教育機関iPad活用お悩み相談【後編】
小学生には「iPad Pro」より「iPad mini」? iPad導入のプロが教える選定のコツ(2/2 ページ)
iPadの運用に関する2つのノウハウ
約4000台のiPad導入に携わった山口氏は、導入後の運用についてもノウハウを蓄積している。山口氏が得た、教育機関のiPad運用ノウハウを2つ紹介しよう。
共用iPad「マイナス6分」の法則
教育機関が配備したiPadを複数の学習者で共用する場合、授業時間を6分差し引いて授業設計すべきだと山口氏はアドバイスする。つまり、授業時間が50分であれば、44分しかないものだと考えて授業設計する、ということだ。
山口氏はこれまでの検証を踏まえ、40人学級の場合には、学習者全員が管理カートからiPadを取り出し、各自の机に戻ってiPadの電源をオンにするまでに約3分、iPadの片付けにも同じく3分かかると試算する。つまり、学習者がiPadを準備・片付けするのに合計6分を費やす計算になる。
共用端末であっても、端末の持ち帰り学習を採用したり、学習者に端末管理を任せたりしている教育機関であれば、端末は常に学習者の手元にあるので、こうしたタイムロスは最小限に抑えることができる。これは学習者の私物端末を利用する「BYOD」採用校でも同様だ。もちろん、端末を持ってこなかった学習者への対処方法を決めておくといった事前準備は求められる。
有料アプリの購入は請求書払いが可能
有料アプリケーションの購入は、iPadの教育利用が進んだ当初から教育機関にとって頭痛の種だった。教育機関や学習者がプリペイドカード「iTunesカード」を購入したり、各自の「Apple ID」(Appleサービス用のアカウント)を取得したりする必要があるからだ。
山口氏は、特に公立の教育機関で発生しやすい課題として、一度使用したiTunesカードの残金に関する会計処理を指摘する。一度使用したiTunesカードの残金は現金化できず、返金手続きも難しいので、会計上の処理が煩雑になるという。
有効な対策は、Appleが教育機関向けに提供しているボリュームディスカウント制度「Volume Purchase Program」(VPP)の利用である。2013年には、VPPで発注書・請求書払いが可能になった。有料アプリの購入をVPPに一本化できれば、iTunesカードにまつわる課題から解放される。VPPでアプリを1本当たり20ライセンス以上購入すれば、ボリュームディスカウントが受けられる(一部アプリは対象外)。
教育機関の予算で購入したアプリの配布については、VPPの「管理配布」という方法に加え、iOS端末管理ツール「Apple Configurator 2」やモバイルデバイス管理(MDM)製品を利用するのが効率的だ。これにより教育機関は、学習者個人のApple IDにアプリの所有権を引き渡すことなく、Apple Configurator 2やMDM製品からアプリのライセンスを一括配布できる。例えば、卒業生に配布したアプリを新入生に再配布するといった活用も可能になるわけだ。
山口氏は自身のiPad導入の豊富な経験から、iPadの学内導入を成功させるには、綿密な計画を立てることが重要だと強調する。「事前の計画を怠ると、トラブルが発生したときに対応が後手になり、教育ITに対するマイナスイメージが学校内外で付いてしまうことがある」
教育機関におけるタブレット導入に関しては、「授業でいかに使うか」に目が行きがちだ。だが実際には、その舞台裏を支える環境整備が非常に大切であることは、山口氏の言葉が物語っている。目指すIT活用に向けて、どのような環境整備やトラブル回避策が必要なのか。教育機関はいま一度振り返ってほしい。
執筆者紹介
神谷加代(かみや かよ)
教育ITライター。「教育×IT」をキーワードに教育機関で進むタブレット導入事例やIT活用、子ども向けプログラミング教育、EdTech関連の話題などを、Webメディア、書籍、雑誌などで執筆。著書に『iPad教育活用 7つの秘訣』(共著、ウイネット)、『こどもプログラミング読本――「未来をつくる力」を育てる』(共著、技術評論社)、『子どもにプログラミングを学ばせるべき6つの理由 「21世紀型スキル」で社会を生き抜く』(共著、インプレス)。
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