パスワードは「インターネットの発展を阻害」
数年でパスワードのない世界に――PayPal幹部が認証変革
ID/パスワードは認証手段として機能していないどころか、インターネットの発展を阻害しているのではないか――。こうした考えの下、ID/パスワードの一掃に乗り出した非営利団体がある。
多くのユーザーは、クライアントPCやモバイル端末の画面に「ユーザー名」「パスワード」という言葉が現れると、思わず身構える。大文字/小文字を取り混ぜたアルファベットと数字を組み合わせたパスワードや、PIN(暗証番号)をさまざまなアカウントごとに思い出すのは、多くの人にとって容易ではない。一方、指紋のような固有の識別子を使って本人認証ができるとしたら、どうだろうか。
米PayPalの最高情報セキュリティ責任者(CISO)で、公認情報セキュリティマネジャー(CISM)とセキュリティプロフェッショナル認定(CISSP)の資格を持つマイケル・バレット氏は、2013年5月上旬に米国ラスベガスで開催された「Interop」の基調講演で、よく使われる弱いパスワードを多数紹介した。
パスワードがない世界は想像し難いかもしれないが、インターネットはこうした方向に向かっていると同氏は述べる。「パスワードは面倒であり、ユーザーや企業、組織、エコシステムにとってうまく機能していない」と、バレット氏は語る。
2000年代初頭には、ユーザーが覚えていなければならないユーザー名とパスワードの組み合わせは4つか5つくらいだっただろう。しかし今では、平均的なユーザーがビジネス用と個人用に25個のアカウントを持っていると、バレット氏は述べる。
銀行やオンラインショッピングなど一部のWebサイトは、セキュリティ強化を目的に、文字と数字を組み合わせた高度なパスワードを要求するようになり、ユーザーはパスワード認証プロセスに不満を抱くようになっている。「アカウントから締め出された経験は誰もが持っている。ユーザーは満足していない」(バレット氏)
非営利団体のFIDO(Fast Identity Online)Allianceは、ユーザーが多数のID/パスワードを作成し、思い出さなければならない問題と、認証方式間の相互運用性の欠如を解決することを目的に2012年に設立され、オンライン認証方法の変革を目指している。
FIDO Allianceは、「パスワードはもはやユーザーにとって十分に機能しておらず、インターネットの発展を阻害し始めている」と主張している。「ユーザーがユニークなパスワードを選んだと思っても、多くの場合、それは弱いパスワードであり、しかもユーザーはこうしたパスワードをできるだけ使い回そうとする」と指摘するバレット氏は、FIDO Allianceの代表も務める。
業界はもっと強力なユーザー認証方法を必要としている。ただし、その認証方法がユーザーの負担になってはならない。「安全でなければならないが、できるだけ簡単であることも必要だ」とバレット氏は説明する。
ユーザー名とパスワードを根絶せよ
モバイル端末の広範な普及に伴い、より良い認証ソリューションが求められている。専門家は、この課題の答えは1つではないという認識に達している。
FIDO Allianceは、バイオメトリクス認証技術などの採用により、ユーザー名とパスワードに頼らない代替認証アプローチに取り組んでいる。このアプローチでは、ユーザー端末にソフトウェアをダウンロードする必要がある。このソフトウェアにより、端末自体を識別し、FIDOのプロトコルをPayPalのようなサードパーティーのサーバに送信することで、ユーザー認証が行われる仕組みだとバレット氏は説明する。
「ユーザーがFIDOのアプローチに沿ったWebサイトを訪問すると、サイト側は、ユーザー端末が応答可能なFIDOクライアントを搭載しているかどうかを確認し、その端末が登録ユーザーによって使われているかどうかを認識できる」とバレット氏。こうしてユーザー認証において、厄介なパスワードが不要になる。
米Appleは2012年に、指紋認証技術を手掛ける米AuthenTecを買収しており、これを受けて、Appleが指紋リーダー搭載の新型スマートフォンを2013年に投入するとのうわさが流れた(参考:iPadに指紋センサー? Appleも参加するハードウェアセキュリティの新潮流)。
また、網膜スキャンも、登録ユーザーの識別に利用することが可能だ。「スマートフォンのフロントカメラは、目の高画質な写真を撮るのに十分なほど性能が上がっている。顔認証にも対応できる」(バレット氏)
どのような技術的選択肢を用意するとしても、「FIDO Allianceはユーザー名、パスワード、PINを、数年以内に地球上から完全に一掃するつもりだ」とバレット氏は語った。
「2014年には、FIDOの技術に対応した端末が市場に登場するだろう」(同氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣 -
製品資料
[サイボウズ株式会社] AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
4
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
5
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
-
6
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
7
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
8
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
9
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
10
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー