医療専用じゃない「Teams」が“病院必携ツール”になるために超えるべき壁とは遠隔医療向け機能を強化

「Microsoft Teams」は遠隔医療向けの機能拡充を進めている。専門家はこうした機能が医療の在り方を変えると期待する一方で、改善の余地も大きいと考えている。

2022年06月16日 10時00分 公開
[Mike GleasonTechTarget]

 Microsoftのユニファイドコミュニケーションシステム「Microsoft Teams」(以下、Teams)には遠隔医療用の機能がある。その一つが、スマートフォンのWebブラウザを使って患者がオンライン診療を受けるための機能だ。この機能は、診療予約の仕組みを簡素化するだけでなく、医療機関が患者にアプリケーションの使い方やインストールの仕方を指導する手間を軽減する可能性がある。

もともと医療専用ではないTeamsが解決すべき“あの問題”

 「待合室」の機能もある(プレビュー版)。待機列の画面を見れば、医療機関のスタッフは「患者がどのくらいの時間待機しているのか」「予約を見落としている人はいないか」などの情報をリアルタイムで確認できる。医療従事者が患者に、待機列の画面から直接テキストメッセージやメールを送ることも可能だ。この待合室画面は、医療機関自身のロゴやメッセージを入れて独自にカスタマイズできる。

 TeamsはCerner(Oracleが買収)およびEpic Systemsの電子カルテ(EHR:電子健康記録)システムとの連携機能を提供している。「Microsoft Teams EHR コネクタ」で連携した電子カルテシステムがあれば、医師はその電子カルテ画面で患者の診療予定を直接確認してオンライン診療を開始できる。Teamsと電子カルテシステムを連携させることで、医師が診察中に医療情報を参照したり、入力したりすることがもっと容易になる、とMicrosoftは説明する。本稿公開時点で、Epic製電子カルテシステムとの連携機能は一般提供されているが、Cerner製電子カルテシステムとの連携機能はプレビュー版となっている。

 コンサルティング会社Sapient(Publicis Sapientの名称で事業展開)で医療グループ担当バイスプレジデントを務めるヒューゴ・マナセイ氏は「電子カルテシステムとの連携は、医療機関の情報共有に役立つ」と評価する。患者は複数の医療機関を受診することがよくあるからだ。「新しい医療の在り方には、複数の人間関係を組み込む必要がある」とマナセイ氏は語る。

 医療機関Baptist Health Systemの最高デジタル情報責任者アーロン・ミリ氏も、Teamsの有用性に期待を寄せる。しかし最初から医療向けに設計されていないコミュニケーションツールには、まだ改善の余地がある。「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のまん延をきっかけに分かったことがある。遠隔医療製品は、実のところ本当に大規模な遠隔医療を想定して作られていなかった」とミリ氏は言う。

 「TeamsをはじめとするWeb会議ツールは、医師にも患者にももっと使いやすくアクセスしやすいものでなければならない」とミリ氏は考えている。遠隔医療サービスを提供するに当たって、医師が患者にツールの使い方を指導する必要がしばしば生じる。この指導の手間が大きいと、肝心の医療を提供する時間が削られてしまうからだ。

 ミリ氏の意見を裏付けるデータもある。コンサルティング会社J.D. Powerが2020年10月に発表した調査結果によると、過去12カ月以内にオンライン診療などの遠隔医療を利用した4302人の米国患者のうち半数以上(52%)が、遠隔医療のシステムは使いこなすのが難しいと感じていた。

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