各社が取り組む機能強化
“変化するものだけが生き残る” 仮想化ハイパーバイザー進化論の現在
サーバ仮想化技術はすっかり成熟した感があるが、各社のロードマップを見ると、それぞれのハイパーバイザーにまだまだ秘策があるようだ。
サーバ仮想化市場における差別化と競争は依然として活発だ。米IT関連市場調査会社IDCによると、米Microsoftの「Hyper-V」は2013年、米VMwareの「VMware vSphere」(以下、vSphere)からシェアを約5%奪った。それでもまだ56.8%の市場シェアを持つVMwareは、サーバ仮想化業界の巨人であることに変わりないが、機能向上の努力を続けてきた他社製品へ乗り換える顧客もいる。
米医療機関University Medical Center Health System(以下、UMC)のITインフラディレクター、クリス・アケロイド氏もその1人だ。UMCは、約9年間VMwareを利用してきたが、Hyper-Vへの移行を始めた。まず、テスト/開発層を移行し、続いて第2層、第3層アプリケーションも移行した。vSphereは今、第1層アプリケーションにしか使っておらず、それも大部分はMicrosoftの「System Center Virtual Machine Manager」で管理しているという。
違いが分からない各社のハイパーバイザー
「VMware環境よりもHyper-V環境の方が人材に困らず、トレーニングも容易で、はるかに管理しやすい」とアケロイド氏は話す。というのも、UMCのITスタッフはMicrosoftの管理ツールに慣れていて、そちらの方が使い勝手がいいらしい。
最近はそうした観点が重視され、多様なハイパーバイザーが提供するきめ細かい機能より優先されている、と話すのは、米調査会社Enterprise Strategy Groupのアナリスト、マーク・バウカー氏だ。
例えば、VMware、Microsoft、米Citrix Systems、米IBM、米Red Hatといったサーバ仮想化大手が、自社製品の性能の高さをいくら訴えようとも、顧客はその差を必ずしも気にしなくなってきているという。
「最大仮想CPU数、メモリ、スピード、容量、パフォーマンスなどのスペックは、各社ほとんど大差のないレベルにまで達してきている」とバウカー氏は話す。
仮想化のロードマップで重視されるクラウドワークロード対応
とはいえ、先進的なサーバ仮想化ベンダーは、今後に向けて新たな機能を投入してくる。特に、クラウドワークロードへの対応に力を入れている。
例えばMicrosoftは、「Windows Server 2012 R2 Hyper-V」で、同社が「第2世代」と呼ぶ仮想マシン(VM)のアーキテクチャを導入した。この技術はまだまだ未完成で、これから改良を重ねていくと関係者は述べている。
「Microsoftが『第1世代』と呼ぶVMは、下位互換性のために古いタイプのハードウェア命令に基づいて作られていた」とMicrosoftの「Windows Server」および「System Center」プログラムマネジャー、ジェフ・ウールシー氏は話す。
「当社が過去にリリースしたVMは全て、古いハードウェアをエミュレーションし、そうしたハードウェアに見えるように動作していた。Intelの古い440BXマザーボードと同じように動作した」(同氏)
一方、第2世代VMには完全統合型のデバイスドライバが用意される。ウールシー氏の話では、メモリなどのホットプラグが容易になるため、モビリティの高いクラウドワークロードに一層適したものになるという。第2世代VMはまた、BIOSプロセスも変わり、セキュリティが強化されていると同氏は述べている。
IBMのオープンシステム開発向け仮想化チーフアーキテクトのマイク・デイ氏によると、LinuxカーネルのKVM(Kernel-based Virtual Machine)も、仮想化ドライバを介してアクセスするホットプラグ可能なハードウェアを念頭に改良を進めている。
KVMはマルチプラットフォームハイパーバイザーであり、サポートされるプラットフォームは急増中だとデイ氏は話す。
「初めはx86しかサポートしておらず、仮想化ハードウェア命令に縛られていた」(デイ氏)。今のKVMは、Power、PowerPC、System/390、ARM(のチップ)に対応しているという。
Citrixの「Citrix XenServer」(以下、XenServer)などのハイパーバイザーは、新たな仮想化GPU(Graphics Processing Unit)を統合することによって、仮想デスクトップ環境における3Dなどの高解像度グラフィックスのサポートを強化する。XenServerの開発は、2013年、Citrixから非営利のLinux推進団体Linux Foundationへ移され、ロードマップの見直しが行われて、ドメイン0コンポーネントを64ビットにすることになった。これによって、高機能で水平スケーラビリティのワークロードのサポートを向上させる。
VMwareはといえば、同社南北アメリカ担当チーフテクノロジーオフィサーのクリス・ウルフ氏によると、「Software Defined Data Center(SDDC)」の計画に基づいて、ハイパーバイザー層にストレージおよびネットワーク機能の統合を強めていくという。
「ハイパーバイザーの役割は、VMを実行することだけではなく、1つの完全な運用環境を実現することだ」(ウルフ氏)
Enterprise Strategy Groupのバウカー氏によれば、ハイパーバイザーのネットワーク機能が強化されると、セキュリティその他の機能にも効果があるという。
「ハイパーバイザーがそうした機能も担うようになれば、セキュリティイントロスペクション(検疫・隔離)、パフォーマンスアナリティクス、キャパシティープランニングのキャプチャーポイントとしてハイパーバイザーを活用する可能性も出てくる」とバウカー氏は語った。
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