銀行や株式市場、決済機関をテスト
「金融機関をハッキングせよ」 英国でサイバー攻撃演習が実施
英国で2年ぶりとなる対サイバー攻撃演習「Waking Shark作戦」が実施。演習には同国の主要銀行全てが参加した。執拗な攻撃に耐えられる能力が試される。
サイバー攻撃が巧妙化の一途をたどる現実を前に、金融業界の安全性に対する懸念が各国で高まっている。U.S. Cyber Consequences Unit(US-CCU、サイバー攻撃の結果もたらされる経済・戦略上の影響を米政府に助言する非営利の米調査機関)のスコット・ボーグ代表は2013年9月、サイバー犯罪集団は次の展開として国際金融市場の操作を狙うと予測した。
ボーグ氏はシカゴで開かれた「ASIS International」と「(ISC)2」の年次会合のジョイントセッションで講演し、犯罪集団が盗みやクレジットカード詐欺で稼げる金額には限りがあると指摘している。
英紙Telegraphによると、第2回目の「Waking Shark作戦」は2013年11月中旬、英国の金融機関が使っている決済システムと市場システムに対する大規模サイバー攻撃を想定して実施。演習はイングランド銀行(中央銀行)と財務省、金融行動監視機構の監督の下、英国の中核を担う金融機関がサイバー攻撃に耐えられる能力を見極める。
1回目のWaking Shark作戦は2年前の2011年3月に、旧金融サービス機構(FSA)の下で行われた。
サイバー攻撃のリスクはユーロ危機を上回る
今回の演習では英国の銀行や株式市場、決済機関の耐性をテストし、改善が必要な分野を見極める狙いがある。
英財務省は最近の報告書で、金融システムには潜在的弱点が多数あると指摘した。これは相関性の高さや一元化された市場インフラへの依存、複雑なレガシーITシステムに起因するという。
この報告書を受けてイングランド銀行の金融政策委員会(FPC)は、銀行や金融システムの中核機関に対し、サイバー攻撃を防ぐための戦略を半年以内にまとめるよう指示した。
FPCはまた、イングランド銀行はたとえシステムが攻撃された場合でも、確実に運営を続けることができなければならないと述べている。イングランド銀行の金融安定局長でFPC委員でもあるアンドルー・ホールデン氏も2013年6月に、サイバー攻撃は英国の銀行にとって筆頭のリスクだと指摘した。
ホールデン氏は議会の財務特別委員会で、サイバー攻撃に対する懸念はユーロ圏危機に対する懸念をも上回ると述べ、英国の銀行は身を守るための対策を強化しなければならないと訴えている。
真の脅威と化したサイバー攻撃
英国では2013年9月にBarclays銀行とSantander銀行がサイバー犯罪の標的となり、KVM(キーボード、ビデオ、マウス)スイッチを使って銀行のコンピュータを遠隔操作される事件が起きた(参考:暗号名はKVM? サイバー銀行強盗の驚くべき手口)。
Santander銀行は事前に攻撃を食い止めたが、Barclays銀行では警察が犯罪集団を摘発する前に、口座から130万ポンド(当時の為替レートで日本円にして約2億円)が送金されていた。
2013年5月には米連邦当局が、プリペイド式のデビットカードを使った4500万ドル(同45億円)の詐欺事件に関連して8人を訴追。被害規模の大きさが浮き彫りになった。
2008年に起きた同様の事件では、犯罪集団が世界49都市のATMから偽造デビットカードを使って現金を引き出していた。この事件は、その1カ月前に英クレジットカード決済サービスのRBS WorldPayからカード所有者150万人の個人情報が盗まれた事件に端を発している。
英コンサルティングファーム、Deloitteが2012年7月にまとめた金融業界に関する報告書では、それまでの1年間で世界の銀行のほぼ4分の1がセキュリティ問題を経験していたことも明らかになった。
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