欧米の最新事例と日本の動向を解説
SiemensやBMWの先進事例に学ぶ、ビッグデータ活用の勘所とは
さまざまな業界でビッグデータの活用が進んでいる。ビッグデータを活用して、ビジネス上の課題解決やビジネス価値の創出、迅速な意思決定を実現しようというのだ。では実際、どのようにして進んでいるのだろうか。
金融業、小売業、製造業、通信業など、さまざまな業界でデータの活用が進んでいる。大容量かつ多種多様なビッグデータを活用することで、ビジネス上の課題解決やビジネス価値の創出、迅速な意思決定を実現しようとしているのだ。では、実際に企業はどのようにしてデータの活用に取り組んでいるのだろうか。
本稿では、「Teradata Universe Tokyo 2015」で来日した米Teradata 共同社長のハーマン・ウィマー氏、日本テラデータ 代表取締役社長の吉川幸彦氏の会見から、欧米と日本の最新事例と動向を紹介する。
欧米で広がる“データドリブン経営”を実現する企業
ドイツ製造企業:製品品質の最適化と新サービスの提供
ドイツの製造・ハイテク企業であるSiemensでは、サービス品質と生産性の改善を目的として、ビッグデータ分析の強化に取り組んできた。製造現場などから得られるセンサー、プロセス、マシンのデータを統合し、あらゆる種類のデータから価値を引き出すための仕組みを構築した。
分析プラットフォームの構築に当たっては、米Teradataの統合型データ分析基盤「Teradata Unified Data Architecture」(Teradata UDA)を導入した。また、同社の支援を受けながら、分析モデルおよび実務向けBI(ビジネスインテリジェンス)用アプリケーションを開発・テストする環境と、多構造化データを分析する体制を整えた。
なお、Teradata UDAとは、データウェアハウス(DWH)「Teradata」とビッグデータ分析基盤「Teradata Aster」、大規模データ分散処理基盤「Apache Hadoop」を連係するアーキテクチャである。
これにより、Siemensでは、多様なソースからの多構造化データの統合を実現し、データの価値をより迅速かつ効率的に認識することが可能となった。ビッグデータの分析を通じて、製品品質の最適化と未来志向の新しいサービスの提供につなげているという。
フィンランド製造企業:装置の最適化と予防保全の実現
フィンランドの製紙機械製造業大手であるValmetは、サービス事業の拡大とIoT(モノのインターネット)の展開を見据えて、全社規模のグローバルなビッグデータ分析基盤をTeradata Asterで構築した。
マシンから生成されるデータを分析することによって、顧客が保有する装置の性能を最適化するとともに、予防保全にも役立てているという。米Teradataのウィマー氏は、「インダストリアルインターネット(インダストリー4.0)とIoTを活用した、データ主導型のビジネスを実現した事例だ」と説明した。
ファッション小売企業:マーケティングの最適化と個別顧客の洞察を発見
英国のファッション、家庭用品小売企業であるJD Williamsでは、Teradata Asterを導入し、デジタル分析への投資を積極的に行っている。
具体的には、マーケティングキャンペーンとユーザー行動を関連付けることによって、ある商品を「なぜ購入した/しなかったか」や「どのタイミングで割引をすべきか」といったマーケティングキャンペーンの効果測定ができるようになった。
また、Webパス分析と商品連関分析を組み合わせることにより、全チャネルを横断した顧客インタラクションに対する個人ごとの洞察を発見することが可能になるという。
ドイツの自動車メーカー:サプライチェーンの最適化とロジスティクスのコスト削減
ドイツの自動車メーカーであるBMWは、業務の透明性と効率を向上させるため、Teradata Data Warehouse Applianceとプロフェッショナルサービスを導入することで、グローバルのサプライチェーン管理を最適化した。
ウィマー氏によると、BMWでは、全世界の拠点で管理する自動車部品の情報をデータベース化し、サプライチェーンの解析に利用することで、ロジスティクスのコストを削減しているという。
「特に欧州と北米の大陸間の輸送を行う際には、状況に応じて最適なルートを決める必要がある。飛行機ではなく船舶を使えば、輸送費を抑えられる。時間的に余裕があるのに飛行機で輸送してしまってはコスト高になってしまう。そうした判断を下すためにはデータに基づいた分析が必要になる」(ウィマー氏)
日本では4つの業界でデータドリブン経営への関心が加速
では、日本企業のデータ活用については、どのような状況なのだろうか。日本テラデータの吉川氏によると、金融、小売り、製造、通信の各業種でデータ活用を中心としたデータドリブン経営への関心が加速しているという。
金融業界では、リアルとネットを含むデジタルチャネルの顧客行動を分析することで、リアルタイムマーケティングや不正検知が可能になった。特に、個人や中小企業を対象とするリテールバンキングでは、競争優位を築くために顧客のニーズをより早く知ることがますます重要になっている。
O2O(Online to Offline)やオムニチャネルという言葉をよく耳にするようになった。主に小売業界で注目を集めているキーワードである。企業や組織によってその定義は異なっているものの、基本的には「顧客をよりよく知る」ということだ。小売企業は現在、O2Oやオムニチャネルの仕組みを構築することで顧客の行動分析を行い、実店舗やECサイトをはじめとした購買チャネルによって異なるリコメンド商品の発見につなげている。
製造業界においては、IoTの中核となるセンサーデータを利用した故障予知や予防保全への関心が高まっている。機器装置や設備、車両などからセンサーデータを収集、解析して、どの箇所がいつ故障しそうかを明らかにする。さらに、そういった故障を未然に防ぐことによって、機器・設備の緊急停止や事故の防止にも役立てることができる。また、自動車業界では、テレマティクスを利用した新商品やサービスの開発も進んでいる。
通信業界は、ネットワーク稼働履歴と顧客情報を統合してカスタマージャーニー分析を行い、設備投資の最適化や通信体感品質の向上に取り組んでいるという。
吉川氏は、昨今のデータ構造の多様化が仮説検証に伴う時間を長期化させ、結果的に機会の損失になっていると指摘した。その上で、ビッグデータを含めた情報分析のPDCAをいかに早く回せるかが今後重要になると強調した。
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