PC、スマートフォンに続き台頭する「ODM」とは
Apple、Facebookの無数のサーバはどこからやって来るのか?
モバイルデバイスに押されているノート/デスクトップPCを尻目に、サーバ市場の成長が続いている。背景には米Facebookや米Appleなどが支持するハードウェアのオープンソース化や台湾企業を中心とするODMベンダーの躍進がある。
伸び悩むノートPCやデスクトップPCを尻目に
オープンソースハードウェアが話題を呼ぶ中、データセンターを運用する企業の間では、従来のサーバベンダーではなくODM(Original Design Manufacturer:相手先ブランドによる設計、製造の受託を行う企業)からのサーバ購入を検討する機運が高まっている。
電子機器では以前にも、ノートPCとデスクトップPCでこうした市場構造の変化が進んだ。調査会社Reportlinker.comによると、販売額ベースでノートPCの大部分(94%)はODM製品が占めるようになっている。厳密な定義はないが、ODMは一般的なハードウェアを製造する。ODMが作るベースシステムを、サードパーティーや企業が自社のニーズに合わせてカスタマイズするわけだ。
サーバ購入先の新たな選択肢として浮上するODM
ODMは、マザーボードのようなコンピュータ部品の製造にルーツを持つが、さまざまなシステムの設計や製造、さらには販売も手掛けるようになった。通常はコモディティ品に特化しており、製品のマーケティングやサポートにはあまり力を入れていない。
ODMは現在、サーバ市場での存在感の拡大を目指している。ノートおよびデスクトップPC市場で成功してきたODMだが、PCはスマートフォンやタブレットといったモバイルデバイスに押されているからだ。ノートPCやデスクトップPCを提供するODMは、売り上げ減や利幅の縮小、事業の伸び悩みに苦しんでいる。
これに対し、サーバ市場は成長を続けている。2013年第1四半期のODMのサーバ売上高は、前年同期比34.5%増の4億3400万ドルに達したと、米調査会社Gartnerは報告している。さらに、サーバ事業では高い収益性が見込める。サーバ購入者は、ベンダーの粗利率が2桁に達する価格でサーバを買うのが当たり前になっている。ノートPCやデスクトップPCの購入者の方がもっとコストに厳しい。
ノートPCやデスクトップPCのアーキテクチャが確立され、ODMがこうしたシステムを設計できるようになるまでには何十年もかかった。その間にデバイスの標準化とモジュール化という条件が整ったことで、ODMが、顧客がカスタマイズする一般的なシステムを簡単に作れるようになったといういきさつがある。サーバ分野でも同様の流れが起こりつつあり、その大きなけん引役となっているのが「Open Compute Project」(OCP)だ。
巨大なデータセンターを持つ米Facebookや米Appleなどの大手IT企業のような企業が、ODMのこうした市場動向の進展に貢献している。Facebookは、サーバベンダーのプロプライエタリな拡張機能への依存を減らし、オープンインタフェースへの依存を高めた新しいサーバ設計を推進する目的で、OCPを立ち上げた。2011年以来、この取り組みに資金を投入し、ODMハードウェアを自社の新しいデータセンターで利用している。
「従来の汎用ハードウェアでは得られないレベルの効率を求めるクラウドサービスプロバイダーや先進的な企業が、ODMからサーバを購入するというトレンドを引っ張っている」と、ODMの台湾Quanta Computerの子会社であるQCTのゼネラルマネジャー、マイク・ヤン氏は語る。
ODMからのサーバ購入
ODMの名前は多くの企業にとってなじみが薄いかもしれない。大手ODMの例としてはQuanta Computerの他、台湾Delta Group、台湾Inventec、台湾Wistronなどが挙げられる。このように大手ODMはほとんどが台湾企業だ。大規模に事業を展開し、地盤を確立しており、年間売上高は数百億ドルに上る。
これらのODMは米国市場に進出している。例えば、Quantaは2012年5月、カリフォルニア州フリーモントに子会社のQCTを新設。Quantaブランドのサーバやストレージ、ネットワーク製品がQCT経由で米国に流通している。
これらの企業は新分野で市場シェアを獲得する1つの方法として、値引きを利用してきた。ODMサーバは従来のシステムより安いことが多い。このため、ODMの台頭に伴い、サーバ価格は変動しやすくなるとみられる。ODMがサービスで差別化することなく、値引きに走ることで、全サーバメーカーの利幅が薄くなりそうだ。
一方、コモディティ型のハードウェアを使うことにより、顧客にとっては、サーバ設計の選択における自由度が向上することになる。企業はODMシステムを手に入れ、自社のコンピューティング要件に合わせてカスタマイズできる。
「金融サービス会社がシステムに高い処理能力を求める場合、その要件を満たすように自社のシステムを構成することが可能だ」と、米調査会社Technology Business Researchのシニアアナリスト、クリスチャン・ペリー氏は指摘する。
しかし、ODMサーバの購入にはデメリットもある。多くの場合、サポートが購入の大きなネックになる。サーバは、企業内のコンピュータを結ぶハードウェアシステムで、データセンターの主要なコンポーネントであり、ビジネスの継続に欠かせない要素だ。当然のことながら、ユーザーは高度なサポートを要求する。米Hewlett-Packard(HP)や米IBMといった大手サーバベンダーは、上級サポート技術者が24時間体制で対応できるようにすることを軸に据えて、ビジネスを構築している。
「企業がODMモデルを採用する上で社内担当者に一般的に要求されるハードウェア知識のレベルは、従来のエンタープライズソリューションの購入時に想定されるようなレベルよりも高い」と、Quanta子会社のQCTのヤン氏は指摘する。また、ODMはほとんどの場合、企業と直接接する流通チャネルを整備していない。このため、ODMはサポートの一部を委託すべく、米ASIや米Synnexのようなコンピュータ流通業者との連携を目指している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社フィックスターズ] 組み込み開発特有の課題も解消できる「AI活用」の秘訣とは? -
事例
[株式会社ビザスク] 「新規事業」事例集:大手企業はどのように想定顧客ヒアリングを行っているのか -
市場調査・トレンド
[株式会社ビザスク] 質の高い「仮説検証インタビュー」を実施するためのポイント -
事例
[株式会社ビザスク] 富士フイルムの新領域参入に学ぶ事業創出 「畑違い」でもビジネス化できる方法 -
事例
[株式会社ビザスク] 三菱電機 上席執行役員に学ぶ、未来を切り開く「新事業創出」の実践方法
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
4
1200万円のSaaS導入を回避 スギ薬局「運用費10万円」のAIエージェント構築術
-
5
年収700万超エンジニアに共通するスキルと「もっと勉強すべきだった分野」
-
6
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
7
脱VMwareか、継続か? 仮想化ソフト主要6製品の機能とスペックを徹底比較
-
8
「Copilot」はなぜ放置される? “議事録要約止まり”を脱する処方箋
-
9
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
-
10
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー