初めてでも分かる「IHE」講座【第5回】
病院情報システムの要となる機能を有する「IHE ITIドメイン」(1/2 ページ)
13分野あるIHEの中で重要な分野の1つである「ITI(Information Technology Infrastructure)」分野。幅広い機能をカバーするこの分野は、病院院情報システムにとって要となる機能を多く有する。
医療情報システムの効率のよい構築・運用のために標準化が進められている「Integrating the Healthcare Enterprise(IHE)」。本連載では、IHEの推進団体である日本IHE協会(IHE-J)のメンバーがIHEの概要や各分野(ドメイン)での展開、導入事例などを紹介する。第5回となる本稿では、安藤 裕氏が「ITI」ドメインを解説する。【編集部】
はじめに
IHEは現在13分野あり、その中で重要な分野の1つが「ITI(Information Technology Infrastructure)」分野である。分野の名前を直訳すれば、「情報通信技術基盤」分野となる。この分野は非常に幅広い機能をカバーしており、多くの統合プロファイル(業務シナリオ)を有する。IHE活動のアクティビティーとしては、非常に急速に拡大している分野といえる。また、病院情報システム(HIS)にとって要となる機能を多く包含している。
ITI分野の統合プロファイル
本稿では、「データ管理」「セキュリティ」「連携(地域・広域)」「患者管理」などに分類して説明する。より詳細な内容については、文献に記載したIHEの各ドキュメント(「Technical Framework」や「Integration Profile」)をご覧いただきたい。
データ管理
データ管理に該当する機能は、次の通りである。
- SVS: Sharing Value Set
- 複数の医療機関で統一された術語セットを管理する機能
- RID: Retrieve Information for Display
- Webベースで患者情報を検索・表示する機能
- RFD: Retrieve Form for Data Capture
- 外部システムにデータを登録するために必要な情報を電子カルテなどから取り出して、外部へデータを提供する機能
セキュリティ
セキュリティに該当する機能は、次の通りである。
- EUA: Enterprise User Authentication
- アプリケーション連係仕様「HL7 CCOW」を用いた施設内での利用者認証方法。シングルサインオンを実現する機能
- PSA: Patient Synchronized Applications
- HL7 CCOWを用いてアプリケーション間で患者IDなどを連係する機能
- CT: Consistent Time
- 装置同士で時刻同期する機能
- ATNA: Audit Trail and Node Authentication
- 監査証跡のためにログを一元的に管理する機能と、通信相手の端末を相互に認証し、安全な通信路を確立する機能
- BPPC: Basic Patient Privacy Consents
- 患者の複数のプライバシーポリシーに関する同意を記録し提供する機能
- PWP: Personnel White Pages
- 医療機関内で職員名簿(氏名や連絡先など)を管理する機能
- XUA: Cross Enterprise User Assertion
- 施設間でユーザーやアプリケーション、システムを認証する機能
医療情報の地域連携
地域連携に該当する機能は、次の通りである。
- PIX: Patient Identifier Cross-referencing
- 病院間で同一の患者を統一された患者IDで管理する機能
- PIX V3
- PIXをHL7 Version 3に対応させたもの
- PDQ: Patient Demographics Query
- 患者の基本情報を問い合わせる機能。オプションで来院情報も扱う
- PDQ V3
- PDQをHL7 Version 3に対応させたもの
- XDS.b: Cross-Enterprise Document Sharing b
- 施設間で患者ドキュメントをオンラインで共有する機能
- XDR: Cross-Enterprise Document Reliable Interchange
- 施設間で患者ドキュメントをポイントツーポイントに安全に送付する機能
- XDM: Cross-Enterprise Document Media Interchange
- 施設間で患者ドキュメントをCDやUSBなどの媒体で提供する機能
- MPQ: Multi-Patient Queries
- XDSレジストリに問合せをする場合に、地域の基準に基づいた集合問合せを利用可能とする機能
- XDS-SD: Scanned Documents Integration Profile
- 書類やフィルムからスキャンされたドキュメントに患者ID、患者情報やメタデータなどを付加して、XDSで利用できるようにする機能
患者IDの名寄せ機能を図1に示す。地域連携の中核施設(地域医療連携センターなど)は、患者IDを中央管理システムである「患者ID相互参照マネージャ」に登録して管理する。このマネージャは各医療機関からの患者IDを相互にリンクし、統一の患者ID「MPI(Master Patient Index)」を作成して管理する。各医療機関の患者ID相互参照利用者(コンシューマ)は、マネージャに問い合わせて自分の病院のID番号から「コミュニティー全体のID」(MPI)を検索することができる。この機能が、PIXである。
図2に地域連携機能であるXDSを示す。共有する情報を提供する病院は、あらかじめPIXで患者IDとコミュニティー全体のIDとリンク付けを行う。PIXからコミュニティー全体のIDが「所在管理台帳(レジストリ)」に通知される。各医療機関は、この全体のIDを使用して、共有する情報を「共有情報の保管庫(リポジトリ)」に保存する。リポジトリからレジストリへ情報が伝わり、レジストリはどの患者のいつの情報がどのリポジトリに保管されているかを管理する。一方、利用者(コンシューマ)は、レジストリに問い合わせて、必要な情報をリポジトリへアクセスして検索し、情報を取得する。
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