“ふしぎの国のアリス”に名前を呼んでもらえる仕組みとは
Disneyの“夢と魔法の世界”を支えるウェアラブル技術
“魔法のような”体験で世界中の人々を魅了するThe Walt Disney Company。その裏側は、ウェアラブル端末をはじめ、さまざまな技術によって支えられている。
The Walt Disney Company(以下、Disney)は、ウェアラブル技術を活用した顧客体験の向上とエンゲージメントの強化を図っている。
リストバンド型のウェアラブル端末「MagicBand」がWalt Disney World Resortに導入されたのは2014年初頭。これは、RFID(無線ICタグ)技術を用いており、施設内に設置された短・長距離の読み取り装置と無線で通信する仕組みとなっている。
MagicBandは、入場チケットやホテルのルームキーとして利用したり、食事やグッズ購入時の支払いに使用したりすることもできる。Disneyのカメラマンに取ってもらった写真をオンラインアカウントとひも付けることも可能だ。
「最新技術は消費者の行動を変え、ブランドに期待するものを変化させてきた」と欧州のThe Walt Disney Companyでデジタル担当幹部を務めるフィリップ・バーンズ氏は話す。
同氏は2014年10月17日にロンドンで開催された「 Digital Strategy Innovation Summit」で講演し、子どもたちは近年、ますますデジタル中心になっていることを指摘する。「子どもたちはデジタルネイティブであり、卓越したデジタル体験を求めるようになるだろう」
バーンズ氏は続けて、こうしたイノベーション競争で後れを取っている企業として、米Beboや米MySpace、カナダBlackBerry、フィンランドNokia、米Blockbusterを例に挙げた。Disneyは60年間にわたりエンターテインメント業界の最前線に立ち続けており、これまでの実績に満足するわけにはいかないと強調する。
そうした背景から、Disneyはデジタル競争に先んじるべく、ウェアラブル端末の導入を決断した。「必要不可欠な技術だったのだろうか? 外部からすれば、恐らくそうは見えないだろう。だが、Disneyはいつでも、遅れる前に迅速にイノベーションを起こす必要がある」(バーンズ氏)
“魔法のような”体験を生み出すテクノロジー
これは、Disneyにとって消費者の行動を理解する、ビッグデータ分析への第一歩である。MagicBandはそのデータを活用して、“ゲスト”(Disneyでは来園者をゲストと呼ぶ)のエンゲージメントを高めるための体験を作り出すことができる。
プライバシーとセキュリティは大きな懸念点だとバーンズ氏は指摘する。その点、MagicBandでは、利用者が個人データを共有するかどうかを選択できる仕組みとなっている。クレジットカードの情報を事前に登録していけば、敷地内で財布を持ち歩く必要がなくなる。
また、子どもの名前や誕生日といった情報を登録しておけば、“魔法のような”体験をすることができる。具体的には、Disneyのキャラクターに会うために、子どもがMagicBandを読み取り装置にかざすと、キャラクターにその子どもに関する情報が事前に伝わり、それを基によりパーソナルな体験を提供できるといった具合だ。
「『ふしぎの国のアリス』のアリスは、少女に出会ったら誕生日をお祝いし、その子を名前で呼んであげることができる」(バーンズ氏)
こうしたサービスはゲストが滞在中にMagicBandを身に付けるための動機付けとなり、Disneyにとっては、ゲストに関して深い洞察を得ることが可能となる。
Disneyが提供するサービスは、カードタイプのメディアでも利用可能だが、ホテルのルームキー、食事やグッズの支払いなど、その用途は短距離の読み取り装置を使ったものに限定される。アトラクションで撮影された写真の自動配信をはじめとした、長距離通信を利用したパーソナルサービスは利用できない。
魔法の体験を支えるインフラストラクチャ
これらの取り組みは実際に魔法であるわけではない。Disneyでは、サービス実現のために2万5000室ある全ての客室にRFID対応の鍵を取り付け、幅広いモバイルアプリを開発した。
また、ゲストがモバイルの通信コストを負担せずにインターネットに接続できるよう、敷地内にWi-Fiサービスを張り巡らせた。
「フロリダのWalt Disney Worldは、サンフランシスコと同等の面積があり、40平方マイルの敷地内に6つのパークが存在する。私が海外旅行客なら3G回線を使いたくはない」(バーンズ氏)
同氏によると、The Walt Disney Companyはデジタル対応強化の道半ばにあるという。Webサイトの刷新が間もなく完了する予定で、香港のWebサイトが近いうちに立ち上がる見通しだ。フロリダとパリのWebサイトは2013年にモバイル対応した。
「2013年は4400万人のゲストが来場した。そこから発生するWebサイトのトラフィック量を考えてみてほしい」(バーンズ氏)
現在、全てのWebサイトが共通のコンテンツ管理システム(CMS)で稼働している。これは、Webサイトのルック&フィールを統一することに加え、デジタル対応での連携強化を目指している同社のビジョンとも密接に関係している。それぞれのWebサイトは、コンバージョン率の分析を共有し、Webサイトの変更を迅速かつ効率的に実施することが可能となっている。
さらに、Webサイトはウェアラブル端末や個人情報などのビッグデータを保管するサービス「My Disney Experience」とも連携する。
My Disney Experienceでは、サービス内や無料のモバイルアプリを使って、旅行計画を作成することができる。モバイルアプリから食事の予約や「FastPass+」を確認することが可能だ。
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