タブレットよりも推される理由がある
マニアが熱狂するモバイルワークステーションの魅力とは?
CPU/GPUなどの性能が上がり、汎用PCとワークステーションとの境界が曖昧になった。しかし、高度な描画処理と携帯性の両立を求めるユーザーの間では、決して安いとはいえないモバイルワークステーションが人気だ。
最新のモバイルワークステーション(以下、モバイルWS)は、モバイル対応のフォームファクタに高度なコンピューティング機能を詰め込んでいるが、それは価格と引き換えだ。
モバイルWSは、通常のノートPCやタブレットにはない機能が搭載されたノートPCだといえる。先ごろ、米Dellを含め、ベンダー数社がエンタープライズ向けのモバイルWSを刷新した。
「高速なGPU、ハイエンドのCPU、大量のメモリが必要なユーザーなら、モバイルWSに投資するだろう」と語るのは、ワイヤレスおよびモバイル技術を専門とするコンサルティング会社の米Farpoint Groupのクレイグ・マサイアス社長だ。
新しい15.6インチの「Dell Precision M3800」は、重量が1.88kgで、Windows 8.1 Proを搭載し、第4世代のIntel Core i7クアッドコアプロセッサ、NVIDIA Quadro K1100M GPU、2Gバイトのメモリを採用している。2013年11月20日に販売開始となった。
Dellによると、携帯性を優先するとパフォーマンスを犠牲にしなければならないが、このワークステーションに関してはそのようなことはないという。
ただし、携帯性とパフォーマンスの両方は安くは手に入らない。Dell Precision M3800の価格は、最小構成1799ドル(日本では24万9980円)となっている。複雑な計算や設計などを行うために、高い処理能力が必要なユーザーにとっては、Dell Precision M3800の価格は性能に見合うのかもしれない。
「問題は、価格ではなく、性能だ」とマサイアス氏は言う。「重要なのは、費用対効果と価値だ。一日中、重たい薪を運ぶなら、(トヨタの)プリウスは使わず、トラックを使うだろう。(モバイルWSは)生産性を最大限高めることを目的としている」
さらに、マサイアス氏は「写真編集や動画、音声など、メディア制作に携わる職業のユーザーなら、モバイルWSを使うだろうし、価格の高さも正当化できる」とする。最近、モバイルWSを刷新して販売を開始したベンダーは他にもいる。
米Hewlett-Packard(HP)は、2013年10月に14インチ型「ZBook」を発表した。重量は約1.7kgで、Windows 8 Proをプリインストールし、第4世代のIntel Core i5またはi7プロセッサを搭載する。価格は1399ドルから(日本では20万円前後の予定)。
米Toshiba America Information Systemsは、重量約2.7kg、15.6インチの「Tecra W50」を2013年10月18日に発売した(日本未発売)。価格は1999ドルからで、Intel Core i7クアッドコアプロセッサ、NVIDIA Quadro K2100M GPU、Windows 8 Pro、2Gバイトのメモリを搭載している。
市場のニッチにはまるモバイルWS
米IDCのリサーチアナリスト、ボブ・オドネル氏によると、モバイルWSは、主にメディア制作や3Dデザイン業界で、高度なグラフィックス処理を必要とし、かつモバイルであることを求める少数派のユーザーを対象にしているという。
まさにその理由から、Dell Precision M3800モバイルWSを使っているIT管理者(匿名希望)がいる。
米東海岸の一流大学でWebサービス担当のIT管理者を務めるこのユーザーは、「われわれは複数のフィードをストリーミング配信するために性能の高いCPUを必要としている。これ(Dell Precision M3800)はとても役立っている。ノートブック1台で、複数のオーディオフィードとビデオフィードを配信できる点は非常に重要だ」
また、IT運用情報を参照するのも、Dell Precision M3800は便利だという。
「ネットワークが混雑しても、1つの画面から極めて重要な情報を全て監視できるようになった。このマシンが、これまでのマシンと大きく違うのはその点だ。古いマシンでは、画素数が足りず、画面に両方のビデオを表示するにも、表示内容を縮小しなければならなかった」
最大のメリットは持ち運びができ、1.88kgといえども、過去のモデルと比べて軽量なことだ。
「キャンパス中を持ち歩き、打ち合わせに出掛けられるように、すぐにかばんに入るマシンが必要だ」と、このIT管理者は説明する。
ベンダー各社は引き続きワークステーションの軽量化に努めており、持ち運びに適した重量になるにつれて、関心を持つユーザーは増えるだろうとIDCのオドネル氏は言う。しかし、前出のマサイアス氏は、この種類のワークステーションは、PC市場ではその価格のために需要が急伸することはないと見ている。
「典型的な会社員は、600~700ドルの価格帯の端末を購入するだろう。これは、それなりのタブレットの価格に当たる。ただし、ハイエンド製品の市場はなくなることはない」とマサイアス氏は語る。
また、従来のノートPCの機能がワークステーションの機能に近づきつつあることも、モバイルWS市場に影響する可能性がある。
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