医療機関が保有する情報は、地域医療連携の支援や治験、症例分析などの二次利用の価値がある。ITによってその利用を促進している徳島県の取り組みを紹介する。
前回の「病院情報システムのクラウド化メリット 福井大学病院の場合」に続き、2011年12月9日に開催されたCIO研究会第9回セミナーの講演内容を紹介する。今回は、徳島大学病院を中心とする徳島県の事例を取り上げる。徳島大学病院は、地域の病院や診療所、保健センターが保有する患者情報を蓄積し、糖尿病などの慢性疾病管理の分析に利用することで医療の質の向上を目指している。
「医療の世界もビッグデータ時代を迎えている。医療機関が保有する情報は、二次利用の価値から簡単に捨てることはできない。永続的に保管して有効活用する仕組みが求められている」
徳島大学病院 病院情報センター センター部長、森川富昭氏は、講演でこう説明した。同氏は、内閣官房 高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部の「医療分野の取り組みに関するタスクフォース」構成員でもある。
森川氏は病院情報システム(HIS)を「オーダリングや電子カルテを発生源とするデータが変換されて、最終的にレセプトコンピュータ(以下、レセコン)に集約される診療報酬請求書システム」と捉えている。医師が入力するデータは医療サービスの質の分析、医療機関の経営者はレセコンデータを経営分析など、データはさまざまに活用される。それらを標準化して蓄積していかなければ、経年的な変化は測れないという。
その上で、森川氏は「生涯カルテやナショナルデータベース構想などは、対象データのコード体系を標準化していることが前提条件となる」と説明する。しかし、現状は「診療所や病院、保健センター、自治体などステークホルダーが多く、その意見を取りまとめたり、組織をまたがったガバナンスによるシステムの構築・運用が非常に難しい」という。
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