EMC Forum 2015リポート
“ネガキャン”にも負けない 日通がプライベートからパブリッククラウドへ移行するまで(3/3 ページ)
サービスカタログとガイドラインを制定
ここまで、選定に至るまでのプロセスをリポートしたが、これだけではサービス化はできない。日通情報システムがサービス化に向けて取り組んだこと。それは「サービスカタログ」の作成と「ガイドライン」の制定だ。これらは日通情報システムだけでは作ることができないため、AWS、IIJ、そしてEMCジャパンによるコンサルティングサービスの協力も受けた。
災害対策についての考え方やアプリケーション開発手法など、AWSとIIJは異なる考え方をしているため、整理してサービスカタログに記載した。カタログを整備した後、日本通運の情報システム部門はもちろん、アプリケーションベンダーなどの関係者総勢450人に対して、サービス説明会を6回実施したという。
課題は解決できたのか?
さて、パブリッククラウドの運用を開始して、抱えていた課題は解決できたのか。仮想マシンの増加に伴い運用工数が増加(ディスク1本の障害から対応しなければならなかったので工数が掛かっていた)していた問題については、日通情報システム側で管理するハードウェアなくなったことでほぼ解消した。そして、リソースプール構築に掛かっていた業務も、プールを作る必要がなくなったので削減できた。
しかし、「クラウド運用担当者への業務集中は残った。クラウドサービスをやっていく上では致し方ないと考えている」と話す。
AWS、IIJそれぞれのメリット/デメリット
AWSとIIJに対してはどのような評価なのか。IIJを選んで良かったポイントについては高品質、高可用性を挙げた。「利用を開始して1年半たつが、メンテナンス以外で止まった記憶がない。また、日本企業ならではの手厚いサポートがある。サービス開始後、どうしてもサービスメニュにないサーバを用意してほしいと要求したところ、特別にサーバ調達をしてもらえた。AWSでは無理だったこと」と評価した。
一方、AWSに関しては、「何と言っても業界のプライスリーダーであること。われわれがAWSのサービスを使い始めてから3回はインスタンスの値下げがあった。前回比60%値下げのインスタンスモデルもあった。また、新サービスが続々登場することも魅力。全部のサービスを使うわけではないが、最新のCPUを搭載したサーバモデルが定期的に登場し恩恵を受けている」と評価した。
苦労した点はどうか。IIJでは、「VMwareの基盤貸しのサービスを使っており、必要なサーバOSなどは自前で調達しなければならない。また、日本通運にサービス提供をする際、1仮想マシン当たりの値付けをして課金モデルを作らなければならない。そこに苦戦した」(下田氏)
パブリッククラウドで苦労した点は多い。例えば、「アプリケーションベンダーの中にはクラウドを利用することを快く思わず、いわゆる『都市伝説』を日本通運のアプリケーション担当者に吹聴することもあった。それによって『パブリッククラウドのサービスはOSに勝手にパッチが当たるため、納品されたアプリケーションが突然動かなくなることがある』といったようなうわさが広まった」。こうしたネガティブキャンペーンには、先に制定したサービスカタログやルールブックを示し正しい情報を啓蒙(けいもう)することで対処してきた。「サービス説明会後、半年ほどこうした炎上騒ぎは起きたが、今は沈静化している」と話す。
もう1点、つまずいたのはAWSのサポートサービスの選定だ。当初は中ランク程度のサポートを契約していたそうだが、1年ほどで限界がきたという。「何か起きた時にタイムリーに情報がほしいため、利用開始後1年を過ぎたころからはエンタープライズサポートに変更した」(下田氏)
現在、IIJ、AWSそれぞれで10システム以上が稼働しているが、プライベートクラウドにはまだ2000もの仮想マシンが眠っている。今後も残りのプライベートクラウドのシステムをパブリッククラウドへ移行していく予定だ。また、グローバルサービスの提供も視野に入れている。2019年度末までに、全システムのパブリッククラウド運用が目標だ。
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