Honda Hybrid Cloud構想
【事例】世界6極をVMwareで統合、要件決めたら“一気に作る”ホンダのIT文化
災害対策とグローバル対応から、VMwareソリューションで共通基盤を整備したホンダ。標準的な仮想化基盤の構築、DR機能の実装、仮想デスクトップ導入の3つを実現した。
世界規模のハイブリッド型クラウド環境「Honda Hybrid Cloud」の構築を目指す本田技研工業(以下、ホンダ)は2012年夏、その橋頭堡となる「新共通基盤」を国内データセンターで稼働させ始めた。IT本部 システム基盤部 インフラ技術ブロック 主任の林俊行が、その経過をvForum 2012において紹介した。
ホンダは現在、新興国市場の台頭などの環境変化から、世界を6極(日本、中国、アジア、欧州、北米、南米)に分け、各極が並行してバイク、自動車の開発・調達・生産を行う体制を取る。一方、事業を支えるIT基盤は世界規模で標準化と仮想化を進め、仮想的に統合していく考えだ。その将来像がHonda Hybrid Cloudなのだ。
Honda Hybrid Cloud構想の一環として、2012年春から夏にかけて日本で実行されたのが「新共通基盤プロジェクト」である。きっかけは東日本大震災だ。
栃木県にあるホンダの四輪開発拠点は、先の大震災で甚大な被害に見舞われた。林氏は「奇跡的に2週間程度で復旧したものの、影響は全世界に及んだ。グローバル展開する上でも事業継続性が重要。経営層も危機感を強めた」と話した。ホンダは全世界でも核となるデータセンターを日本と北米に置く。両センターには高い可用性と相互補完性が求められるが、特に今後も巨大地震が予想される国内センターの基盤強化は喫緊の課題だった。
ツール駆使して両センターのvSphere環境を統合管理
新共通基盤プロジェクトは、3つサブプロジェクトで構成される。ホンダは国内で埼玉県和光市と栃木県さくら市にメインのデータセンターを構える。両センターの可用性を高める観点から、(1)標準仮想化基盤を構築する、(2)同基盤へディザスタリカバリ(DR)機能を実装する。そして世界中で同じクライアントソフトを利用可能にするため、(3)両センターに仮想デスクトップ基盤を構築する。この3つを同時並行で進めた。
(1)と(2)のサブプロジェクトは2012年4月、(3)は5月に始まり、それぞれ7月、8月中にシステムをカットオーバーしている。つまり、導入期間はわずか3カ月ほどである。林氏は「“何がしたいのか”の要件定義に時間をかけ、実現に必要な製品や技術を決めたら一気に作り上げる。これがホンダのIT文化」と話した。
プロジェクト全体で実現手段として選んだのはVMwareソリューションである。ホンダは「VMware Infrastructure 3.5」からVMware製品でサーバ仮想化を行っており、その継承を選んだ。
和光とさくらのセンターの双方で、Infrastructure 3.5ベースの従来環境を「VMware vSphere 5.0」(以下、vSphere 5.0)で構築した標準仮想化基盤へ移行させた。「仮想サーバの台数が増えていくことは目に見えているので、徹底して運用を効率化することを目指した」(林氏)のが特徴だ。
vSphere 5.0の新機能「Auto Deploy」(関連記事:ライセンスのカウント方法も分かる! VMware vSphere 5の全貌)を活用し、vSphereホストの立ち上げやパッチ適用を自動化。物理配線を少なくするため、VM単位で通信帯域を制御できる「Network I/O Control」機能も駆使する。そして両センターで稼働する、vSphere標準の管理サーバ「VMware vCenter」をリンクモードで結び、和光センター側で統合管理する。さくら側はvSphere管理者が不在なのだ。さらに統合管理を進めるため、高い抽象度で複数のvSphere環境をまとめて管理できる「VMware vCenter Operations Manager」(関連記事:複雑化するvSphere環境を高度に管理 vCenter Serverの上位製品登場)も導入中という。
