鍵や決済など使用用途が増える指紋認証
「指紋データを盗まれても指紋は変更できない」問題に悩むセキュリティ業界
米政府人事管理局(OPM)で発生した情報漏えいの事件により、指紋認証の安全性が疑問視されている。3人の専門家に指紋認証の安全性について聞いた。
私たちの指紋は完全に自分だけのものである。だが、それが違っていたらどうだろうか。
米政府人事管理局(OPM)で発生した大規模な情報漏えいにより560万個の指紋が盗まれた事件が最近のニュースで取り上げられていた。この事件は、私たちの指先にある一意の識別子である指紋を他人が保持している可能性を示唆している。これは企業にとってどのような意味を持つのだろうか。
セキュリティの専門家が指摘するように、生体認証の不変性は、最高の資産であると同時に最大の課題でもある。指紋、網膜、声紋は、パスワードのように交換することができない。つまり、一度悪用されると正常な状態に戻すのは困難だ。
指紋認証は、政府機関がセキュリティ目的のためだけに収集しているものではない事実が懸念を増加させている。指紋は、携帯電話や車、家の解錠など、認証やセキュリティの手段として使用することが増えている。また、モバイル決済にも使用するようになっている。指紋が鍵や決済に使用されるのであれば、指紋がハッキングの対象となる可能性を秘めていることは想像に難くない。指紋を使った新しい犯罪が生まれることになる。
懸念のほとんどは正当性に欠けるとOPMは述べている。その根拠となっているのは、独立機関がある声明で述べているように、「指紋データを悪用する力は今のところ限られている」ことだ。ただし、指紋の持ち主はまだ危険な状態を脱したようには見えない。
米TripwireでITセキュリティとリスク戦略の統括責任者を務めるティム・アーリン氏は、米ZDNetで次のように述べている。「サイバー犯罪者は今のところ盗まれた指紋を悪用していないかもしれない。だが、この種の認証が増えるにつれて、状況は変化するだろう」(アーリン氏)
他のセキュリティの専門家は、OPMを襲ったハッキング事件や指紋認証の将来についてどう考えているのだろうか。米セキュリティ会社のImmunityで最高経営責任者(CEO)を務めるデイブ・アイテル氏は、次のように話す。「私はバーで飲むビールのグラスにいつも指紋を残している。そのため、盗まれた生体認証については全く心配していない。十分なアクセススキルを持つハッカーが、地元のバーにも行かずに、デバイスや無数の指紋が格納されているデータベースから指紋データを盗むのは、画期的で興味深いことである」(アイテル氏)
サーバ側では、指紋という機密情報を保管するデータベースで可能な限り高いセキュリティを確保する必要がある。米Forrester Researchでプリンシパルセキュリティアナリストを務めるアンドラス・シーサー氏は、「企業は指紋登録サンプルを暗号化したデータを含むデータベースを構築すべきである。ただし、実際のプリントイメージは含めるべきではない。その方が、指紋を盗むことはより困難になるからだ」とメールで述べている。
CIOは特に留意する必要があるとシーサー氏は指摘する。「これは、CIOにとって警告のサインである。指紋の保存と照合をサーバで行う場合は、保護ソリューションにさらに注意することだ。また、プロセッサのセキュア領域を使ってデータを保護するセキュリティアーキテクチャ『Secure Enclave』や『Trusted Execution Environment』に指紋を保存し、クライアント側で照合を行う場合は、保護ソリューションがポイントになる」(シーサー氏)
シーサー氏によると、多くのモバイル機器が指紋認証のセキュリティ機能を搭載するようになっているという。米Appleの指紋認証センサー「Touch ID」や米Googleの新しい指紋認証センサー「Nexus Imprint」は、デバイスに組み込まれているSecure Enclaveに個人の指紋を保存している。そのため、ハッカーが指紋データを盗むことは非常に難しくなっている。
将来的には指紋認証、声紋、顔認識が企業環境でも一般的なものになるとシーサー氏は考えている。
アイテル氏は、唯一のセキュリティ形態として身体的特徴を認証として使用すべきでないと警告している。「結局、生体認証が単体で優れた認証機能を提供することはない。適切な方法で認証をするなら、実世界では生体認証は常にPINやトークンと組み合わせて使用することになる」とアイテル氏は語る。
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