医療再生に不可欠な「日本版EHR」構想の問題点「日本版EHRの実現に向けた研究」公開成果報告会リポート(前)

「日本版EHRの実現に向けた研究」研究班が2010年度の研究成果報告会を開催した。そこでは各地域で進むEHRの現状や日本版EHRの実現に向けた課題などが明らかになった。

2011年06月24日 09時00分 公開
[翁長 潤,TechTargetジャパン]

 「日本版EHRの実現に向けた研究」研究班(以下、日本版EHR研究班)は6月13日、2010年度厚生労働省科学研究事業に関する公開成果報告会を開催した。同研究班は国家レベルでのEHR(Electronic Health Record:生涯健康医療電子記録)の実現を目指し、クリティカルパス電子化やその連携項目の標準化、医療連携ネットワークの実証実験などに取り組んでいる。

 国家レベルのEHRとは「国民1人1人が自らの健康/医療情報を生涯を通じて管理把握できる環境と、それを支える国家的な医療情報ネットワーク」のことを指す。日本版EHRは、内閣府が2009年7月に発表した「i-Japan戦略2015」の中でも重点項目の1つに掲げられ、厚生労働省の「地域医療再生基金」や経済産業省の「サービス産業活動環境整備調査事業(医療等情報化共有基盤構築調査事業)」などの補助を受け、その実現に向けた取り組みが強化されている。

 しかし、海外の動向と比べるとその進捗状況は遅れているともいえる。例えば、2002年からEHRの運用を開始している欧州諸国では、国単位ではなくグローバル連携を既に目指す段階にある。2015年までにEU加盟国間での電子処方せんや医療情報サマリーなどを連携するプロジェクトが進んでいる。また、オバマ政権下で経済再生重点事項の1つとして電子カルテの普及を2009年から掲げている米国は、2010年12月にEUと「e-Health関連協調協定」を締結し、相互運用性や各指標の標準化などを強化し、積極的に電子化推進の動きを見せている。

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