カジノゲームの達人が指南
「ブラックジャック」に学ぶ、ビジネスで負けない意思決定とは?(2/2 ページ)
集団思考に陥らない
あるとき、ブラックジャックでマー氏のハンド(手札)が2枚の10で、ディーラーの見せ札が6だったとき、同氏は自分のハンドを「スプリット(※1)」するという異例の決断をした。「テーブルを見まわすと、誰もが私を『ばかじゃないのか』というような目で見ていた。ディーラーの後ろに立っていたフロアパーソンも『ばかだなあ』という目で私を見ていた。私の後ろには人だかりができ、彼らも私をばかだと思っていたようだ」とマー氏は話す。周りの誰もがマー氏の決定を疑問視する状況の中で、同氏も自分の判断に疑問を抱き始めた。「そのとき私は集団思考に陥ったのだ」と同氏は振り返る。
※1:2枚のカードを分割し、それぞれを独立した2つのハンドにすること。
通常はマー氏も周りの人々と同じように考えただろう。「見せ札が6に対してこちらのハンドが20というのは、かなりの確率で勝つ可能性が高いからだ」と同氏は語る。だが同氏は、あることを知っていた。カードのカウンティングをしていたのだ。すなわち、それまでに見た「ハイカード」(10点のカードとエース)と「ローカード」(2~6点のカード)を記憶していたのだ。デッキにはキングとクイーン、ジャック、10、エース(※2)のカードがたくさん残っているのを知っていたのだ。「もし周りの人々が同じ情報を持っていて、私と同じ戦略を知っていたら、恐らく彼らも2枚の10をスプリットしただろう」と同氏は語る。
※2:キングとクイーン、ジャックは10とカウントされる。エースは、1または11のどちらか有利になる数字を選べる。
結局、この不人気な作戦は功を奏し、同氏は両方のハンドで勝った。「革新と変化を求めるのであれば、対立が生じようとも従来の考え方にとらわれない判断をする必要がある」とマー氏は話す。これを実行するのは容易ではない。ITプロフェッショナルに対して、データドリブン型の意思決定ではなく、情緒的な決定を迫る集団思考のプレッシャーがかかっている場合は、なおさらそうだ。
不作為バイアスの危険性
ブラックジャックのプレイヤーおよび企業は、「不作為バイアス」に陥る恐れがある。マー氏の説明によると、これは不確実な状況に直面したときに不作為(積極的な行動に出ないこと)あるいは不決断を選んでしまう傾向だ。ブラックジャックの勝負においてプレイヤーのハンドが15で、ディーラーの見せ札が9の場合、「数学的には絶対にもう1枚引くべきなのだ」とマー氏は話す。
だがプレイヤーは、7、8、9、10、ジャック、クイーン、キングのどれかを引くと、21を超えてしまい、その時点で負けになることを知っている。プレイヤーが不作為バイアスに陥ると、数学的にはどうであれ、何もしないという控え目な判断をしてしまう。この場合、ディーラーが15を上回るのに大きな数のカードを必要としないので、ディーラーが勝つ可能性が高い。ディーラーがプレイヤーに勝つとプレイヤーは「自分が行動したせいで負けたわけではない」と自己弁護するのだ。
「私がここにいる唯一の理由は、データドリブンのプロセスの正しさを信じているからだ。皆さんもこのプロセスを信頼していただきたい」(マー氏)
結果よりプロセス
マー氏によると、プロセスよりも結果が意思決定の判断材料とされることが多過ぎるという。例えば、ブラックジャックでは、プレイヤーのカードの点数が15点でディーラーの見せ札が9の場合、マー氏はもう1枚引くようアドバイスするという。「6を引いて21点になれば、私は天才ということになる。7を引いて22点になれば、私はばかということになる」と同氏は話す。
マー氏が天才かばかかという判断は結果によって決まるが、いずれのケースでも同氏の戦略およびその戦略の基本となる数学理論に従えば、もう1枚引くのが正しい選択だ。ディーラーの見せ札が9の場合、15というのは弱いハンドだ。言い換えれば、プロセスが重要だということだ。「本当はプロセスに基づいて分析すべき場合でも、誰もが結果に基づいて分析しようとする」(同氏)
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