初めてでも分かる「IHE」講座【第5回】
病院情報システムの要となる機能を有する「IHE ITIドメイン」(2/2 ページ)
医療情報の広域連携
広域連携に該当する機能は、次の通りである。
- XCA:Cross-Community Access
- 複数のコミュニティー間で患者ドキュメントを共有する機能
- XCPD:Cross-Community Patient Discovery
- 複数のコミュニティー間で特定の患者を捜して、ひも付けする機能
広域連携の機能であるXCAを図3で説明する。図3にはコミュニティーA、B、Cがある。コミュニティーBからコミュニティーAとCへ問合せを行う。その結果、コミュニティーAに情報があることが分かると、情報の読み出しをコミュニティーAに依頼し、必要な情報を入手する。XCAは、コミュニティー間のインタフェースを規定しており、各コミュニティー内での実装やシステム構成は規定していない。
日本IHE協会では、上記の医療情報連携基盤と患者情報参照基盤で説明した地域医療連携に使用する複数の統合プロファイルを「地域医療連携における情報連携基盤技術仕様Ver 2.0」としてまとめて、医療情報標準化推進協議会(HELICS)へ指針(HELICS指針)として申請。2015年7月にHELICS指針となっている。
患者管理
患者管理機能(PAM:Patient Administration Management)は、患者基本情報を登録したり、適時更新したりする機能である。
図4に示すように患者管理機能には、「患者基本情報管理」と「患者来院管理」の2種がある。前者の患者基本機能管理は、患者の名前や住所の変更などの基本情報を管理している。情報を提供する医事システムは、患者の新規登録や変更に際し、あらかじめ登録してある各部門システムへその情報を通知する。後者の患者来院管理では、患者の外来/入院状態の管理や病室情報を管理し、患者の入退院などの変更イベントが発生すると、医事システムなどがその変更情報を、あらかじめ登録してある各部門システムへ通知する。
ITIプロファイル一覧
表1に2015年10月現在のITI分野に関する22種類の統合プロファイル一覧を示す。このようにたくさんの種類があり、さらに新しいものが提案されている。それぞれデータ管理、セキュリティ、連携(地域・広域)、患者管理などの用途ごとに分類した。
| 用途 | 略称 | 名称 | 機能の説明 |
|---|---|---|---|
| データ管理 | SVS | Sharing Value Set | 複数の医療機関で統一された術語セットを管理する |
| RID | Retrieve Information for Display | Webベースで患者情報(検査結果や患者のアレルギー情報などのCDA、PDF、JPEG形式など)を検索・表示する | |
| セキュリティ | EUA | Enterprise User Authentication | HL7 CCOWを用いた施設内での利用者認証方法。シングルサインオンを実現 |
| PSA | Patient Synchronized Applications | HL7 CCOWを用いてアプリケーション間で患者IDなどを連係する | |
| CT | Consistent Time | 1秒以内の誤差で時刻同期する | |
| ATNA | Audit Trail and Node Authentication | 監査証跡のためにログを一元的に管理したり、通信相手の端末を相互に認証して安全な通信路を確立したりする | |
| 地域連携 | PIX | Patient Identifier Cross-referencing | 病院間で同一の患者を、統一の患者ID(Master Patient Index: MPI)で管理する |
| PIX V3 | Patient Identifier Cross- referencing HL7 V3 | PIXのHL7 Version3対応版 | |
| PDQ | Patient Demographics Query | 患者の基本情報(氏名、電話番号、生年月日、性別、母親の名前、出産順番など)を問い合わせる。オプションで来院情報も扱う | |
| PDQV3 | Patient Demographics Query HL7 V3 | PDQのHL7 Version3対応版 | |
| XDS.b | Cross-Enterprise Document Sharing | 施設間で患者ドキュメント(退院サマリーや検査結果など)をオンラインで共有する。サービス連係技術「ebXML」「SOAP」を使用する | |
| XDR | Cross-Enterprise Document Reliable Interchange | 施設間で患者ドキュメント(退院サマリーや検査結果など)をオンラインでポイントツーポイントに安全に送付する機能 | |
| XDM | Cross-Enterprise Document Media Interchange | 施設間で患者ドキュメント(退院サマリーや検査結果など)を媒体(CDやUSBなど)で提供する | |
| 広域連携 | XCA | Cross-Community Access | 複数のアフィニティドメイン(コミュニティー)間で患者ドキュメント(退院サマリーや検査結果など)を共有する |
| XCPD | Cross-Community Patient Discovery | 複数のアフィニティドメイン(コミュニティー)間で特定の患者を探してひも付けする | |
| セキュリティ | BPPC | Basic Patient Privacy Consents | XDSアフィニティドメイン内で患者の複数のプライバシーポリシーに関する同意を記録し提供する |
| PWP | Personnel White Pages | 医療機関内で職員名簿(職員の連絡方法やIDなど)を管理する | |
| XUA | Cross Enterprise User Assertion | 施設間でユーザーやアプリケーション、システムを認証する機能 | |
| 患者管理 | PAM | Patient Administration Management | 患者基本情報(氏名、性別、住所、入院/外来、病室情報など)を登録したり、適時更新したりする |
| データ管理 | RFD | Retrieve Form for Data Capture | 外部システムにデータを登録するために必要な情報を、電子カルテなどから取り出して外部へデータを提供する |
| 地域連携 | MPQ | Multi-Patient Queries | XDSレジストリに問い合わせをする場合、地域の基準に基づいた集合問い合わせを利用可能とする。例えば、施設の認定、臨床試験データの収集や疫学調査などがある |
| XDS-SD | Scanned Documents Integration Profile | 書類やフィルムからスキャンされたドキュメントに患者ID、患者情報やメタデータなどを付加して、XDSで利用できるようにする | |
| XDW | Cross-Enterprise Document Workflow Content Profile | 患者に関する地域連携で施設にまたがって行われるワークフローに関して、それぞれの作業で発生するドキュメントの参照を管理する |
まとめ
IHEのITI分野の統合プロファイル(業務シナリオ)で重要なものは、医療情報連携に用いられる統合プロファイルである。狭い範囲の地域連携から、広域の都道府県をまたぐような規模の医療連携までカバーする。今後の医療連携の最も重要な枠組みの1つと思われる。医療連携では文字情報だけでなく、画像も共有できる。画像を共有する場合は、放射線分野の統合プロファイルを使用するが、その機能はほとんど同じである。この画像共有も含めて、医療連携に使用される統合プロファイルを図5に示す。
これらの機能を利用して、IHEは日本でも世界標準の1つである「XDS」などを用いて、スケーラビリティーのある医療連携システムが一日も早く普及することを目指している。
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