Goldman Sachsによると、AI技術の普及によって3億人の雇用に影響が生じる可能性がある。AI技術を活用するITベンダーは、従業員の雇用方針をどのように考えているのか。
人工知能(AI)技術を利用した業務フローの自動化によって、全世界中でフルタイム勤務の労働者3億人分の雇用が影響を受ける――。これは大手金融機関Goldman Sachsが2023年4月に発表した予測だ。社会のさまざまな場面でAI技術活用が広がる結果、人間の雇用が減少するというのは“既定路線”なのか。
この変化を象徴するのが、人件費が低い労働力を提供することによって、英国でビジネスを拡大してきたインドのITサービスベンダーだ。例としてコンサルティング企業Tata Consultancy Services、ITベンダーのWiproやInfosys、HCL Technologiesなどがある。インドの熟練したITエンジニアを、西欧諸国の従業員よりも低い人件費で雇用できたことが、インドのIT企業の爆発的な成長のきっかけとなった。
こうした成長の法則が変わりつつある。従業員数約3万人(2025年7月時点)を抱えるインドのITコンサルティング企業Hexaware Technologiesは、AI技術の進化が従業員数に変化をもたらしたことを示す一例だ。同社のプレジデントで、欧州、中東、アフリカ(EMEA)地域の責任者のアムリンダー・シン氏によると、同社の目標は「2030年までに、業務の約50%を人的労働ではなくデジタル労働で遂行できるようにして、収益を生み出すこと」だ。
シン氏はこの目標について、「人的労働力を縮小させるわけではない」と言い添える。「むしろAI技術がIT業界の成長を促進し、さらに多くの人的労働力が必要になる」という見通しがあるからだ。ただし人的労働力の成長が鈍化する可能性があることも同氏は認めている。
HCL Technologiesの最高技術責任者(CTO)、ビジェイ・ガンター氏もこの見解に同調する。2024年4月〜2025年3月、同社は138億4000万ドルの売り上げを達成し、4.3%の成長を記録した。一方で従業員数は減少した。同氏は、今後数年間にわたってこれと同様のことが起こると予測する。
AI技術が影響を及ぼす業種にはどのようなものがあるのか。2023年8月、オープンアクセスリポジトリ「arXiv.org」に公開された論文は、画像やテキストを自動生成するAI技術「生成AI」の影響を特に受ける可能性がある職種として、会計士やパラリーガル(弁護士をサポートするスタッフ)、財務アナリストなどを挙げた。同論文はLLM(大規模言語モデル)が米国の労働市場に与える影響を評価したもので、AIベンダーOpenAIとペンシルベニア大学(The University of Pennsylvania)の研究チームが執筆した。
「単一のスキルしか持たない人材に未来はない。業界に対する理解と、AI技術をはじめとするテクノロジーに対する理解を兼ね備えていなければ、生き残ることはできない」。シン氏はこう強調する。
次回は、AI技術が普及する中で、人間の従業員やその人々が求められるスキルを育成する企業の取り組みを紹介する。
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