PayPalも苦戦? ビッグデータ活用で解くべき2大課題PayPalに聞く、ビッグデータ分析の今後【第1回】

ビッグデータ活用に当たり、企業のCIOは「かなり苦戦する」。大量の取引データを顧客分析に生かす、米PayPalの主席データサイエンティストはこう語る。その理由とは?

2012年10月26日 08時00分 公開
[Linda Tucci,TechTarget]

 米電子決済サービス大手のPayPalには、データが日々、滝のように流れ込む。こうしたデータには、PayPalのシステムを取引に利用しているマーチャント(売り手)とバイヤー(買い手)に関して、PayPalが知りたい情報が全て含まれている。問題は、欲しい情報を手に入れるために、ビッグデータ分析をどのように活用すればよいかということだ。

 PayPalの主席データサイエンティストであるモック・オー氏は、こうした大量の取引データの背後にある心理的な根拠を読み取る仕事をしている。同氏が扱うデータセットは、非常に大規模だ。同氏の目標は、マーチャントとバイヤーの結び付きを深くし、取引の可能性を最大限に高めることだ。ひいては、それがPayPalの収益アップにもつながる。

 オー氏は先頃、米TechTargetのインタビューに応じ、ビッグデータ分析の現状や課題について語った。同氏は目下、人々の潜在意識を探るべく、「誰が、何を、いつ、なぜ購入しているのか」を調査中だという。こうしたデータは非常に有益であり、遅かれ早かれ、全ての企業がそうしたデータを欲しがるようになると同氏は考えている。ただし、そのためには、かなりのコストが掛かりそうだ。

―― PayPalでどのような仕事をしているのですか?

オー氏 私の肩書は、主席サイエンティストです。ですから、広く科学に関する社内の諸問題、一切合切を引き受ける心づもりでいます。私は、心理学と社会学を本格的に活用したいと考えています。どちらの学問も、コンシューマーに関して私たちがしたいことと大いに関連しています。私たちが特に重視するのは、消費活動について、人々がどう考え、どう行動しているのかを理解することです。目下のところ、私はビッグデータとデータサイエンスに重点を置いています。

―― あなたは以前、「ビッグデータ分析に関して、私たちは今、どっちつかずの過渡期にいる」と発言し、その状態を「Analyst 1.5」と呼びました。「企業とその顧客が生み出す膨大な非構造化データから有益な情報を取り出すために、データサイエンティストから統計学者まで、さまざまな分野の専門家で構成されるプロフェッショナルな集団を必要とする段階」とのことでした。

オー氏 そうです。今は「Analyst 1.0」から「Analyst 2.0」への過渡期にあります。限定的ながらも、データの整理、分類、分析のプロセスを十分に理解するのが、Analyst 1.0の段階です。ツールが進化を遂げ、直観力のあるビジネスパーソン、つまりデータに最も近い立場にあり、どのような質問をすべきかについて優れた見識を持つ人物であれば、ビッグデータを活用して競争上の強みにできるというのが、Analyst 2.0の段階です。

―― では、Analyst 3.0は、どのような段階になるのでしょうか?

オー氏 いや、まだそこまで考えたことはありません。Analyst 2.0ですら、まだ「絵に描いた餅」のように思えるのですから。もちろん、いずれAnalyst 2.0が実現することは確かです。ただし、それがいつになるのかは、私には分かりません。5年後かもしれませんし、10年後かもしれません。リスクアナリストやビジネスアナリストが、データと能力をシームレスに活用できるようになれば、それがAnalyst 2.0に到達したということです。今まさに大規模企業では、こうした変化が起こりつつあることを示す兆候が多数あります。

 そしてAnalyst 3.0ですか? 私には全く見当もつきません。Analyst 2.0に到達した暁には、私も大いに興奮するでしょう。でも実際、この中途半端な過渡期を抜け出すには、少なくともあと5年から10年はかかると思っています。

―― では、過渡期にある今のこの状況で、ビッグデータツールを活用しようとした場合に、CIOが直面する現実について教えてください。現在、どのような制約があるのでしょうか? そうした制約は、どのように回避できるのでしょうか?

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