Windowsタブレット以外は?
脱PCメーカーを目指す新生Dellはモバイルで勝負
数カ月にわたる交渉の末、米Dellは再び非公開企業となることに成功した。しかし、デバイスとITサービスのプロバイダーとして成功を納める道は、長丁場になりそうだ。
マイケル・デルCEOは、この1年、株主から会社を買収するために尽力してきた。2013年9月半ばに、世界的なIT投資会社の米Silver Lake Partnersとのパートナーシップの下で、この買収計画はついに株主の承認を得た。Silver Lake Partnersは、提携先の米Microsoftから20億ドルの融資を受けている。
買収総額は約249億ドル。取引のクロージング条件と当局の承認次第だが、Dellの2014会計年度の第3四半期末(2013年8~10月)までに、全ての手続きが完了する見込みだ。
株主からの要求に応える必要がなくなった今、Dellはより大胆にリスクを取り、野望的なデバイス・サービス事業を展開できる。一部のITプロは、それがDellの中核のPC事業にどんな影響をもたらすのかと、考えを巡らしている。
PC事業を放棄しないDell
事業範囲を拡大し、エンタープライズIT市場への野心を見せているDellだが、売り上げが下落の一途をたどり苦戦しているPCハードウェア市場において、今後もWindowsデスクトップを提供する姿勢は崩していない(関連記事:2013年第1四半期のPC出荷台数激減をアナリストとベンダーが分析)。
2013年9月に発表された米IDCの「Worldwide Quarterly Smart Connected Device Tracker(世界スマートコネクテッドデバイス市場動向)」によると、2013年のPC、タブレット、スマートフォンを総合した市場規模は、前年度比で27.8%の成長が予想されているが、この成長を引っ張っているのはタブレットとスマートフォンだ。
2013年のPC出荷台数は10%減少すると予測されている。年間出荷台数ではタブレットよりもPCの方が上だが、2013年の第4四半期は、タブレットがPC(デスクトップとポータブルPC)の出荷台数を上回る見込みだ。IDCでは、2015年末までには、タブレットの年間出荷台数がPCの全出荷台数を抜くと予想している。
Dellは既にWindows 8タブレットをリリースしているが、さらにタブレットとモバイルデバイスに力を入れる必要があるとの声もある。
「Dellは非公開企業になることで、タブレット、シンクライアント、ノートPC、デスクトップなど、クライアント事業で大胆な手を打つことができる」と話すのは、ハイテク調査会社の米Moor Insights and Strategyのパトリック・ムーアヘッド社長兼主席アナリストだ。
「PC事業は、利幅は低いが、負債を減らすために必要なキャッシュを生み出す」とムーアヘッド氏は話す。「長期を見据えて会社として成功するためには、Dellはクライアントコンピューティング分野で成功を納める必要がある」
企業がPCを購入する方法を変えた会社(Dell)ならば、モバイルデバイスを企業が購入する仕組みを新たに考案できるだろう、という楽観的な見方もある。
モバイルエンタープライズを専門とする コンサルティング会社、米High Rock Strategyの主席アナリストで創設者のクリス・シルヴァ氏は、「これまでDellは渋々ながらもモバイル市場に参戦はしていたが、大きな勝負には出ていない」と語る。「Dellは株式非公開会社になることで、大きな動きに出て、リスクを取り、特にモバイル市場に対して、新しい一味違った製品やサービスを投入するだけの柔軟性を身に付けることを期待している」
Dellは、PCだけでなくデバイスやITサービスにも事業を拡大しているため、全ての事業をこなすことができるのか、また好業績を示すことができるのかをいぶかる向きもある。
非公開企業となったDellは全事業をこなせるか?
Dellは最近、利幅の良いクラウドホスティングとITサービスも提供するようになった。問題は、いまだにDellはPCメーカーだとみられることだ。これは、恐らくPCの販売を続ける限り続くだろう。
米IBMの場合は、サービス企業に移行する一環で、2004年にPC事業を中国Lenovoに売却した。
ITプロバイダーの米Nexusで、シニアシステムエンジニアを務めるマット・フォークト氏は次のように語る。「移行プロセスのかなり後の時点だったが、IBMはPC事業を完全に放棄したことで、人々の意識をIBMの移行後の姿と、IBMが現在提供している製品やサービスにシフトさせた。IBMは四半期ごとにノートPCの売り上げがチェックされることはなくなり、IBMの業績を評価するには、他の製品やサービスを参考にせざるを得なくなった」
Dellは、クライアントコンピューティング中心の「古いDell」としてみられることもあれば、サーバ、ストレージ、ソフトウェア、ITサービス、セキュリティなどのエンタープライズ製品も手掛ける「新しいDell」の顔もある。
「全般的に主に問題なのは、古いDell、つまりクライアント事業の部分だ」と米Gartnerのアナリスト、エイドリアン・オコネル氏は指摘する。
オコネル氏によると、この原因の一部は、スマートフォンやタブレットの普及などPC業界の構造的な変化と、私物端末の業務利用、ホスティング型仮想デスクトップなどのトレンドにある。
「これら全ての変化がDellに課題を突き付けているが、それに加えて、HPなどの同業者からの競争圧力だけでなく、特にLenovoなど非常に大胆な価格を打ち出すことができたベンダーからの競争圧力が高まっている」と、オコネル氏は説明する。
「新しいDell」は、Dellが会社のイメージやカバレッジ(サービス対象の潜在顧客・地域・分野)に関して、市場の課題を克服できれば、将来の成長を見込める。
「1つ目の課題(イメージ)は、十分な数の既存客または見込み客に、新しいDellの製品やサービスが本当に理解されるかどうか、またデータセンターの中心になる製品やサービスのベンダーとして本当にDellが信頼されるどうかだ。2つ目の課題(カバレッジ)は、Dellが現在提供しているさまざまな製品やサービスを最も効果的に販売できるだけの潜在顧客基盤と営業力を持ち合わせているかどうかだ」(オコネル氏)
いずれもDellが取り組んでいる領域であるが、多くの課題と同様に、変化にはかなりの時間を要すると、オコネル氏は話す。
Dellはマネージドサービス事業も拡大し、データセンターインフラだけでなく、クラウドも提供するようになった。クラウドは、DellがエンタープライズITの販売基盤にすべく取り組んでいる事業の1つだ。Dellの最近の買収の多くが、この巨大なパズルを埋めるピースを獲得することを目的としている。
前出フォークト氏はこう語った。「ハードウェアは、今では小さなピースにすぎない。しかし、ピースをまとめてパズルを完成できなかったとき、あるいは、パズルの完成までに時間がかかり過ぎれば、(Dellは)苦しみながら姿を消すことになるだろう」
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