェデレーションなどだ。
オートスケーリングは、インキュベーション段階(※1)を経てHavanaでコアプロジェクト(※2)に昇格した2つのプロジェクトを組み合わせることで実現されている。その1つは「OpenStack Orchestration」(コードネーム「Heat」)、もう1つは「OpenStack Metering」(コードネーム「Ceilometer」)だ。OpenStack Meteringが環境を監視してリソースの制約を発見し、OpenStack Orchestrationが必要に応じて新しいリソースを供給するようになっている。
※1 コアプロジェクトとなる前の審査段階に相当する
※2 正式にOpenStackの一部を構成するプロジェクト
PayPalがHavanaで注目する機能とは
米電子決済サービス大手のPayPalは、これらのプロジェクトのインキュベーター版をデータセンターで運用しており、「この2つの新たな統合のおかげで、リソースを必要に応じて以前よりはるかにきめ細かく調整できるようになった」とPayPalのインフラエンジニアリングチームのアーキテクトで、パネリストを務めたアナンド・パラニサミー氏は語った。
「以前のOpenStack Orchestrationでは、CPU使用量に基づくリソース調整しかできなかった」とパラニサミー氏。今ではRAMやディスクI/Oなど、多くの基準指標がサポートされている。
「OpenStack Orchestrationは企業がプライベートクラウドを構築するツールとして代表的なものだ」と米DigitalFilm Treeの上級コンサルタントで、同じくパネリストを務めたギヨーム・オーブション氏は説明した。同社はメディア・エンターテインメント企業向けのITコンサルティング会社。同氏は米Warner Bros.などの大企業のプライベートクラウドプロジェクトに協力している。
「また、われわれはRackspaceのHeatチームと密接に協業し、プライベートクラウドとパブリッククラウドの間で、要求に応じてワークロードを相互に移動できるようにすることに取り組んでいる」(オーブション氏)
PayPalにとって、Havanaで特に目を引く機能には、コアプロジェクト「OpenStack Networking」(コードネーム「Neutron」)におけるファイアウォール(“Firewall as a Service”)とロードバランサ(“Load Balancer as a Service”)のサポートなどがある。OpenStack Networkingは、仮想ネットワーク管理機能を提供する。
「われわれは決済会社としてセキュリティを強く意識している。われわれが提供する商品とエクスペリエンスの中核要素だからだ」と、PayPalのインフラエンジニアリング担当シニアディレクター、サラン・マンデア氏は取材に対して語った。実際、「PayPalは独自の分散型ファイアウォールを開発済みであり、今後は他のOpenStack開発者とこれを共有していく」と同氏は述べた。
2013年4月に開催されたOpenStack Summitの参加者の間では、最大の要望は、自動化されたローリングアップグレードのサポートだった。これもHavanaで実現されている。ユーザーは従来、OpenStackのさまざまなコンポーネント間で循環依存が発生するリスクがある、危険な手動プロセスを実行しなければならなかった。
PayPalは、ローリングアップグレードの別のユースケースにも目を向けている。同社が継続して行っている統合や開発のプロセスの中でOpenStackを更新することがその1つだ。
ライブマイグレーション、ID管理のフェデレーションは今後の課題
ブロックストレージ機能を提供するコアプロジェクト「OpenStack Block Storage」(コードネーム「Cinder」)の新機能の1つとして、「Boot From Volume」がある。仮想マシンのライブマイグレーションをサポートするお膳立てをするこの機能は、もう1人のパネリストである米Intelのプリンシパルエンジニア、ダス・カムハウト氏の興味を引いた。
Intelが2011年にOpenStackを導入した当初は、このプラットフォームでクラウドを意識したスケールアウト型のアプリケーションしか用意しなかった。だが今では、「従来型のレガシーアプリもこのプラットフォームに移行しようとしている」とカムハウト氏は説明した。
Boot From Volume、ライブマイグレーション、ホストからの退避機能は、インフラの弾力性に依存するこうしたアプリケーションを保護するのに便利だろうと、カムハウト氏は指摘した。
「ライブマイグレーションをサポートするにはHeatも必要だが、これは利用可能になっている」(同氏)
3人のパネリストは、「OpenStack Identity」(コードネーム「Keystone」)によるID管理のフェデレーションが、2014年にリリースされるIcehouseで高い優先順位を持つだろうとの見方で一致した。OpenStack Identityは、統合認証機能を提供するコアプロジェクトだ。
「構築するセルごとに多くのKeystoneを持つのは避けたい」と、PayPalのパラニサミー氏は語った。
また、Havanaでインキュベーション段階を卒業したデータベースサービスプロジェクト(コードネーム「Trove」)はOpenStackとして統合されたプロジェクトとして初めてIcehouseでリリースされることになっており、その機能の1つとしてDaaSがある。PayPalのマンデア氏はこの機能について、コードをテストする目的で、独自データベースのプロビジョニングと運用を行いたいと考えているPayPalの開発者にとって重要だと述べた。
さらに、Icehouseには3つのインキュベーションプロジェクトが含まれる。内訳は、ベアメタルプロビジョニングを実現するもの(コードネーム「Ironic」)、Hadoop実装(コードネーム「Savannah」)、キューサービス(コードネーム「Marconi」)だ。
「トラフィックをクラウドの別のセルに移動する必要がある場合、トラフィック全体をどうやって実際に移動するか」とマンデア氏。「また、エラーメッセージを見たら、どうすればクラウドユーザーやクラウド上のアプリケーションに影響を与えずに、迅速にインシデントを解決できるか。OpenStackでは、こうした課題に対応できることが求められている」
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