医療分野のIT化最新動向を紹介する連載コラムの第4回。前回に引き続き、地域医療連携の実現を支える医療機関間の情報基盤の構築について取り上げる。
前回の「『地域医療連携』実現のために準備すべきこと」に続いて、地域医療連携を支える情報基盤を取り上げる。前回は地域医療におけるIT活用の3つのパターンを紹介した。
※ 地域医療連携の変遷など詳しい内容については前回記事をご覧いただきたい。
上記の形態は、同一または系列ベンダーによるシステムの統一、あるいは地域内での標準規約を制定するなどによって地域内での連携を実現した例だ。これらの方法でも一定の効果が上がっているが、全国規模(国家レベル)で連携していく将来形を思い描くと、新たな実現形態が必要になるかもしれない。つまり、連携エリアが拡大した場合、従来の「同一または系列ベンダーの製品で統一して集中型データベースを構築し、情報にアクセスする」という方法は現実的でない可能性がある。今回は、既存のIT資産を最大限活用した上で、より柔軟に地域医療連携を実現していくために必要な取り組みを紹介する。
『EHR実践マニュアル その成功戦略と事例研究』(ジョー・ミラー著/神戸市立医療センター中央市民病院医療情報研究チーム 編集/宮原勅治 訳・監訳:篠原出版新社)に面白い表現があった。米国「RHIOs(Regional Health Information Organizations)」の医療情報システムのデータベースは、5つの「D」で表現される特徴があるそうだ。
それは「Distinct(他と区別され)」「Distributed(分散型)」「Disparate(本質的に異なり)」「Decentralized(中央集権化されていない)」「Database(データベース)」とのこと。
筆者の目には、日本の方がさらに強く「5D」の傾向を持っているように見受けられる。日本では、米国以上にベンダーが最先端の電子カルテ開発にしのぎを削っているため、高性能の電子カルテシステムが全国各地に併存しているからだ。そして、各ベンダーの電子カルテデータベースの仕様が積極的に公開されることは、今後もないだろう。電子カルテのデータ保存形式は、ベンダーごとに「Distinct(他と区別され)」であり、「Disparate(本質的に異なり)」な自らの知見の結集である。電子カルテのデータ保存形式は自らの知見の結集だからだ。それはベンダーにとっての武器であると同時に、異種ベンダー間の情報連携における障壁となっている。
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