「コスト最優先」は結局高くつく?
企業の無線LAN導入“本末転倒”を避けるために譲れない3つのポイント
企業用の無線LANにおいては、結局どのような製品を購入すべきなのか。製品選択の基本的な考え方を整理する。
無線LANを使ってクライアント端末をネットワークに接続するために、まず必須なのはアクセスポイント(AP)だ。SOHOなど小規模でユーザー数も限られた環境では、家庭用の無線LAN同様、1つのAPに対して接続する端末をそれぞれ設定するスタンドアロン型のシステムで十分なことも多いが、企業の規模がある程度大きくなってくれば、ユーザー数も接続する端末も増える。そして、APの数も増やさざるを得なくなる。
APの数が多くなれば、スタンドアロン型のシステムではいろいろと不都合が生じてくる。APごとに接続する端末の設定を行い、運用ポリシーの変更などがあれば、個別に行わなければいけないというのでは、管理負担が大き過ぎるのだ。
無線LANコントローラーはなぜ必要なのか
右肩上がりで増え続けているAPをどう管理していくかは、ネットワーク担当者にとって大きな課題だ。そこで、ある程度の規模を持った企業にとって重要になってくるのが、複数のAPが連係するコントローラー型のシステムだ。コントローラー型システムにおいて、無線LANコントローラーは、各APと通信を行い、電波状況に応じて接続された端末の通信を制御する役割を担う。
1つのAPに接続可能なクライアント端末の台数には限りがある。だが、同じ空間内に、APの数だけ多くなっても、お互いの電波が干渉し合い、かえってパフォーマンスが落ちることさえある。そこで無線LANコントローラーは、干渉があれば必要に応じてチャンネルを切り替えたり電波の強度を調整する。
アクセスポイント自体がそうした調整機能を持つケースもあるが、全体最適を図る上では、無線LANコントローラーによる集中管理が望ましいという。
「APから見れば最適なチャンネルになっていても、全体から見ると違うプランがあるということもある。また、1つのAPの出力を変えることが別のAPに悪い影響を与えてしまう場合もある。そうした影響を事前にいろいろなパターンでシミュレーションして、一番いい組み合わせをコントローラーが計算してくれる」(シスコシステムズ エンタープライズネットワーク事業 コンサルティング システムズエンジニア 古川裕康氏)というのが、その理由だ。
チャンネルや電波強度の最適化以外にも無線LANコントローラーの役割はある。アルバネットワークスの製品では、あるAPにアクセスが集中しそうになったら、過剰なアクセスをいったん切って、付近の空いているAPへ誘導し、自動的に混雑を回避するような仕組みが備えられているという。
また、接続しながら移動するときなど、クライアント端末が弱くなった電波をつかんだまま離さないということがあるが、無線LANコントローラーによって電波の状況を把握できていれば、通信の品質が下がったときに自動的にアクセスを切り、電波状態の良好な近くのAPに素早く接続し直すこと(ハンドオーバー)が可能になる。
「どのベンダーも高いパフォーマンスを売りにする。だが、あるクライアント端末ではパフォーマンスが出るけれど別のクライアント端末では全く出ないというのでは意味がない」(アルバネットワークス 名古屋支店 中部営業部 技術部長の天野重敏氏)。いつでもどこにいても均質な通信を供給してくれることは、多人数が接続する企業の無線LANにとって重要な条件となる。
3つのポイントを重視せよ
APとクライアント端末があれば、取りあえず無線LANを使うことはできる。ただし、ここまで見てきたように、企業利用において無線LANコントローラーの果たす役割は小さくない。スタンドアロン型で本当に十分なのか。今すぐ必要なくても、5年後も同じ状況でいられるか。初期投資が必要ではあるが、後の運用のことまで考えるとどちらがコスト高か。慎重に考えた上で判断した方がいいだろう。
上記の状況を踏まえると、企業が無線LANを選ぶときのポイントとしては「管理のしやすさ」「通信の品質」「セキュリティ」の3つが挙げられる。
1.管理のしやすさ
オフィスにおける無線LANの利用が増大すればするほど、管理しなければならないAPも増える。最初は会議室に1台しかなかったものが、執務室、共有スペースとエリアが広がり、フロアを越えて、あるいは企業によっては、支店など複数の拠点をまたいで無線LAN網は拡大している。複雑化した運用ポリシーを確実かつ効率的に実行するため、あるいはそのアップデートに迅速に対応するため、APを一元管理するための仕組みは欠かせないものとなりつつある。
無線LANコントローラーやそれと連係した各種管理ツールの導入には、少なからぬ投資を必要とすることになるが、APの混雑の度合いをGUIで直感的に把握できたり、誰がどのデバイスで何のアプリケーションを使っているのかすぐ確認できることで、管理は大幅に容易になる。
2.通信の品質
コスト面でいえば、家庭用の無線LAN機器に慣れた人にとって、企業向けの製品とそれに付随する各種ソリューションは割高なものに感じられるかもしれない。だが、家庭用製品のカタログ上のスペックがオフィスでもその通り実現することは、まず期待できない。そうした製品は数十台のクライアントPCやタブレットが同時接続することを想定していない。
「つながらない」「遅い」というユーザーの不満は業務の停滞に直結するし、ネットワーク担当者自身もサポートに追われることになりかねない。
3.セキュリティ
無線LANを企業が導入するに当たって、最大の懸念事項となるのがセキュリティだ。これは大企業になればなるほどその傾向が強いと思われる。無線LANの企業利用拡大とは、単に利用エリアが広がっていることだけを意味するものではない。アクセスするユーザーもデバイスもますます多種多様になっている。従業員のみならずゲストへのアクセス権限をどうするか、あるいは私物端末の業務利用(BYOD)についても考慮する必要があるだろう。単にデバイスの管理だけでなく、米MicrosoftのActive Directoryと連係するなど、ユーザーごとに認証を管理する仕組みも用意されている。また、誰がどこで、どのアプリを使ってどんな挙動をしているかを監視し、必要に応じてアクセスを制限することも必要になってくるだろう。
無線LANのずさんな運用はセキュリティホールにつながる危険をはらんでいる。社内のネットワークに脆弱性をもたらすことの代償の大きさについては、今さら語るまでもないだろう。
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