ユーザーにそっぽを向かれるにはわけがある
ダウンロードしても1回しか使われないモバイルアプリの共通点は?
業務向けに開発されたモバイルアプリが増えている。しかし、その多くが操作性やダウンロード時の手間などが原因で使われることがないという。
ビジネスユーザーは、企業向けのアプリケーションが一般消費者向けのアプリケーションと同じく迅速に更新されてほしいと考えている。そのため、IT部門はモバイルアプリケーションライフサイクル管理の改善を迫られている。
アプリケーションはモバイルの革新を後押ししてきた。そして、ますます日常生活に欠かせない存在となっている。米Nielsenが2014年7月に公開したリポートでは、米国内で米Appleの「iPhone」と米Googleの「Android」の所有者がモバイルアプリケーションを使用する時間は1カ月当たり30時間であることが明らかになった。これは2011年の18時間から上昇している。
ユーザーのフィードバックに敏感な開発者たち
一般消費者向けのモバイルアプリケーションが普及したことで、仕事で使うアプリケーションにも同様にユーザーフレンドリーで無駄のない操作性が期待されるようになっている。テクノロジーはビジネスワーカーを支援してきた。そのため、会社から支給されるソフトウェアに満足できなければ、従業員は業務の遂行に役立つ他のツールを探すだろう。ほとんどの場合、そのようなツールはあっという間に見つかる。アプリケーション分析とマーケティングサービスを提供している米Localyticsが2014年6月に公開したリポートによると、モバイルアプリケーションの5つに1つはダウンロードされてから1回しか使われないという。その他の調査では、アプリケーションの60~90%が削除されていることが明らかになっている。その原因は、パフォーマンス上の問題やその他のユーザーエクスペリエンスに関する不満にあるという。
世界的な大企業でモバイルストラテジストを務めるマルティ・レズニック氏は、「以前はアプリケーションの機能だけに関心が集まっていた。だが、モバイルの分野では、ユーザーからの関与が必要になる」と話す。
アプリケーションが受け入れられるには、企業がアプリケーションをユーザーにデプロイする方法も重要になる。Appleの「App Store」とGoogleの「Google Play」では、アイコンをタップするだけでアプリケーションをダウンロードできる。だが、多くの場合、企業はサイドローディングに頼らざるを得ない。サイドローディングにより、ユーザーは各社の公式アプリケーションストアを迂回して、複雑なプロセスを踏むことになるのが一般的だ。
「ユーザーはアプリケーションを開く前からうんざりしている」(レズニック氏)
ユーザー基盤が不安定になったことで、モバイルアプリケーションライフサイクル管理におけるフィードバックループの重要性が高まっている。消費者がApp StoreやGoogle Playでアプリケーションにレートを付けて、気に入った点、不満な点、追加してほしい機能などについてコメントすることが通例になっている。さらに重要なのは、そのようなレビューに対する開発者の素早い対応に消費者が慣れていることだ。
ユーザーがフィードバックを残さないときが問題となる。これは、ユーザーがアプリケーションに大きな不満を持っている状況の表れであることが多い。ユーザーがアプリケーションを批判する気になれないほど腹を立てている状況で、果たして開発者はアプリケーションが正しく動作していて、ユーザーのニーズを満たせているかを把握できるのだろうか。
独立系モバイルコンサルタントのブライアン・バリンジャー氏は次のように指摘する。「アプリケーションのクラッシュに対するユーザーの忍耐力は非常に低い。フィードバックを待ったところで得られることはない。なぜなら、もうそのアプリケーションは使われていないからだ。そのこと自体をフィードバックとして受け入れる必要がある」
アプリ内分析とは?
アプリ内分析について考えてみよう。複数のモバイルアプリケーション開発プラットフォームでは、アプリ内分析の機能を提供している。この機能を使用すると、従業員が企業向けのアプリケーションをどのように使っていて、どこで問題が発生しているのかについて詳細な情報を把握できる。
「設計がどれほどアプリケーションに影響するのかを知る必要がある。設計時の選択によって、ユーザーがアプリケーションをどのように使用しているのかについての洞察を得ることができる」と米IBMで企業モバイルプラットフォームと調査部門のディレクターを務めるマイク・ジリフィクス氏は語る。
IBMの「MobileFirst」プラットフォームは、ユーザーがアプリケーションの使用を中止する特定のワークフローにおける位置を特定して、ユーザーが不満を抱える原因を突き止めることができる。例えば、ある画面の表示が不適切になる不具合などだ。
「最重要事項はユーザーエクスペリエンスである」(ジリフィクス氏)
現代のモバイルアプリケーションライフルサイクルの管理と開発プロセスに従来の業務プロセスを落とし込むのは簡単な作業ではない。だが、新しい開発ツールとバックエンドサービスによって、企業はその作業を迅速に進めることができる。
例えば、米ボストンを拠点とするモバイルBaaS(Backend as a Service)ベンダーKinveyのプラットフォームは、フロントエンドとバックエンドのアプリケーション開発を個別に抽象化している。このようにすることで、チーム間で衝突が生じることなく、各チームは自分たちのペースで、それぞれが担当するアプリケーションのコンポーネント開発に取り組むことができる。
Kinveyの最高経営責任者(CEO)を務め、創始者でもあるスラビッシュ・スリダール氏は、「2つのチームがそれぞれ独立して作業を進めて、中間で付き合わせる形を取る」と話す。
開発プラットフォームの中には、企業が従来の企業開発スキルを活用できるものもある。レズニック氏が勤める企業は米Microsoftの「.NET Framework」を使用することが多く、米Xamarinの製品を使用している。この製品を利用することで、開発者は1つのバージョンのアプリケーションを作成し、そのアプリケーションを多数の異なるOSで動作させることができる。開発者は、.NET Frameworkで動作するMicrosoftの「Windows」の伝統的な開発言語である「C#」でアプリケーションを作成し、共有コードを使ってAppleの「iOS」、Googleの「Android」、Appleの「Mac OS X」のネイティブアプリケーションを作成することが可能だ。
その他にも、既存のWeb開発スキルを活用しながらHTML5でアプリケーションを作成し、ネイティブモバイルアプリケーションとしてパッケージできるツールがある。
ただし、どんなバックエンドプラットフォームを選んでも、短気なユーザーが現れるのは時間の問題だ。
「企業はそのことに気付くまで、長く苦しむことになるだろう」とバリンジャー氏はいう。
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