Neo4jの導入事例
「グラフデータベース」を新型コロナの接触追跡に活用 医療機関が挑戦
複数のデータの関連性を示すグラフ構造を持つ「グラフデータベース」は、新型コロナウイルス感染症の研究に役立つ可能性がある。ドイツの医療機関における事例を紹介する。
世界中の研究者が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策の発見に向けて研究を進めている。研究者のさまざまな挑戦の中には、異なるデータの関連性を基に洞察を引き出そうとする取り組みがある。データの関係性を表す「グラフ」を使うデータサイエンスの手法(以下、グラフデータサイエンス)はこの研究で重要な役割を果たしており、研究者はさまざまな研究に関する情報やCOVID-19関連のデータをグラフ化できる。そこで活用されているのが、グラフ構造を持つデータベースである「グラフデータベース」だ。
Neo4jは、同社の同名グラフデータベース管理システムを使用するプロジェクト「Graph4Good」を立ち上げ、COVID-19に関する研究者を支援している。Neo4jは核となるグラフデータベースにグラフデータサイエンスのライブラリやデータ可視化ツール「Neo4j Bloom」、プレミアムサポートなどを組み合わせたツールだ。
グラフデータサイエンスはNeo4jにとっての最も重要なレイヤーであり、機械学習アルゴリズムとデータサイエンスのアプローチを組み合わせて、データの関係性を予測・分析する。グラフデータサイエンスの機能は、ドイツ糖尿病研究センター(DZD:Deutsches Zentrum fuer Diabetesforschung)のデータ・ナレッジ管理責任者であるアレクサンダー・ジャラシュ氏にとって特に興味深いものだった。
DZDは糖尿病を中心としたさまざまな疾患を研究している。「糖尿病患者は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染とCOVID-19による死亡のリスクが高い」とジャラシュ氏は述べる。DZDはNeo4jのグラフデータサイエンスライブラリをまず糖尿病研究に用い、現在はCOVID-19の研究にも活用している。
COVID-19の追跡にグラフデータベースを活用
ジャラシュ氏によると、DZDがNeo4jを活用する最も重要な理由は、ある時点で複数のSARS-CoV-2感染が互いに関連し始めるためだ。ただし感染の追跡に必要な全てのデータがつながっているわけではない。同氏はドイツおよび世界中の科学研究データのほとんどが孤立している状況を指摘する。
DZDはNeo4jを使用して、それまで関連付けられていなかった複数のデータソースの関連付けに挑んでいる。ジャラシュ氏によると、SARS-CoV-2に関しては4万以上の出版物のデータセットがある。同氏は、研究者がこれまで見つけられなかった、データセット間の新しい関連性を発見できることを期待している。その際にはあらゆる種類のデータサイエンスと同様に、データ品質が重要な課題となる。
Neo4jのデータサイエンスのリードプロダクトマネジャーであるアリシア・フレーム氏によると、Neo4jのグラフデータサイエンスライブラリは、Neo4jのグラフデータベースに既に格納されているデータを使用して洞察を導き出す。「Neo4jに保存したデータを使用できる、機械学習ツールのようなものだ」とフレーム氏は説明する。
フレーム氏は「COVID-19との闘いにグラフデータサイエンスライブラリを役立てることができる、重要な領域が見つかっている」と語る。そのうちの一つは、連絡先の追跡と感染者の全ての接点を特定することだ。
米国ニューヨーク市のように人口密度の高い場所で、濃厚接触者の接点を追跡するのは難しい。こうした場所は、ほとんどの人が非常に多くの人々と接点を持っているためだ。「ニューヨークの医療機関にとって、人員や医療リソースの割り当てと予測は特に重要なニーズであり、グラフデータサイエンスが役立つ」とフレーム氏は話す。
特定の医療機関が過負荷状態になる可能性が高い時期を判断し、適切な代替施設を推薦するために、複数のデータの類似性を検出するアルゴリズムが役立つという。フレーム氏によると、こうしたアルゴリズムを使用することで「この医療機関は過負荷状態になっている可能性が高いので、代わりにこの医療機関を推薦します」といった助言を提供できるようになる。
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[日本オラクル株式会社] ピンチをチャンスに変えたEPR製品は? 先行企業の導入事例3選 -
技術文書・技術解説
[日本オラクル株式会社] 無自覚なリスク 秘伝Excelファイルが監査の壁、不正・ミスの温床となる理由 -
製品資料
[日本オラクル株式会社] 戦略的経理の第一歩 失敗のない「脱Excel」を実現する秘訣とは? -
技術文書・技術解説
[日本オラクル株式会社] いまさら聞けないオンプレERPとクラウドERPの違い 最適な製品をどう見極める? -
事例
[株式会社ビザスク] 連結売上高が約2倍に成長、富士フイルムが実践した新規事業創出の戦略とは?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
2
1200万円のSaaS導入を回避 スギ薬局「運用費10万円」のAIエージェント構築術
-
3
年収700万超エンジニアに共通するスキルと「もっと勉強すべきだった分野」
-
4
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
5
クラウド資格コレクターは評価されない? 年収1000万を分ける“OSの理解度”
-
6
脱VMwareか、継続か? 仮想化ソフト主要6製品の機能とスペックを徹底比較
-
7
JSONをやめてPythonで送る トークン消費を約7割抑えるAIの設計
-
8
「0.3秒のスピード顔認証」の入退室管理が社員に好評 事例に学ぶオフィス改革
-
9
「ノートPC派」は損をしている? Dellと考える“自作PC”のメリット
-
10
慶應義塾が「Notion」を選んだ理由 AI導入の盲点になる“情報のサイロ化”
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
DX/AI投資の壁を突破、現代の最高財務責任者が直面する課題と克服のヒント
-
3
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
4
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
5
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
6
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
7
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
8
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
9
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー