リスク管理の責任者だけど……
新しいCレベル役員、「CIRO」は本当に必要?(1/2 ページ)
最高情報セキュリティ責任者(CISO)にのし掛かる責任が重くなる中、最高情報リスク責任者(CIRO)を専任で配置する動きが出始めている。だがCレベルの幹部をさらに増やすことは、益よりも害をもたらしかねない。
2015年4月に開催された年次セキュリティカンファレンス「RSA Conference 2015」では、最高情報セキュリティ責任者(CISO)の役割変化が中心的なテーマとなった。特に注目が集まったのは、CISOの役割が「最高情報リスク責任者(CIRO)」へと変化しつつある現在の状況や、企業の間でCISOに加えてCIROを設置する動きが出始めていることなどに対してだ。
CIROはCレベルの幹部(CEOなど肩書に“C”が付く経営幹部)であり、リスク管理戦略を設定して、あらゆる情報リスクに備える責任を担う。カバーすべき分野は、情報セキュリティ、ポリシー策定、事業継続計画(BCP)/災害復旧計画(DRP)、ベンダー管理、調達・購買、プロジェクト管理室(PMO)、ITコンプライアンス、外部からのリスク(サイバー攻撃の脅威、世界情勢、市民暴動、自然災害など)と幅広い。通常、CIROは財務部門に属し、最高情報責任者(CIO)あるいは最高リスク責任者(CRO)への報告義務を持つ。
ただし、多くの企業にとってCIROの設置は得策ではない。Cレベルの幹部をさらに増やすべきではないからだ。何しろ、CISOが役員会で発言できるようにするだけで既に大変な苦労だ。CISOが経営陣に認められ、予算などの経営資源を確保できるようになるまでの苦労を考えると、新たにCレベルの幹部を設置し、要求をさらに増やすことは、既存のCレベル幹部の職務遂行を妨げることになりかねない。そうなれば、堅牢なセキュリティを実現するという本来の目的を複雑にし、その実現を遅らせるだけかもしれない。
CISOのリスク意識を高めることが肝要
CISOのビジネス意識とリスク意識を高める必要があるとの考えは、今に始まったものではない。この考えは、セキュリティ専門家のための国際非営利団体である情報システムセキュリティ協会(ISSA)や情報システムコントロール協会(ISACA)が1980年代初めから提唱しているもので、ITガバナンスの実践規範「COBIT」が策定されたいきさつと理由でもある。つまり、問題はCISOそのものにあるということだ。エンジニアやCIOと互角に渡り合い、セキュリティを適切に実践するためには、CISOには技術的な知識が必要となる。だが同時に、CISOにはビジネス手腕も求められる。セキュリティチームが強固なセキュリティプログラムを実施するためには、経営層の支持を取り付ける必要があるからだ。そして、そこではリスク意識も常に求められている。
企業がCIROを設置すれば、同じような問題の繰り返しだ。企業は、情報セキュリティに取り組めるほどIT知識を持ち合わせていないCレベル幹部をまた1人抱えることになる。CIROの“I”は情報(Information)を表し、CIROには本来、ITの知識が求められる。だが、この新しい役職を設置すれば恐らく、役員会での発言権を得ようと懸命に取り組んでいるCISOの立場を後退させるだけだろう。
企業が必要としているのは、洞察力と自信を兼ね備え、テクノロジーとリスクとサイバーセキュリティの問題に着実に取り組めるCISOだ。セキュリティとリスクをバランス良く管理するには、適度な釣り合いを維持することが必要となる。ITに詳しくない幹部がセキュリティを犠牲にしてある程度のリスクを取るような場面でも、ITに精通したCISOであればセキュリティコントロールを優先する傾向がある。このバランスは、基本となる戦略的経営目標に基づいて判断すべきものであり、コスト的にも筋の通ったものでなければならない。
新たなデータ漏えいのニュースが毎日のように報じられる中、役員たちが知りたいのは、そうしたセキュリティ事案が自社で起こり得るかどうかだ。つまり、役員会のメンバーが欲しいのは確約である。現在のところ、CISOはその確約を与えるベストポジションにいる。CIROを設置し、Cレベル幹部をさらに増やすよう提唱することは、木に竹を接ぐように、調和を乱すことになりかねない。恐らく時間の経過とともにCIROを設置する余地は増えてはいくであろうが、企業はまだその段階にはない。中小規模の企業であれば、なおさらだ。
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