和光・さくらセンターは同じ関東圏でも100キロ以上離れているが、VMwareのサイト間フェイルオーバーソフト「vCenter Site Recovery Manager(SRM)」(関連記事:VMwareで仮想マシンの遠隔フェイルオーバーを実現する唯一の選択肢)を用いて、アクティブ・アクティブなDR体制を整えた。
SRM導入がスムーズだった背景には、以前からのインフラ整備の積み重ねがある。高速L2ネットワークを延伸した両センターは以前から同じL2セグメントに置かれ、ペタバイト級ストレージのデータ同期も実行していた。今回のSRM導入で両センターは完全に冗長化されたわけだ。林氏は「テストでは十数分で片寄せできている。仮にどちらかのセンターが停止しても、1日あれば何とかなる」と自信を見せた。
遅延乗り越え、世界6極から国内仮想デスクトップ基盤にアクセス
3つのサブプロジェクトの中で最もハードルが高かったのは、「VMware View」(以下、View)による仮想デスクトップ基盤の構築である。全くの新規導入だったからだ。
経緯としては、グローバルに利用する業務システムでクライアント側にもアプリケーションを入れる必要が出てきた。だが、世界中のエンドユーザーがどのようなPCを使っているかを全て把握できない。アプリケーション配布法を議論する中、Viewにより一極で集中運用する仮想デスクトップに世界のエンドユーザーがアクセスする方法を選んだのだ。
和光・さくらセンターの双方に仮想デスクトップ基盤を構築すること自体、特に問題はなかった。だが、通信環境がバラバラな世界中からアクセスがあり、しかもユーザー部門の要件から画面転送プロトコルにPCoIPではなくRDPを採用しなければならなかった。低速回線だとPCoIPに比べてRDPは遅延が発生しやすいといわれる。「300ms近い遅延があった南米への対応が一番苦労した」(林氏)
そのため、カットオーバー後も調整を続けて問題をクリア。同じアプリケーションのWebクライアントと比べても、Viewの仮想デスクトップは使い勝手が良いと評価されるまでになった。林氏は「開発陣は『やった!』と喜んでいた。仮想デスクトップは、集中管理でパッチ適用などの運用も簡単だ。社内では今後も似たようなグローバル共通アプリが増えてくる見通しで、仮想デスクトップ基盤はますます活用されるだろう」と語った。
PSOコンサルタント軍団が全面バックアップ
成功裏に終わった新共通基盤プロジェクトを総括し、林氏は講演参加者にこうアドバイスした。「VMwareプロジェクトが成功するかどうかの鍵は、ヴイエムウェアを『ユーザーと一緒にチャレンジする』という気にさせるかどうか」
同プロジェクトでは実際、ヴイエムウェアのプロフェッショナルサービス組織(PSO)が全面的にバックアップ。大勢のPSOコンサルタントが開発拠点の和光センターに入り、ホンダ担当のテクニカル・アカウント・マネージャ(定額サービスで割り当てられる専任の仮想化推進アドバイザー)がホンダ側とPSOコンサルタント側の橋渡しをした。
その結果、他ベンダーの見積もりでは6カ月だった導入期間が半分で済み、コストを抑えられた。また、通常はリスクの高い最新製品を採用することもできた。仮想デスクトップ基盤はView 5.0(関連記事:3D対応やVoIPも実現、VMware View 5の新機能とライセンス)で計画を進めていたが、プロジェクトが始まった5月に発表されたView 5.1へ急きょ変更。それでもPSOコンサルタントの支援により問題なく導入できたという。
新共通基盤が稼働したことにより、ホンダは国内データセンターのDR体制を整えた。次の課題は、太平洋を挟んだ日本と北米のセンター間でSRMにより同じ仕組みを実装すること。その先にあるのは、世界6極のデータセンターを仮想的に統合したHonda Hybrid Cloudである。「パブリックサービスを含めたハイブリッド型のクラウド環境を作り、ホンダのビジネスを加速させる」(林氏)。Honda Hybrid Cloud構想の実現に向けて、ホンダとVMwareソリューションの関係はますます強まりそうだ。
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