失敗しない「学校IT製品」の選び方:セキュリティ編【中編】
LINEを悪者扱いする前に「情報モラル」を学ぶべき(2/2 ページ)
重要性高まる「情報モラル教育」
SNSに関するこうした基礎知識の習得は、インターネットが浸透した情報社会である現代の必須スキルだといえる。そこで重要になるのが情報モラル教育だ。情報モラルは、学習指導要領では「情報社会で適正な活動を行うための基になる考え方と態度」のことだと定義している。SNSをはじめとするITを生かしつつ、トラブルに巻き込まれないためのすべを学習者に身に付けてもらうために、情報モラル教育は大いに役立つ。
国は早くから情報モラル教育の重要性を認識してきた。文部科学省は2008年3月告示の学習指導要領から「発達の段階に応じた情報モラル教育の必要性や具体的な指導」について記載。政府が同年7月に策定した「教育振興基本計画」では地域、学校、家庭における情報モラル教育の推進を明記している。
2008年といえば、米Appleのスマートフォン「iPhone」の国内販売がスタートした年だ。つまり、スマートデバイスが本格的に普及する前から、国はこうした情報モラル教育の重要性を認識し、学習指導要領にも具体的な内容を含めて記載しているのだ。
IT環境の急速な変化が情報モラル教育のハードルに
ただし現状では、情報モラル教育が効果的に実施されているとはいえない。情報を活用するための原理原則は変わらないものの、時代によって必要な情報モラルは変わる。学習者を取り巻くIT環境が目まぐるしく変わる中、情報モラル教育の内容を追従させ続けることは簡単なことではない。こうした状況が、情報モラル教育を難しくしている。
SNS、オンラインゲームといったアプリやサービスのはやり廃りは激しく、関心の対象は数カ月単位で変わってしまう。アプリやサービスは毎日のように登場し、利用されないものは淘汰される。まるで生き物のように状況は日々変わっていくのだ。
こうしたアプリやサービスの中には、残念ながら不正なものもある。表向きは通常のアプリを装っているものの、実はID/パスワードといった端末内の情報を盗んだり、端末そのものを乗っ取るマルウェアである可能性も否定はできない。教員や保護者が常にこうした最新状況を把握し続け、犯罪やトラブルが発生する前に対処するのは至難の業だろう。
情報モラル教育やトラブル対応の進め方
このように、情報モラル教育は一筋縄ではいかないのが現状だ。それでも、学習者に対する情報モラル教育の重要性は変わらない。状況を打破するには、教育機関や自治体が単独で抱え込むのではなく、うまく既存の仕組みを活用することが鍵となる。
セキュリティベンダーを中心に、情報モラル教育に役立つ教材や、学習者の情報モラルの習得度を可視化できる情報モラル診断サービスを無償提供する動きがある。こうした教材やサービスをうまく使えば、効率的かつ効果的な情報モラル教育に役立つはずだ。
万が一、学習者がSNSをはじめとするインターネットのトラブルに巻き込まれてしまった場合にはどうすべきか。そのときは教育機関が自ら解決しようとせずに、各都道府県や警察、その他の公共・公益組織に設置されている相談窓口に連絡するのがよい(表)。
| 設置主 | 相談窓口の紹介サイト | 紹介サイトの内容 |
|---|---|---|
| 警察庁 | インターネット安全・安心相談 | インターネットのトラブルに関するオンライン相談窓口を用意。相談の事例検索が可能 |
| 警察庁 | 都道府県警察本部のサイバー犯罪相談窓口等一覧 | 各都道府県の警察本部への相談用電話番号やWebサイトへのリンクを掲載 |
| 総務省 | 電気通信サービスに関するご相談 | 全国11箇所ある総務省の総合通信局、電気通信消費者相談センターの窓口への連絡先を掲載 |
| 日本情報モラル推進機構(JIMA) | JIMAのFacebookページ | JIMAによる情報モラル講演の様子やJIMAへの連絡先を紹介 |
これらの窓口には既に、同じようなサービスによるトラブルの相談が寄せられている場合が多い。そのため、対処方法やノウハウも蓄積しており、トラブルも迅速に解決できるはずだ。トラブルの際には、これらの相談窓口にまずは問い合わせ、解決方法を相談することが解決の近道となる。
現場の知見をトラブル対策へ生かす
全国に広がるインターネットトラブル相談窓口。その中で筆者がその活動内容を実際に見て意見交換したのが、大分県に本拠を置くハイパーネットワーク社会研究所だ。その活動範囲は大分県内にとどまらない。九州各県の学校などでの講演や、中小企業庁の委託事業として全国で情報モラル啓発セミナーを開催するなどの活動を精力的に行っている。
ハイパーネットワーク社会研究所のセミナーで講演するのは、実際に相談窓口で電話を取り、問題解決に当たっている研究員だという。こうした担当者は、教員や保護者にはとても把握しきれないインターネットに関するさまざまな課題や問題への対策ノウハウを集積している。
警視庁や各道府県警察本部、総務省にも、同様の活動をされている担当者がいるはずだ。万が一のトラブルの場合にも、慌てずにこれらの相談窓口に連絡すれば、さらに大きなトラブルになることは防げると思われる。
LINEをはじめ、目につきやすいSNSを悪者にして禁止するだけでは、課題の本質を見失う。学習者が知らないうちに大きなトラブルに巻き込まれ、場合によっては一生を左右するような状況に陥ることがないように、適切な情報モラル教育を進める必要がある。
大事なのは、教員も保護者も他人任せにせず、ITの現状を自分で理解して、身近な学習者に教えることである。それができれば、何かのトラブルに巻き込まれた学習者は、頼もしい身近な存在としてあなたに相談し、早い段階から対処できるはずだ。
執筆者紹介
武田一城(たけだ かずしろ) 株式会社日立ソリューションズ
情報セキュリティ、システムプラットフォーム、オープンソースなどさまざまな分野のマーケティング業務に従事。現在は特に学校IT分野における市場調査や企画に重点的に携わる。2011年より日本PostgreSQLユーザ会の理事を兼務し、代表的なオープンソースデータベース「PostgreSQL」の普及啓発活動も行っている。
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失敗しない「学校IT製品」の選び方
教育機関がIT製品を導入する際、どのような点に気を付けて製品選定を進めればよいのか。製品分野の基礎知識をおさらいしつつ、製品選びのポイントを伝授する。
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