「標的型攻撃対策」の現実解【第2回】
丸分かり「標的型攻撃対策」:未知の攻撃にどう対抗? 「入口対策」基礎の基礎(2/2 ページ)
重要性高まる「未知の攻撃」への対策
注意しなくてはならないのは、標的型攻撃などに使われるメールやWebサイトといったトリガーは全て、正常なアプリケーション通信経由で従業員の元に届く点だ。例えばメールの場合、不正なWebサイトへ誘導するリンクが記載されていたり、エクスプロイトが含まれているファイルが添付されていたりしても、アプリケーション通信自体は正しいものなので、ファイアウォールは通信を許可してしまう。
サイバーセキュリティ戦略本部による原因調査結果によると、日本年金機構もプロキシサーバやメールサーバなどの専門回線、各拠点のスイッチに不要な外部通信を遮断するためのファイアウォールを設けていた(図)。それでも、事件の契機となった標的型メールを受信してしまったのである。ファイアウォールの限界を如実に示す例だといえよう。
それではファイアウォールに加えて、具体的にどのような対策を実施すべきなのだろうか。メール受信時のセキュリティ対策として最初に思い浮かぶのは、マルウェア対策製品の導入だろう。メールサーバへインストールするタイプやゲートウェイ型のタイプなどさまざまなマルウェア対策製品がリリースされている。
こうしたマルウェア対策製品は基本的に、既知のマルウェアファイルに対するシグネチャをベースにパターンマッチングを実行し、添付ファイルなどにマルウェアが入っていないかどうかを検知する。ただし、現在は1年に7000件以上の脆弱性が発見され、日々ゼロデイ(パッチ未提供)マルウェアが作成されている。これら未知のマルウェアは、シグネチャベースのマルウェア対策では防御できない。
そこで、標的型攻撃対策として有効だと考えられるのが、「サンドボックス」という技術を利用したセキュリティ製品(以下、サンドボックス製品)だ。パターンマッチングではなく、仮想環境で実際にファイルを実行した結果を基にエクスプロイトやマルウェアを検出するのが特徴である。
サンドボックス製品は、あらかじめ社内で使用しているOSに加え、オフィススイートやPDFリーダーといったアプリケーションを組み込んだ仮想マシンを用意し、怪しいファイルをこの仮想マシンで実行する。その際、不正なレジストリの書き換えや外部サイトへアクセスするためのDNS参照、外部へのアクセスといった動作を監視し、該当ファイルが正常なものかどうかを判断する。
併せて読みたいお薦め記事
サンドボックスの基礎を学ぶ
サンドボックス製品の活用には注意点も
実際にサンドボックス製品を導入する際は、社内リソースと仮想マシンをきちんと管理する必要がある。特にPDFリーダーの「Acrobat Reader」は、感染経路として攻撃者に利用されやすい上に、従業員による自動アップデートが簡単にできてしまうので、バージョン管理には注意してほしい。
エクスプロイトの中には、特定バージョンのアプリケーションが持つ脆弱性を利用する攻撃が少なくない。そのため、社内で実際に使用中のバージョンと、サンドボックス製品の仮想マシンで利用するバージョンが常に同じものになるように管理していく必要がある。可能ならば、複数バージョンのアプリケーションを使用した解析ができるサンドボックス製品を利用するのも1つの解決策だ。
注意すべきなのは、大半のサンドボックス製品は脅威を検知できるものの、検知した脅威からの防御には他のセキュリティ製品の力が必要になる点だ。そこで前述したファイアウォールとの連係が重要となる。
サンドボックス製品からの警告ログを受けて、管理者が手動でファイアウォールなどの設定変更を施すのでは対応が後手に回ってしまう。異なるベンダーのセキュリティ製品を組み合わせて採用している場合には、各製品のAPIやスクリプトなどを利用した自動化を検討する必要がある。
入口対策には、本稿で紹介したファイアウォールとサンドボックス製品に加え、不審なメールやWebサイトへのアクセスを防ぐ各種フィルタリング、攻撃の成功につながる脆弱性をふさぐパッチ管理などさまざまな手段がある。入口対策を補完する上で、こうした手段の導入も有力な選択肢となる。
今回は入口対策として、インターネットとの境界部分に設置されるセキュリティ製品を中心に見てきた。ただし、これらの対策だけでは、USBメモリ経由や持ち込み機器(BYOD)経由でのマルウェア感染などを防ぐことはできない。次回はこれらへの対応も考慮した「内部対策」について見ていく。
寺前滋人(てらまえ・しげと) パロアルトネットワークス
外資系のネットワークおよびセキュリティ機器ベンダーでプリセールスSE(システムエンジニア)を20年以上経験。現在は次世代ファイアウォールおよびエンタープライズセキュリティプラットフォームを提供するパロアルトネットワークスでSEマネージャーとして勤務。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
「標的型攻撃対策」の現実解
日本年金機構の大規模情報漏えい事件をはじめ、国内組織を狙った「標的型攻撃」が相次いで明るみに出ている。標的型攻撃の実態はどうなっているのか。組織が取るべき対策とは何か。徹底解説する。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
2
「Microsoft 365のセキュリティ運用」に関するアンケート
-
3
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
4
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
5
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
6
「Salesforceのテスト自動化ツール」に関するアンケート
-
7
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
8
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
9
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
10
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー