New York TimesはiOS優先のアプリ戦略を実験中
苦悩する老舗メディア、モバイルアプリに社運を託したが……(2/2 ページ)
鍵は実験にあり
フロンス氏は配信終了の憂き目を見たNYT Opinionについて「このアプリは当社にとって大変ためになる経験をもたらした。また、次なる実験への準備作業にもなった」と語る。それから、NYT Nowについては“他のアプリにおける多くの改革の下地“と見なしている。
いうなれば、これは「実験の文化」だ。フロンス氏と彼のチームは、全てがうまくいくわけではないことを受け入れる必要があった。「どの組織も『失敗を恐れてはならない』ことを認識している。失敗を恐れるのは皆同じだが、失敗した人々を罰するのは間違っている。意味のない実験とは、決定的な結果を得られない実験のことで、失敗した実験のことではない」と同氏はDigital Strategy Innovation Summitで語った。
NYT Nowのようなニッチなアプリは、IT部門が試行錯誤できる小規模な実験台になり、メインアプリに施す調整や変更の土台を築く。「ニッチなアプリならメインアプリでは不可能な方法でテストを実行できる。メインアプリは規模が大きい。巨大なユーザーベースに対して膨大な量の変更を行うのは正直気が進まない」(フロンス氏)
例えば、同社がモバイルアプリの開発に着手したときには他の印刷刊行物と同じように対処していた。コンテンツをWebサイトにアップロードし、自動RSS/JSONフィードがコンテンツをモバイルアプリに配信していた。「モバイル版の読者が増えたため、モバイル向けの操作性を考慮しなければならないことが判明した。そのためには、アプリとコンテンツ管理システムを変更して、編集者がモバイルの操作性をより細かく制御できるようにする必要があった。それを初めて実現したのが『NYT Now』だ」(フロンス氏)
現在、編集者はコンテンツをモバイルアプリに直接発行できる。「コンテンツの提供方法をプラットフォームごとに分けられるようになった」とフロンス氏はいう。
IT部門の取り組みもあって、加速化と実験の促進はアプリの開発方法に変化をもたらしている。「多数のテクノロジーを使用する大企業はさまざまな相互依存関係を抱えている。他のチームの作業によって身動きが取れないチームが出てくる。これは当社にとって大きな問題であることに気付いた。そこで、チームが個々に作業できるよう、テクノロジースタックを一新しようとしている」とフロンス氏は語る。同氏と彼のチームが先陣を切って導入したのが“マイクロサービス“だ。マイクロサービスとは、アプリがモノリシックな構造ではなく一連のサービスとして作成されるアプリケーションの開発スタイルだ。
開発者が登録などの機能を新しいアプリに含める場合、APIを通じてそのサービスに素早くアクセスできる。「何か全く新しいことをする場合を除き、誰かと話をする必要はない」(フロンス氏)
アプリの飽和状態についての課題
モバイルアプリのダウンロード数は好調に伸びているが、飽和状態が起こり始めているとフロンス氏は指摘する。そして、ユーザーからの不満の声に対抗するのを困難にするアプリの飽和状態について憂慮している。これは、最終的にデジタルコンテンツの収益化も困難にする課題だ。
フロンス氏と彼のチームがモバイルアプリを開発するときには、有益かつ便利なものにすることを心掛けている。また、ときには娯楽的な要素を取り入れ、中毒性を持たせるようにすることもある。フロンス氏は、読者を必ずしもNYTのモバイルアプリだけに囲い込む必要はないと考えている。同氏の戦略には、米Flipboardのコンテンツアグリゲーター「Flipboard」などのアプリやGoogleの「Google Playニューススタンド」とパートナーシップを結ぶことで、同社のアプリに「勝手口」を作ることも含まれている。2015年5月中旬、NYTとその他幾つかのメディアは、米Facebookとその新機能「Instant Article」との提携に合意した。
「共食いの危険性よりも、コンテンツが普及しない危険性の方が重大だ。どのような場合でも自社のサイトやアプリでユーザーを独占できるとは断言できない」(フロンス氏)
長期的な目線に立って“読者の習慣を育てて、何をどのようにしたいのか考え、収益化を急がないようにすること“に重点を置いているとフロンス氏は語る。2015年はNYTの開発チームメンバーの半数がモバイルに従事し、ニッチなアプリをさらにリリースする予定だ。
「流行の変化は激しいので、読者がしていること/していないこと、うまくいくこと/いかないことをモバイルから学ぶべく励んでいる」(フロンス氏)
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