男女格差解消に向けて
「IT業界で働きたい」若い女性はわずか9% 魅力を伝える取り組みが始まる
IT業界に男女格差があることは何年も前から明らかだが、若い女性にIT業界で働くことを考えてもらうための新たなプログラムやキャンペーンが相次ぎ始動している。
非営利のIT業界団体CompTIA(コンピュータ技術産業協会)の調査によれば、若い女性の95%はITのことが「好き」であり、中には「大好き」という人までいるが、「ぜひIT業界でキャリアを積みたい」と考えているのはわずか9%だという。多くの人は、将来就きたい職業を考えた上で大学での専攻を選ぶ。となると、男女格差解消を目指したキャンペーンはより年齢の若い女性にターゲットを据える必要がある。
「意図的か否かにかかわらず、女子は中学生の頃くらいから、『技術や科学、数学などの複雑系科目は女子向きではない』という極めて明確なメッセージを受け取り始める」。こう語るのは、米Hewlett-Packard(HP)のCloud Services部門で製品マーケティング担当副社長兼クラウドエバンジェリストを務めるマーガレット・ドーソン氏だ。「これが今もなお問題なのは、女子が自分の将来について考える上での選択の幅を大いに狭める原因となっているからだ。IT業界の魅力を伝えるためのプログラムや助言者、指導者をもっと多くの女子生徒に提供する必要がある」と、同氏は続ける。
IT業界での女性の活躍を広くアピール
CompTIAによれば、米国では女性が労働人口の半分を占めるが、IT関連の職種では女性の割合はわずか28%という。この点を念頭に置き、CompTIAは2014年4月、女性にIT業界の魅力を伝えるためのプログラム「Dream IT」を立ち上げた。オンラインツールや教育資源の他、CompTIAのメンバーやIT業界のリーダーによる組織的な啓発活動で構成されるプログラムだ。
「米国のIT業界には現在50万件の求人があるが、女性の数は、特に管理職クラスで、一部の新興国を下回っている。ここに大きな問題がある」と、CompTIAの業界関係担当上級副社長を務めるナンシー・ハマービク氏は語る。同氏によると、IT業界は収入が高く、全国平均と比べて失業率が低く、特に女性の場合は仕事の満足度も非常に高いという。「だが、われわれは若い年代の女性にIT業界での就業を奨励するための取り組みを何もしていない。今の若い人たちは皆、ITに夢中であるにもかかわらずだ」と、同氏は語る。
ハマービク氏によると、今回の取り組みでは、Dream ITの講演者は聞き手の年齢に合わせて資料を用意し、学校や地域の集まりで「IT業界でのキャリア」をテーマに話をする予定だという。
さらにCompTIAは、Dream ITプログラムと並行して、IT業界における女性の就業を支援・促進するための法律制定を推進し、学校におけるIT教育の変革にも取り組んでいる。「CompTIAは政策提言と教育に力を入れており、自らのリソースを活用して独自の視点から業界に劇的な影響を与えられる立場にある」と、ハマービク氏は語る。
IT業界における男女格差解消に取り組んでいるのは、非営利団体や学術機関だけではない。米Microsoftや米Cisco SystemsといったIT大手も取り組みを進めている。
例えば、国際電気通信連合(ITU)が主催する国際的な年次イベント「Girls in ICT(Information and Communication Technologies)Day」にCiscoが参加しているのも、そうした教育や啓蒙活動の一例だ。Ciscoはこのイベントにおいて、13~18歳の女子生徒を対象に、同社の世界18カ国、18カ所のオフィスへの会社訪問を実施。社内の見学の他、Ciscoやパートナー企業や顧客企業で働く女性と話をしてIT業界での就業について詳しく知るための機会を提供している。Ciscoのコラボレーション製品「Cisco TelePresence」と「Cisco Jabber」を使って、Girls in ICT Dayに参加している世界中の女子生徒と会話することもできる。
Ciscoの業務執行副社長ハーブリンダー・カン氏によれば、科学・技術・エンジニアリング・数学(STEM: Science、Technology、Engineering、Mathematics)分野の仕事に興味を持たせるための取り組みは早ければ早いに越したことがなく、中学校の段階からこうした分野への就業を促すことが重要だという。高校生の段階では、IT業界での女性の成功事例を広くアピールし、エンジニアリングから製品マーケティングまで、IT業界のキャリアの幅広い選択肢を紹介することが重要となる。
「対話を重視している。出席者には男女両方が加わり、ガイダンスやアドバイスだけでなく、これまでどんなキャリアパスを通ってきたのか、どのような転機を経験してきたかなども伝えている」と、カン氏は語る。
IT業界で働くようになるまでの道のりは、型通りのものばかりではない。米国テキサス州北部ルイスビル市の上級ネットワークエンジニアであり、ITブロガーでもあるエイミー・アーノルド氏は、IT業界で働くことを常に夢見ていたわけではない。芸術と人文科学で学位を取得した同氏がIT分野での就業を考えるようになったのは、法科大学院が自分には向いていないと判断した後のことだったという。そこで同氏は、Ciscoのネットワークアカデミーの夜間クラスを受講し始めた。「それが始まりだった。その後間もなくして、私はすぐにVAR(付加価値再販業者)でネットワーキングの職を見つけることができた」と、同氏は語る。
一方でアーノルド氏は、幼い頃からITプロフェッショナルである父の影響を受けていたこともあって、学校でのSTEM教育に男女差があることに気付いたという。「STEM教科に関しては、ほとんどの場合、教師は女子生徒にはあまり時間を注がず、難しい問題に挑戦させることもしない」と、同氏は語る。
前出CompTIAのハマービク氏によれば、学校によっては、STEM教科の授業がそもそも選択肢にない場合も少なくないという。「授業自体がないのでは、初等教育レベルであれ高校レベルであれ、子どもたちがITに本格的に興味を抱くのは難しい」と、同氏は語る。
早くからIT業界の魅力を伝え将来への自信を育む
アーノルド氏は次のように語る。「女子の選択肢にITを加えるための取り組みがもっと数多く必要だと思う。自分を孤立無援と感じることのないよう女性を支援し、自信をはぐくむのは大切なことだ。より多くの才能をIT業界に呼び込めるよう、男性も女性も協力してことにあたる必要がある」
「男女格差を無視しても問題の解決にはならない」と語るのは、前出Ciscoのカン氏だ。「はっきりと問題を提起しなければ、結局は男女の文化の違いということで片付けられてしまう。問題に光を当て、基準を整備することが重要だ。さもなければ、望む変化は実現できない」と、同氏は続ける。
「IT業界において男女の差は能力の差を意味するものではない」。女性技術者の職能団体「Women in Technology」に所属し、業界カンファレンスやパネルで何度か講演も行っている前出HPのドーソン氏は語る。「大切なのは、何か違うことに進んで挑戦してみようと思えるか、成長のためのチャンスを生かせるかといったことだ」
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