厚生労働省が推進してきた医療ITに関する政策は、2010年の医療クラウド利用解禁が大きなターニングポイントだった。現在に至るまでの政策の狙いを読み解きながら、医療クラウドサービスの情勢を解説する。
医療分野におけるIT化の歴史を振り返ると、1999年から2009年までの10年間と、2011年から現在までとの期間には、変化に特徴的な違いが見られます。
最初の10年間は、「カルテの電子化」や「レセプトのオンライン請求」「フィルムレス」など、アナログ情報からデジタル情報への移行にフォーカスした政策が進んできました。以下に列記する厚生労働省の通知などから、その政策の意図を考えてみましょう。
・診療録等の電子媒体による保存について(1999年)
この通知により、紙の代わりに電子媒体でカルテを保存することが法的に認められました。
・光ディスク等を用いた費用の請求に関して厚生労働大臣が定める方式及び規格並びに電子情報処理組織の使用による費用の請求に関して厚生労働大臣が定める事項及び方式について(2006年)
従来は紙の申請書を用いていた診療報酬請求の手続きを、光ディスクや電子情報処理組織(オンライン請求)で手続きすることを認めたのが、この通知です。以前は電子媒体の請求(光ディスクの郵送)が一般的でしたが、現在ではほとんどの医療機関がオンライン請求の手続きを選んでいます。
・電子画像管理加算の新設(2008年)
2008年に厚生労働省が「電子画像管理加算」という診療報酬点数を新設したことによって、エックス線フィルムを画像データに変換してサーバに保存することで、加算を算定できることになりました。この点数が登場したことで、フィルムレス(注1)が急速に普及しました。
※注1:医療機関が、エックス線装置やコンピュータ断層撮影(CT)装置、磁気共鳴画像法(MRI)装置などで撮影した検査画像をフィルムに出力せず、モニターに表示するシステムを導入して利用している状態のこと。
以上、3つの政策はいずれも、医療機関で重要な書類(カルテ、レセプト、フィルム)をアナログ管理からデジタル管理へシフトしようとする動きを後押ししました。ペーパーレスの推進で、院内に書類があふれている状態を解消し、業務を効率化しようとする思惑があったと考えられます。
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