直感的な操作性と大規模なデータ処理を実現
BIツール再構築で「花開いた」、東芝のデータ分析基盤とは
東芝 セミコンダクター&ストレージ社はBIツールを再構築し、情報活用を進めている。従来のBIツールが抱えていた課題とシステム刷新による効果について、同社担当者が語った。
東芝の半導体部門である東芝 セミコンダクター&ストレージ社は、直感的な操作性と大規模なデータ処理性能を兼ね備えた情報活用基盤をクリックテック・ジャパンのビジネスインテリジェンス(BI)製品「QlikView」で構築、市場変化の激しい中で経営革新および業務改革に生かしている。
東芝 セミコンダクター&ストレージ社は、東芝の電子デバイスグループ傘下の組織として、2011年7月に設立された社内カンパニー。HDDやSSD、NAND型フラッシュメモリ、CMOSイメージセンサーなど、半導体製品を主に製造、販売している。ほとんどの製品を四日市工場をはじめとした国内工場で生産している点も大きな特徴だ。
本稿では、東芝 セミコンダクター&ストレージ社の担当者がクリックテックのイベントで行った講演を基に、導入事例を紹介する。
QlikViewで情報活用基盤を再構築
東芝 セミコンダクター&ストレージ社 IT推進部 製造技術システム推進担当主務の藤田洋士氏によると、以前導入していたBIツールでは、操作の難しさから意思決定やアクションにつながる分析にまで深掘りすることができず、結局は「Microsoft Excel」で2次加工したデータをビジネスの判断材料としていたという。
取り扱えるデータ量に限界があることや、分析処理に時間を要すること、業務部門からのリポート作成依頼に迅速に対応できないことなども課題となっていた。
「従来のBIツールでは、なかなか業務部門に対して直接役立つものを提供できていなかった。現場の担当者は、Excelなどを使ったリポート作成に忙殺され、部下や関係先に聞いて情報を集めて判断していた」と藤田氏は当時の状況を振り返る。
そこで同社は、新たな分析基盤にQlikViewを導入することを決定した。QlikViewは「連想技術」や「インメモリ技術」といった技術を中核とし、直感的な操作性や大容量データの高速分析を実現している。
また、藤田氏によると、アジャイル開発手法を取り入れることで、分析画面を短期間で構築し、継続的な改善を繰り返すことが可能となったという。
その結果、現場のリポート作成業務は大幅に削減され、「多様なデータソースを迅速に統合することで正しいデータをリアルタイムに分析、判断できるようになった」と藤田氏は説明する。
営業部門、製造部門などさまざまな業務領域で活用
現在、QlikViewで再構築された新たな分析基盤は、営業業務や需給業務、調達業務、製造業務、物流業務など、さまざまな業務領域で横断的に活用されている(図1)。
例えば、営業部門では、売り上げや利益、販売在庫、商材に関する分析、管理、予測といった業務をBIツールで行っている。従来は、担当者は月末になると、データウェアハウス(DWH)から分析対象となるデータを取得し、Excelなどで2次加工して経営層向けの報告資料を作成していた。
QlikViewの導入後は、DWHおよび拠点システムのデータがQlikViewに毎時更新されるようになり、経営層は最新の情報を随時参照し、リアルタイムなデータを使った経営判断や意思決定が可能となった。経営層がBIツールを直接操作することで、報告資料を作成する現場担当者の負担が軽減されたことも業務効率化につながっている。
「ExcelのリポートからQlikViewへの移行で、すぐに正確な状況が分かるようになった」と藤田氏は話す。
一方の製造部門では、生産量や製造TAT(ターンアラウンドタイム)、歩留り、仕掛在庫の分析、管理業務にBIツールを使っている。こちらも従来は、技術者が、製造装置から出力されたデータを収集する製造系システムからデータを取得し、2次加工などの集計作業をした上で、朝会や改善検討会を開催していた。
QlikViewの導入後は、データの集計作業が不要になり、これまで以上に分析、改善作業に注力できるようになった。改善アクションまでの期間を短縮し、より付加価値の高い業務にシフトしている。また、拠点をまたいだ分析結果の共有も容易にした。
「データ集計時間を大幅に削減し、本来の改善業務に集中できるようになった」(藤田氏)
東芝 セミコンダクター&ストレージ社では、本社、製造拠点、国内外販社など同社グループの全拠点で利用可能な共通クラウド環境にQlikViewを構築し、そこに各拠点で必要な分析アプリケーションを実装している。各グループの拠点システムやDWHのデータは、QlikViewに転送、集約される仕組みとなっている(図2)。
「BIの効果が出ない背景には、データが集まらない、うまく活用できないという問題があった。DWHでデータの集約を進めてきたが、QlikViewによってデータ活用の課題を改善できた。地道なDWH整備とQlikViewの導入で、まるで大木に花が開いたようだ」と藤田氏は語った。
今後の課題はデータガバナンスの強化、サービスの可用性、分析レベルの向上
BIツールの活用が広がり、利用者の分析スキルが高まってきたことで、業務部門は、より高い精度や鮮度、粒度のデータを求めるようになってきたという。「IT部門にはなかった視点で、業務部門からデータに関する要望が上がってくることもあり、マスターデータをはじめとしたデータの整備や運用の強化が必要だ」(藤田氏)
同社のBIツールはさまざまな業務領域で使われ、グローバルでも利用される情報基盤である。万が一にもシステムが停止してしまえば、業務に多大な影響を与える恐れがある。そのため、サービスの可用性やBCP(事業継続計画)対策、セキュリティ対策は喫緊の課題の1つとなっている。
また、BIツールの利用が進んでいるとはいえ、業務領域によってはまだ分析のレベルに差がある状況だという。今後は情報の見える化の次のステップとして、「本格的に予測やシミュレーションに取り組んでいきたい」と藤田氏は語った。
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